圧倒的正面撃破
63話
「お」
前を見ると、さっきの10倍程、1000体以上は
いそうなモンスターの大群が迫ってきていた。
「テメェら! 俺に付いてこなけりゃ、経験値丸ごと
頂くぜぇ!!」
そこで俺は、後ろで突っ立ってる連中にカマ
をかけて、大群が防衛ラインに到達する前に
減らそうと思った。
今の掛け声で半分位ついてくれば、良い感じに
減らせるだろ。
「!!」
「一人占めはズルいぞ!」
「待ちなさいよ!」
「あの数はアンタでも無理でしょ!!」
すると、我に返った連中が、次々と走り出した。
…………おいおい、殆んど来てねぇか? これじゃあ、
隠密行動型モンスターの奇襲で、家がやらre…
「ここは俺様が守る。臆病なカス以外は行け行け」
カルロスさんが、俺への追従を促した。ま、
あの人も最低限、俺位の実力はあるだろうし、
なんとかなるか!
「んじゃ、行くぜぇ!!」
分担が決まったので、俺は"音速"で駆け出した。
ジョセフの強化魔法のお陰で、普段殆んど最高速度
な音速も、ランニングしているようなペースで
駆けられる。
『お"お"お"お"お"お"!!!』
~回想・晩飯後の一時~
「お兄ちゃん、久々に子守唄歌ってよー」
「何だぁ? ハルは未だにお子ちゃまなんだな」
ハルが、チビガキの頃のように、寝る前の子守唄
をせがんできた。
「え"っ!? バルディの子守唄!!?」
すると、ミュールの奴が面白ぇ顔でドン引きしてきた。
「あん? ガキを寝かすのに子守唄はフツーだろ」
「ば、爆音ロックの子守唄じゃないよね…………」
リョウの野郎まで、面白ぇ顔をしながら問いかけて
きやがる…………。
「な訳ねーだろ。嫌でも眠くなっちまう、バラード
だぜ。まぁ、聞いてみろや」
そして、試しに一曲歌ってやった。一部、歌詞
の記憶がアヤフヤだったが、singはheartだ。
問題ねぇ。
「「zzz」」
「♪~…………どーよ、ハハッ、ミュールの奴、チック
と一緒に寝てやがんのwww」
心を込めすぎると、俺までダル眠くなっちまう
が、最高級にうまく歌えたな。
「歌詞の間違いがどーでも良くなるくらい、
素晴らしい音色だったッス!」
「こんなに上手なんだ! ロックも、声量さえ
抑えることが出来れば、きっと皆に絶賛されるよ!」
ハルを膝枕するサタヤナと、ミュールを肩に
寄り寝かせるリョウが、当然の評価を下した。
リョウに至っては、顔を赤らめるほどheartに
来たようだな! だが、
「ロックは全力でこそだ。手加減は出来ねぇなぁ」
ロックに加減はやっちゃあ、いけねぇぜ??
「まぁ、絶対音感持ちの俺視点でも、プロに
負けない声だよ。でも、1つ気になる事がある」
チックを膝枕しているワイルドの奴が、褒めた
後に何かを言い始めた。
「アッシも気になったッス。バルディ、歌ってる
時に、声の質感を柔らかくするような"魔法"を
使ってなかったッスか?」
「魔法だぁ??」
全く使ってるつもりは無かったぜ。てか、
そもそも使い方も知らねーわ!…………まてよ、
「いや、確か昔に母ちゃんが、この歌は"愛の魔法"
が込められているだか、言ってた気がする。その辺
が作用してやがるか?」
「それも関係あるかもしれないけど…………、あっ!
バルディ君、午前中の岩竜戦で、凄い斬撃飛ばした
よね!」
「ああ、明らかに異次元のパワーだったな」
「あの後に君のMPが切れたから、多分斬撃の魔力
消費に加えて、何らかの魔法的作用が起きていたの
だと思うよ」
「つっても、サタヤナの話だと、声に作用する
何かを、知らん間に起こしている程度だったろ。
あの時は、それこそ"音速"で突っ込みながら、
ロックを全力で歌うような"テンション"で、
ぶちかましていたぜ」
「…………そうか。"音"、言い換えれば"振動"。
今の話から考えると、バルディ、お前は」
"音波属性に、ズバ抜けた才能があるかもしれない!"
~回想終了~
「「「グギャアアアッッ!?」」」
直線上を駆けていた30匹前後のモンスター達が、
いきなり上半身と下半身を両断され、驚きながら
絶命した。
「音速をキープして蓄積した音を、飛ぶ斬撃に乗せて
切れ味を上げる…………か。中々にロックじゃねーか」
俺は"斧をしまい"、再び音速で駆け出した。
「衝撃波拳打!!」
『ギャゴォアボシュッッ!!!』
衝撃波を十分に蓄積し、切り込み隊長的な奴の
頭を殴り付けると、頭蓋骨を中心に爆散したぜ。
「打撃なら、内側から破壊する…………か」
「「「「『『ギャオオオオオオッッ!!』』」」」」
「まぁ、テメーら相手にMPを使うまでもねーわぁ!!
オラオラオラオラオラオラオラァ!!!」
そこからは、命を賭けた殴り合いよ。斧で、
爪で、牙で、脚で、頭で…………そして、拳でなぁ!!
「「「シャアアッ!!」」」
「ヌゥン!!」
3方向から来た奴等を、冒険者登録記念で貰った
斧で一閃する。
「カロロッ!!」
「ヒャヒャ!!」
「ラァアッッ!!」
横から攻めてきたスケルトンを、返す斧で一閃
しつつ、真上から振ってきたバットデーモンは、
斧を手放した右拳による、真上への裏拳で倒した。
「ヒィギィヤッ!!!」
「遅ぇ!」
『ズドォン!!!!』
そして、さっきの奴の親分であろうデカい奴は、
しなりきった左腕から撃ち下ろした一撃で、左右
真っ二つにしてやったぜ。
「「「「「「「「ギィィ…………!?」」」」」」」」
さっきの一撃に、大勢がビビって隙を晒しやがった。
「野生で棒立ちは、論外だぞオルゥアアアア!!!」
なので、直線的に音速手前まで加速した後、斧の
頭が音速を超えるほど高速スピンして、横5列程に
大損害を与えてやったぜ!!
「さぁて、俺を越えたところで、追い付かれるだk…」
「アッパーオブ」
『アロットアース!!』
俺を越えて、進撃していたモンスター50体程度が、
鋭い岩の槍で、カチ上げ・貫通させられた。
「ギョエエエッッ!!」
『ガコォ!!』
俺の攻撃範囲外、左側のサイクロプスが、苛立ち
ながら岩壁を殴る。
『ガルルルッッ!!』
「ガッッ!!」
次の瞬間、幽霊3人位を取り込んだと思われる
ゲイルが、壁をすり抜けてサイクロプスの頭を
噛み砕いた。
『絶技・無明鎌鼬の乱!!』
「負けたぁ!!」
ゲイルがアンドレに変化し、範囲技を繰り出した
と同時に、右側からティグが現れ、爪から飛ぶ斬撃
をそこら中に放った。
「よぉ、ティグ。俺様に討伐数で勝とうなんざ、
百万年早ーよ」
「違うんだ! 合体後のゲイルと、どっちが先に
着くか競争したんだけど、ゲイルの奴が壁を
すり抜けやがったんだ!!」
「ハッハァ! ルール無用のダッシュバトルなら、
壁くらい突き抜けるわなぁ! オラッ!!」
目の前に迫ってきた奴を返り討ちにしながら、
左右に別れ出した群れの内、俺とティグは右側を
殲滅するべく動き出した。
左側は、アンドレ及び合体している奴等、そして
後ろのミュール達に任せる。アイツなら、地獄耳とか
で俺達の動きに合わせて、リョウ達を誘導できる
だろうしな。
~後ろの冒険者達~
「「オラオラオラオラ!!」」
近接物理タイプが、動けなくなったモンスター達
を速攻で倒していく。
「「雷撃!!」」
魔法タイプは、動けるモンスター達に、命中精度
が良く、麻痺効果を期待できる雷魔法中心に、攻撃
を加えていく。
「…………最早アイツらだけで十分じゃね?」
「ああ…………。戦士系なのに、どっちも剣士系の倍
じゃ済ませねぇ程速いとか、バケモンだろ」
「前で暴れてる剣士達も、攻撃力と敏捷性を
上げられているけど、最前線のアイツらと
比べたらなぁ…………」
「あの死霊術士もヤベェよ。近接物理系顔負けの
フィジカルに…………何なん? 6体も個性的な幽霊
を使役出来て」
「1番弱そうな女の子すら、魔法使い全員に匹敵
する数のモンスターを痺れさせているし…………」
1拍置いて、
「いや、1番弱いのは、どう考えても柴犬だろ」
「「「「「それな」」」」」
~防衛ライン~
「こうすりゃ、モンスター共はそうそう来ねぇんだよ」
カルロスが、前線に向かった冒険者達を嘲笑の
眼差しで見つめながら、呟いた。
「流石はカルロス様~~!」
「オツムパーのディー君や芋女、クソイケメン
とは、頭脳が違います~~!」
「うっふぅん、流石は次期英雄候補のパーティー
メンバー様。持っている物が違いますね!」
レオ、シロン、ロニーが、カルロスを称えて
媚を売る。
「当然だ。あんなクソガキ共は、俺様に有効活用
さてれいる位が幸せだ。…………どれ、作戦終了後の
施設巡りを計画しようじゃないか」
カルロスは、3人を嫌らしい目で舐め回すように
見ながら、呑気な事を計画し始めた。
「「「ニヤリ」」」
3人は一瞬だけ目配せすると、
「もぉ~~、お気が早いのですから~~!」
「ワタシ達、カルロス様の有難いお誘いを受けられ
て、とっても嬉しいですぅ~~!」
「約束通り、私達が奮発しちゃいますよぉ! 初日の
場所はどこにしましょう? やっぱりアント・ネット
連合街国の繁華街の十星ホテルが鉄板ですかね~?」
「グフフフフ、そうだな…………。ジュルリ」
その頃、他の場所でも戦が始まっていた。
~大和王国~
「乱れ斬り・群隼音乗」
クレインが、無数の飛ぶ斬撃を音速で繰り出している。
「大した成長だ。このまま遠方から殲滅してやろうぞ!」
大和王国現国王にして、織田家当主の男・朱雀は、
かつて先祖が愛用した脇刺しである不動行光を
振るい、クレイン以上の威力、速度、そして手数の
飛ぶ斬撃を放った。
(脇刺しで、迫ってくる薙刀を斬り落とすと言われて
いる朱雀様…………。こうして実力を見せられると、
拙者がいかに未熟者かがよく分かるな)
彼等を始めとした王国民達によって、モンスターの
群れは前進する所か、押し下げられていった。
~リョウの故郷~
「はぁ、あんな雑魚共相手に、こんな人員を割く
なんて、ギルドは何を考えているのかしら?」
防壁の下に迫らんとするモンスター軍団を
見ながら、ローズはタメ息をついた。
「何より、この私がその内の1人として割かれて
いるのが気にくわないのよ。ムシャクシャして
しょうがないから、お前らにぶつけてやるわ。
業炎柱」
刹那、右側4分の1程のモンスター達が、巨大な
炎の柱に焼き殺された。
「ス、スゲェ…………」
「あれが…………次期英雄候補パーティーの魔法使い…………」
「正しく、"第1級魔導兵器"だな…………」
そのあまりにも強すぎる火力は、他の冒険者達
を戦慄させるには十分だった。
「よーーーっし、アッシも1発、ドカンと
ぶちかますッス! 大落雷!!」
刹那、町に小規模な地震が起こるほどの落雷が
発生し、ローズと同程度のモンスターが倒された。
「!、アイツら動きが止まったぞ!」
それだけでなく、漏電由来の麻痺効果や地震に
よって、モンスター達の動きすら封じていた。
「畳み掛けろー!」
「サーちゃんの魔法がヤベェって噂、マジだったな!」
「ローズさんに並ぶ、魔導兵器だ!」
残り半数となった、動けないモンスター軍団など、
最早ものの数ではなかった。
「エヘヘ、アッシじゃまだまだローズさんの足元
にも及ばないッスなぁ。余裕度が違うッス!」
魔法発動時の踏ん張りで、足元にクレーターを
作ったサタヤナは、笑顔でローズを褒めた。
「フ、フン。威力は褒めて遣わすが、褒められる
点はそれしかないわね!(な、何よコイツ…………
私に匹敵する魔法攻撃力を…………どうやって手に
いれたってのよ!!)」
突然のライバルの出現に、ローズは焦りを感じた
のだった。
その他、2ヶ所に襲撃が起きていたが、この
2ヶ所の沈静化は、群を抜いて早かった。
~寂れた集落~
「蝶のように舞いぃ…………」
アーロンが、周囲に衝撃波を撒き散らしながら、
幻惑的に動き回る。
「蜂のように刺すぅ!! チクチクチクチクチクッ!!」
そして、一瞬にも満たない時間で、小~中型
モンスターの急所を、貫いた。
「更にぃ…………、カマキリのように斬るッッッ!!!!! ジ・エンドだねぇ…………」
〆に、貫通で殺せない大型モンスターの急所
を、様々な斬撃で両断した。
モンスター中隊殲滅にかかった時間は、実に2秒。
「司令塔! 隠れているモンスターが居たら、
迅速に、この私に教えたまえ!!」
そして、ナルシズム溢れるポーズを取りながら、
司令塔に両指をさした。
「現状、半径10km圏内に、モンスターのものと
思われる動きはありません!」
「そうかぁあ…………。なら、次の襲撃まで、私の
身の回りの世話をしてもらおうか。一生ものの
思い出だぞぉ…………」
「はっ、喜んで奉仕させて頂きます!」
仕事が早いとはいえ、まだモンスターの襲撃が
考えられる状況で、無駄な動きを行う所にアーロン
の性格が垣間見える。
(…………ワイルド、このナルシストが調子に
乗り切らない内に、モンスターの動きを教えて
くれないかなぁ??)
司令塔も、内心ではアーロンの態度に辟易
していた。
その、ワイルドなのだが…………
~アント・ネット連合街国・工業都市~
「フレイさん、此方のモンスターが動き出した
ので、半秒で仕留めます」
極めた五感でモンスターの動きを察知し、
上司に一報を入れた後、狙いを定めた。
「大召喚」
彼がモンスター軍団を覆い尽くす程の回廊を
生成した瞬間、
「海底攻城砲」
何かが音を大きく置き去りにして、モンスター
軍団を圧殺した。
最後までご覧くださりありがとうございます。
お陰さまで、ブックマーク100件突破出来ました。
今後とも、精進していく所存です。




