Maximum physicalism -脳筋最強の座をかけて-
68話
~リジョン・バルディ視点~
「おおおおおおっっ!!」
『ぬうううううっっ!!』
俺は今、赤くて筋骨隆々な、2本の角が特徴的な
"赤鬼"って奴と、鍔迫り合いをしている。
『ベキベキベキッ! バゴォ!!!』
互いの力があまりにも強かったっぽくて、周囲の
地面が沈むわ盛り上がるわ、変な方向に岩が発射
されるわで、カオスな事になってやがるぜ。
『小僧…………その力、本来よりも強化されているな』
俺よりデカい奴は、やや押されながら、俺が
スッカリ忘れていたことを指摘してきた。
「そーいや、ステータスを強化してもらってたな。
テメェに、能力アップする手段があるなら、3秒
だけ待ってやるぜ」
他は兎も角、コイツとは真正面から、捕食者決定戦
をしてぇと思ってたんだ。漢の仁義を通すためにも、
ここは一歩待ってやるぜぇ。
半秒、周囲を見回すと、俺に攻撃しようとしてきた
モンスター共が、ミュール達の攻撃に弾き飛ばされて
いるのが見えた。これなら存分に殺りあえそうだぜ!
お、
『ガブッ! ぬおおおおッッッ!!! 待たせた、なあッッ!!!!』
『ドォン!!』
1秒で得体のしれねぇ肉を飲み込んだ赤鬼が、
音を置き去りにして突っ込んできた。やっぱコイツ、
ロックだぜ!
「来やがれ!」
俺は再度集中力を高め、奴の動きをしっかり
見定めた。
『ぬぅん!!』
『ガゴォォオオオオオン!!!』
俺が身体1つと半歩下がった事で、空を切った
金棒は、空気を弾いたことで、まるで鋼鉄を砕いた
ような轟音を鳴らしていた。
(最ッッッッ高だぁぁぁあああああああ!!!!!)
んーな魂を見せつけられたらよぉ、テンション
上がらずにはいられねぇだろうがっっ!!
「オルゥァァアアア!!!」
『むん!!!』
『ゴゥオォォォオオオオン!!!!!』
俺様は、奴以上に音を置き去りにして、全速力で
両手斧を打ち込んだ。肉体的速度は俺が圧勝なのか、
奴は得物のガードによって防いだ。
その時の轟音のロックさと来たらよぉ、鋼鉄同士
の激突とあって、俺の語彙力じゃ形容できねぇレベル
だったぜ!
「ぬぅりゃっっ!! ぅらぁぁあっっ!!!
フンヌリャアアアッッ!!!!!」
『むぉお!! フン!!! ぬぅう!!』
テンションと速度とパワーを込めて、俺様は
追撃の左から右への薙ぎ払い、右下から左上への
斬り上げ、その時の遠心力を増幅させた1回転・
袈裟斬りを、ぶちかましてやったのだが、野郎は
的確に受けきりやがった!
『フンヌァァアアアア!!!』
そして、袈裟斬り直後の隙をつき、全身全霊の
一撃を繰り出しやがったんだ。着弾点にドデカい
クレーターが出来、動体視力の低い連中は、俺の
死を確信しただろう。…………だがなぁ、
「テメェが隙だらけだぜ!」
勝利を確信した野郎の大振りの隙を突き、俺様は
自慢の縮地で横飛び! 更にもう一度角度を微調整
した切り返しの縮地をすることで、背後を取って
やったぜ!!
「ぬりゃあッッッ!!!!」
『グオオオオッッ!!!』
勢いと筋力を乗せた振り下ろし!! だが、打ち込み
の感触と、奴の怪我からして、頭蓋骨の芯は外された
な。と、なると、
『ヌグゥアアアッッ!!』
やっぱ打撃を超音速で飛ばしてくるよなぁ。
って事で、
「フンッッ!!」
俺様もアイツみてぇに、空中で半身を逆回転させて、
鋭い斬撃を打ち込んで、ガードと移動をしたわけさ。
(今の食らっちまったら、笑われても殴れねぇからなぁ)
二度同じテツを踏む訳にはいかねぇからなぁ。
踏んだ日にゃ、熊の母ちゃんとミュールに笑われ
ちまうぜ。
反動で得た速度で柱に着地した俺は、再び奴との
距離を詰め始める。
『ぬぅぅんりゃぁぁああああッッッッ!!!』
当然、奴はそれを阻止するべく、走りながら飛ぶ
打撃を連発する。俺の方が速いとはいえ、奴の速度
も一級品、追い付くまでに複数の打撃を飛ばすこと
なぞ、訳無ぇのさ。
「はっはぁーー! 楽しぃねぇ!!」
今まで体験したことの無い絶対速度、そして、
当たれば即死する事を実感させられる、エネルギー
量。だが、打撃1つ1つを掻い潜って、その度に
奴に近づくと同時に、表現のしようの無ぇ快感が
押し寄せてくるんだ。
『ぬぅんッッッ!!!』
距離的に、最後の1発であっただろう、この一撃
は、随分と不規則なタイミングで放たれた。
だがな、幾ら過去最速の飛び道具でも、この程度
のテクニックで打っていちゃあ、煮るなり焼くなり
好きにされちまうぜぇ!!
『バグゥオォオオオオオン!!!』
『ぬぅ!?』
そうさ! 俺の十八番、"受けてカウンターの威力
を倍増させる"に、利用させてもらったぜぇ!!
両手斧を打撃と同じ方向に、だが、打撃より
やや低速まで加速させる事で、打撃の威力を
上乗せする。後はぁ!!
「オルゥアアアアッッッッッ!!!!」
"単純威力強化技"で最大パワーにして、ぶつける
だけだぁ!!
『ぬぅ!? おおおおオオオッッッッッ!!!』
それでも、野郎は的確にガードし、被害を数ヵ所
の筋断裂と、皮膚の裂傷、手首とか弱そうな部位の
微骨折で済ませやがったんだ。
「次は決めてやらァ!!」
とことんロックな野郎だ! 絶対に負けられねぇ!!
再び加速する俺に対し、押し退けられた野郎は
怪我なんてしていないが如く、飛ぶ打撃で牽制
してくる。だが、速度で勝っている俺に当たる筈が
なく、あっさりと目の前まで詰めることが出来た。
(集中!!)
と、ここで、俺は集中力を高める。何せ、野郎は
俺がここまで詰めてくることを知って、打撃を連発
していたからなぁ。
そして、さっきのように、変則的な打撃を飛ばした
所で、更に受けにくいカウンターを打とうとしている
ことも、バレているだろう。
つーことはさ、違う方法で迎撃しようとするよな。
『ヌゥアアアアッッ!!!』
俺の予想通り、野郎は飛ぶ打撃とは正反対に位置
する、突撃からの強化打撃を繰り出してきた。
(打ち合いてぇ…………だが、この両手斧も耐久性が
限界だ)
純粋な打ち合いなら、当て所次第で押しきるのは
楽勝だ。だが、冒険者成り立てが使うことを想定
している俺の得物は、俺のパワーによって、既に
限界に近づいている。
『ガゴゴォォオオオオオン!!!』
(避けるしかねぇなぁ!!)
俺は獣並みに身体を低くすることで、横に一閃した
金棒を回避した。
「らッッ!!!」
『ザギャァァァアン!!!』
同時に、足腰というかほぼ全身のパワーを爆発させ、
低姿勢のまま足元を薙ぎ払った。
『チィィッッ!! だああああああッッッ!!!!』
「グゥオオオオオオッッッ!!!!」
野郎も紙一重の回避だったのだろう、極僅かに地面
を蹴って、ノロノロと空を舞ったからか、飛ぶ打撃を
連発しつつ、反作用で足場となる柱へ向かいだした。
かくいう俺は、両手斧の柄を咥え、四足走行で
縦横無尽に駆け回る事となった。途中で人間らしい
走行に切り替えたが、ゲイルや俺と一時を過ごした
熊親子が見ている景色を堪能することになった。
「そろそろ決めてやるかぁ!!」
テンションの上がりかたもしかり、俺自身の
スタミナ残量、そして、両手斧の耐久力。更に…………
『ぬぅ!! 貴様の全力、真正面から叩き潰して
くれるわぁ!!!!!!』
周囲の"環境"が、この選択肢以外を除外したんだ。
「おおおおおおおおおお!!!!!」
『ぬおおおおおおおおお!!!!!』
俺が最高速度の縮地で駆け出すと同時に、野郎は
着地した柱から、飛び込んできた。
「オラァァ!!!!」
『ぬぅぅ!!!!』
そして、互いに全力で、得物を振り抜いたんだ。
普通の強化斬撃なら、距離が近すぎれば相討ちか
致命傷。距離が足りなければ、俺の得物の破壊が
結果として表れただろう。
だがな、
「衝撃波」
そこら中に轟いている音…………ひいては俺達の
ロックの証。それらを俺様の得物に集めて、"破壊力"
を上げてやったぜ。
『ぬぉ…………!!?』
…………どーよ。肉を切らせて骨を断つってな!
んで、命の取り合いで、固まっちまったなぁ。
「斬撃!!!」
『ガアアアアアアアアアアア!!!!』
その隙に、俺は全身を回転させ、切れ味を維持した
得物の左薙ぎで、野郎の腰から上下を両断した後、
得物を切り返した右薙ぎで、頚を真っ二つにして
やったんだ。
『バゴジュウウウウウッッッ!!!』
更に、得物に纏わせた衝撃波を、全て胴体に
移した結果、内蔵を中心に、上下へ噴水のように
吹き出したぜ。
…………それでも、筋肉の一部と骨のほぼ全てが
原型を保ち、元の姿を回想できるレベルでいるのは、
コイツの強さの証明だと思うぜ。
「ゼェ…………ゼェ…………、過去最高に、楽しい死合
だったぜ…………。ありがとよ」
群れを使役していた時は、心底気に食わねぇ野郎
だと思っていたが、出会いかた次第で、大心友に
なっていたかもな、と思った。
『ニッ…………』
頭だけになった奴の目が死ぬ瞬間、俺に笑いかけて
くれた気がした。
「お疲れ、残りは私達が直ぐに片付けるわ」
「俺達のシゴト、バルディと赤鬼の激突でケッコウ
取られてた」
ミュールやティグ達も、そろそろ終わりそうだ。
後ろでは、ジョセフの強化魔法を受けた連中が、
しっかりとハグレた奴等を押さえている。
「これで、ウチの村は防衛成功だな」
と、思った瞬間だった。
「あ? 何の揺れだ??」
突如起きた揺れに、違和感を感じた。明らかに、
小競り合いの余波じゃなかったからな。
「あれ!!」
その上、感覚の鋭いミュールの奴が、顔を
青ざめて、前方を指差しやがったんだ。
~アント・ネット街国・城下町正門付近・シャール
視点~
「で、善意じゃないけど、アンタの命を救った私が、
何で詰め寄られなきゃいけないわけ?」
私は今、頭の悪そうな戦士3人から、言いがかり
をつけられている。
「何でもクソもねぇだろ!!」
「あんなん、俺らでどうにかなったんだよ!!」
「横取りするな! クソアマ!!」
「いや、仮に倒せたとしても、アンタが死ぬ時点で、
"俺ら"でどうにかなってないじゃんww」
男のプライドって奴? 心底面倒くさいわねぇ。
さっさとそこの宝石を拾わせてくれないかしら?
暴力行為で減給されたくないから、バルディ
みたいに喧嘩したくないしね~~。はぁ…………。
「おっ、俺が死んでも倒せりゃいいんだよ!」
「死こそ冒険者の誉れ? って感じd…」
何か言っているけど、
「後さぁ、さっきよりヤバいの迫ってるから、
早く構えなよ」
かなり不味い状況になったわ。
~アント・ネット街国・工業都市・ワイルド視点~
「魔王軍幹部のインテリさんよ、随分と人…………
じゃなくて、魔物使いが荒いねぇ」
俺の眼前には、敏捷性だけ高めな雑魚モンスター
を追いかける、A~SS級の竜属達が、地面や空を
掛けていた。
「本番は、ここからだな」
沢山、回廊を開くぞ。
最後までご覧くださりありがとうございます。




