人魔戦争の開始
早ければ明日、遅くとも明明後日には次話を
上げられそうです。
62話
「親父、ワザワザ待ってくれるたぁ、随分と
親バカだなぁ、オイ!」
「フン、お前が騒がしすぎて、何が起きてるか
様子を見に行ったら、このザマよ」
バルディが破壊した門の取っ手を、指で回し
ながら答えた。
「なーるほど、そりゃひとえにゲイルが良いパンチ
を打てるようになった証拠だな」
『ゴロゴロゴロ…………』
彼は、先程まで拳を打ち合っていた巨虎を撫で
ながら、父親に話した。
その時、
「パパー、誰か来たの~??」
声が聞こえた方を向くと、紫ベースにラッシュ親子
特有の赤髪が混ざった、長髪で可愛らしい女の子が
現れた。
「ハル!!」
「兄ちゃん!!」
次の瞬間、バルディは少女の名を呼び、ハルと
呼ばれた少女は、全速力で彼に抱きついた。
「元気にしてたか?」
「うんっ! この虎さん、兄ちゃんより大きいね!」
「おう! コイツはゲイル。俺様と拳を交えられる、
正真正銘の大心友だぜ!」
「わっ! 兄ちゃんの大心友は、中々得られない
称号だよ! 良かったね、ゲイルちゃん!」
『グワオッ』
「実は今では、そうでもねーんだよな」
バルディは、俺達を見ながらそう言った。
「ああ。俺は大心友1号のワイルドだ」
だから、俺は大心友の想いに答え、ユニークな
自己紹介の火蓋を切った。
「大心友2号、リョウです!」
…………と、続いていき、
『ガルルルッ、ガルッ、ガルルッ!』
「今いるラスト。6号のミュールよ。ねえ、ハル
ちゃん。バルディと君がいう心友って、要するに
心の底から友人だと思う人をいう言葉だよね?」
「うんっ!」
「でもね、世の中だと"しん"は心じゃなくて、
親って書くのよ。ハルちゃん達は何で心って
書いているのか教えてくれる?」
ミュールが、皆ずっと気になっていたで
あろうことを聞いた。
「う~ん、ミュール姉ちゃんのいう通りなんだけど、
世界を旅するママがそれで良いって言っていたから、
家ではそうなってるの」
「ああ、親父も母ちゃんもそれで良いって言ってた
から、訓練所で違うって知った時はビビったぜ」
「…………バルディに客人達よ、それについても屋敷
で語り合おうではないか」
そして、俺達はバルディの…………いや、ラッシュ家
の奇妙な習慣を、知った。
「…………凄く、彼らしいと思いました」
真相を知ったリョウは、心底納得した様子だ。
まず、"心友"の由来だが、昔、この付近には
ラッシュ家ともう1つ、家が存在していた。親同士
は仲が良かったのだが、その家の息子とバルディは
非常に仲が悪かった。
「ったく、あのボンボンはガキの俺に、ケンカで
負けた腹いせに、家族総出でハルに手を出そうと
しやがったんだ。地元追放の刑に決まってんだろ!」
そして、10歳年上の息子を殴り倒した事に、
端を発する事件が切っ掛けで、両家は絶縁した。
「だからな、親同士が仲良くても、ガキ同士は
そうとも限らねぇ。そして俺は、偶々知っていた
親友って文字を、相応しい形に変えてやったんだぜ!」
「まぁ、年下を持つ姉としては、誇りをもって
文字改変する気持ちも分かるわ…………」
「私も誇って良いと思ったッス!」
「でも、"しん"って文字は他にもあるのに、
何で心を選んだの?」
「ああそれh…」
「お兄ちゃんはね、人間だけじゃなく、熊さん
とも心から通じ会えたの! だから心が相応し
かったんだよ!」
「って訳さ」
「彼がゲイルと仲良くなれている様子を見ている
僕からすれば、本当に納得できるな」
この世界の言語は、地球の日本語と極めて類似
している。その為、万年成績下位だった俺でも
直ぐに馴染めた。
だから、バルディが小学生2年生レベルの漢字
の心に当たる文字しか知らなかったんじゃね?
と思ったことはナイショだ。
「そしたら、"了解"とか"分かりました"を
"ガッデム"って言ったりするのって、どういう
ことなんだ?」
「ガッデムは俺が生まれた時には、既に使って
いたぞ。親父の世代から使ってんじゃねーの?」
「いや、俺の父…………お前の祖父に当たる人物が
使い始めたな」
「「へぇ~~」」
バルディ兄妹の様子から、"心友"のように
現代に作られた造語の方が珍しいのだと思った。
「そうだな…………お前が大声で叫んでいたゲッツ
ホームや他にはガッデモーニング、シープフル、
後…………」
それどころか、このお父さんすら、殆どの造語
は先祖から伝えられて来ていたようだ。
「まぁ、遡れば、この屋敷を支配していた大和
連合を成敗した、祖先から始まっているのだろうな」
「つーか親父、そのキモ…………キメ…………何だっけ?」
「着物!」
「流石だな、ハル」
「エヘヘ…………」
「それだ。中々イカしてるじゃね~かよ」
彼が着ている、赤地に青龍と白虎が殴り合って
いる模様の着物を、バルディはイカすと表した。
「そうだろう? ホコリまみれの棺から、出てきた
ものを、ハルと共にキレイにしたら、中々の逸品
だった。大和連合に、鑑定能力の高い者が居たの
だろう」
この会話の通り、昔のラッシュ家は、この地で
暴虐の限りを尽くしたヤクザに当たる組織、大和
連合を打ち破り、家族と周辺住民に安息を与えた。
しかし、あまりにも街から離れている為、結局
人口は直ぐに減っていき、今ではラッシュ家のみが
座している。
(…………だからって、言葉が共通言語から離れすぎ
だろう)
故に、使用言語が独自の進化(?)をしてしまった
ようだ。
夜食後、消灯時間が近づいた頃に、俺はミュール
とチックをジョルニア家に、リョウとサタヤナを
ホロライズ家に送り届けた。
友人宅にお泊まりする2人はそれぞれ、そこが
担当の防衛区域なのだ。
~翌日~
「ふぁ…………」
朝の日差しを浴び、俺は目を覚ました。久々に
いつも寝ていたベッドで寝たな。
「肉は、どこだ…………」
そして、朝イチのタンパク質を求め、冷蔵庫の方
へと向かった。
(ハルの奴、今では冷蔵庫を1週間は動かせる程
の魔力を、1度にぶちこめるからなぁ。どんどん
母ちゃんに近付いてやがるぜ)
巨大フライパンを駆使し、数多の猪肉を矢継ぎ早
にレアまで火を通して食べながら、妹の成長に思い
を寄せていた。
(…………母ちゃんといえば、やっぱヴィヴィアンと
雰囲気等々が似てやがるな。いつか対面させて
みてぇわ)
そして、自身の母親と、仲間と共闘している幽霊
が、似ていることを認知した。
「さて、脇の野菜も残さず食ったし、どんな冒険者
共が集まってるのか見るかぁ!」
食べ終わり、食器を水に浸すと、冒険者装備に
着替えてから外へ出た。
~広間~
「さーってと、ウチの村を守る奴は、どんな面構え
かn…おおおおおお!?」
家を出て、村を見回っていると、嫌でも視界に
入り込むビキニアーマーの3人の中心に、俺が
1戦士として憧れている男が居ることに気づいた。
「あらー、ディー君おはよー」
「ディー君もここ担当なの?」
レオとシロンが俺に気づき、話しかけてきた。
「おう、それプラス地元だぜ。んで、そこのガタイ
の良い奴は、カルロスさんだな?」
「あぁ? 随分と口がなってねぇ小僧だなぁ…………。
ナメとんのか?」
俺が本人確認をとったところ、カルロスさん
は啖呵を切って来やがった。"口がなってねぇ"
って理由で啖呵を切られるのは、ミュールの奴が
"コーチ"って呼んでたオッサン達と似ていると
思った。
そういえば、アイツはカルロスさんに襲われ
かけただか言ってたな。同じ女のレオ達に今の
ところ、怪我は見えねぇが…………。
「ああ、口の悪さは田舎出身なのと、互いに冒険者
だってことで勘弁してくれや」
「ちょ、ディー君! カルロス様にそれは失礼よ!」
「どういうことだよ?」
ロニーが謎の定義を持ち出してきたので、俺は
聞き返した。どうにも、言葉より拳の方が理解
しやすいんだよなぁ…………。
「何でもクソもねーだろ。俺様は一番魔王討伐を
期待されている"アースヒーローズ"で前衛を
張っている、選ばれし存在なんだぞ。テメェら
みてぇな幾らでも替えの効く雑魚共が、タメ口
聞いて良い相手な訳ねーだろぉがぁ!!」
…………最後に何か叫んでいたけど、眠ぃわ。
「ふぁ~~ぁ、まぁ、そうカッカすんなって、
小せぇ男に見えちまうぜ?」
アクビが出る程になぁ。
「テメェ…………」
「つーかよぉ、実際アンタ、俺より筋肉小せぇなぁ。
憧れがデカかった分、なんかガッカリだぜ…………お?」
話し終えて、カルロスさんの方を見ると、矢鱈と
目を血走らせて俺の方を見ていた。周囲のビキニ
3人は逆に、顔が真っ青になっていやがる。何でだ??
「テメェには、口の聞き方を教えてやる…………
そこ動くなよ?」
『ボキボキ…………』
カルロスさんは、指を鳴らしながら俺に凄んで
きた。どうやら口の聞き方って奴を、ケンカで
教えてくれるらしい。
「良いねぇ、ケンカは大歓迎だぜ。一丁ウォーム
アップするかぁ!」
さぁ~~て、人類最強の物理攻撃力、その拳で
教えてくれや!
「ウォームアップだぁ? んな分けね~だろ。
テメェは死n…」
「やめて下さいカルロス様!!」
「今、2人が怪我したら、この地域の防衛力が
激減します!」
「ここはどうか穏便に拳を納めて下さい!」
カルロスさんが俺に本気の殺気を向けた所で、
ビキニ3人が間に入った。良いところだったのに
なぁ…………。
「どけ、不届きものに罰をa…」
「あ~ん、今夜と言わずぅ~~、1週間ぶっ続けで
アタシ達とフィーバーして良いですからぁ~~」
「食事代、宿泊費、その他各種費用は、全額ワタシ
達が負担しますからぁ~~」
「カルロス様周辺の雑務もこなしますのでぇ~~、
ここはどうか、穏便に済ませましょう?」
そして、なんつーか…………矢鱈と気の抜ける声で
拳を納めさせた。まぁ、ケンカなら魔王軍の後でも
出来るし、そっちの方が筋は通るんだろうな。
「…………仕方ねぇ。小僧、命拾いしたな」
「そうなのか? まぁ、防衛が終わったら、全力で
語り合おうぜ!」
「…………」
「「「お、穏便に…………ねっ?」」」
「フン、魔王軍相手にくたばるんじゃねーぞ?」
「あんたこそな! じゃ!」
そう言って、カルロスさんとは別れた。けど、
何つーかなぁ…………、ケンカしようってなっても、
"こりゃ勝てねぇわ"って実力差を感じなかったん
だよなぁ。
第一印象は、"ガッカリ"だ。
「おおっ! 心友共、テメーらもここの防衛だった
かぁ!」
だが、今度はシンプルに嬉しい事が判明した。
「おおっ、嬉しき再開だぞ、バル氏」
「D級で2クエストを共にこなしてから、早1月。
随分と差をつけられちまったな」
「おうよ! レベリングと筋トレのダブルコンボで、
勇者道を大爆走だぜ! ティグ、お前も
随分と太ぇ腕になったなぁ!」
俺は、補助魔導士ジョセフと虎人拳闘士ティグの
再会を喜んだ。コイツらは、俺との共闘やケンカで、
印象に残るほど楽かった奴等だったぜ。
こういう連中は、会った日に速攻で心友認定だぜ!
「おう! お前に教えられた筋トレを続けた結果、
お前に及ばずとも、目覚ましい成長を遂げたのさ」
「ああ、状況次第だが、連携時には頼りにしてるぜ」
「バルディの速力は、もっと頼りにするぜ!」
「フッ、小生の補助魔法も、その時が来たら
味わうと良い」
「ジョセフ、何ならそのサイキョーサポートを、
全員にかけてやれば良いじゃねーか」
「ご生憎、魔力が持たぬのだ。故に、有能なる
指揮官の判断に従う他無い」
「んー、そりゃしゃーねーなぁ。そんじゃ、
号令が掛かるまで、俺が組んでる大心友達と
話させてやるよ」
「おおっ、バル氏の相棒達か!」
「おれは女戦士ちゃんなら、お前と歩いているのを
見たことがあるぞ」
「ソイツはミュールだな。おーい! 俺の心友共と
話そうぜ~~!」
「バルディ君!」
「ついでに簡単な連携も決めましょう!」
こうして話を盛り上げた。
「言葉で何を言ってもゲラゲラ笑いやがるから、
拳での会話を試みたんだよ、そしたら話が通じた
みてぇで、以降は英雄物語を読み聞かせながら、
俺の知らねぇ文字を教えてくれるようになったんだ」
「「あはは…………(殴って従わせたって事だよね??)」」
「全く、それでよく仲良くなれるわよね」
「バル氏は嘘をつかない。故に、真実である可能性
が極めて高い話題であろう」
「あたぼうよ!」
それは、俺が訓練所時代に仲良くなった奴の
話だったり、
「後ろに退いても、熊パンチがぶつかる! その時、
おれはどうしたと思う?」
「逆に前に出て…………うーん?」
「んで、食らいつく!」
「バルディ大正解! リョウもいい線いってたなぁ!」
ティグの虎人ならではな武勇伝だったり、
「あっ、これは制御不能。そう思った時には、
彼女の美脚は、小生の眼前!」
「…………どうなったの?」
「小生が目覚めた時には、屋敷は全壊。多額の
借金を背負うことになり、彼女にも罪悪感を
背負わせてしまったのだ」
「辛かったね…………」
「因みに、借金は先週無事に返済完了だ」
「まぁ、次は上手くいくだろ!」
「あんたはそう言って、何度も何度も同じ失敗を
犯してねぇ!」
「しょーがねぇだろ! 気持ちすら後ろ向きだと、
何も出来ねーじゃねーか!!」
ジョセフの失敗談だったり、
「…………で、ここにティグの一撃があれば良さげ
じゃない?」
「ミュール、凄く頭良いな」
「言いすぎよ~~」
「あっ、直前の撹乱だけど、強化ゲイルよりは、
ノーマルゲイルとノーマルアンドレさんの方が
良いかも。この2人なら、十分なダメージが
通ると思うし」
「フム、物理攻撃力と敏捷性は落ちるが、それでも
手数と攻撃の向きが増えた方が有益そうと見るか」
軽い連携の手順だったりした。
~サタヤナの担当区域~
「よーっし、リョウの実家は、アッシが責任を
持って、守り抜くッス!」
サタヤナは、気合いを入れ直し、町から少し
離れた場所に居るであろうモンスターに向けて、
杖を構えた。
「あー、面倒くさいわね~~…………」
その隣で、高貴な身なりの魔法使いが、ベンチへ
乱暴に腰かけた。
(あれ? この人って、アースヒーローズ所属の
ローズさん…………。こんなにだらしない人なんだ)
~デュランの担当区域~
(回復係は当然後ろ。ここなら、飛び出すことも
逃げることも直ぐに出来るな。昨日のあの娘、
しっかり動けるかな?)
デュランは、昨日馬車で見かけた回復術士が
気になるようだ。
「フンフフーン♪、モンスターちゃーん、早く
お・い・で♪」
(え? この人ってアースヒーローズの回復係の
アリスさん??…………いや、この人の場合、攻撃
に回した方が、効率的なのか?)
~チックの担当区域~
「どんなモンスターだろうと、俺の敵じゃねーよ」
「臓物いくつ、潰せるかな~~?」
中々、荒くれた雰囲気の冒険者達が揃ったようだ。
(補助と回復。今こそ僕の真価を発揮する時!)
チックは、ここで一肌脱ぐつもりらしい。
~大和王国~
「クレインよ、此度の帰還、感謝する」
「礼には及びません、国王様」
「我も"オダ"の名を背負う男として、前線で
お前達を導こう」
(…………クロウズ、叶うことなら、お主と共に
任務に臨みたかった)
クレインが物思いに更ける後方では、
(イメージは固めるだけ固めた。後は、実行
するだけ!)
顔を隠した回復術士…………、かつてリョウに
復讐を決意させたサウザンドグローリーの1人、
ローリーが覚悟を決めていた。
~寂れた集落~
「はーあ、完璧超人な私が、どうしてこんな辺鄙
な場所の警護なのかねぇ?」
アーロンは、単独での防衛を言い渡されていた。
その内容は、集落の完全防衛、住民及びギルド
職員への攻撃禁止、これを徹底することだった。
(あの赤髪野郎、ゴロツキ上がりの分際でぇ、前世
は世界の頂点で、今世も未来の頂点な俺に、こんな
クソみたいな任務を与えやがってぇ!! 必ず隙を
見つけて殺してやる!!)
この任務は、表向きは黒い噂の立つアース
ヒーローズのリーダーとして、どれ程の誠意を
持っているかを測るために、就かされた事に
なっている。
しかし実情は、アーロンが速度を活かし、
防衛区域の冒険者や民を、モンスターの仕業に
見せかけて殺すことを防ぐ目的がある。
~アント・ネット連合街国・城下町~
「ワイルド、殺気が強まっている。奴等の動きは
どうだ?」
アーロン達を差し置いて、人類最強と目される
フレイ・パイロンが、そこにはいない人物に話し
かけている。
~アント・ネット連合街国・工業都市~
「全エリアを確認します。…………!、辺境の大地、
リジョンにて、赤鬼部隊が動き出しました!」
~城下町~
「そうか。そこに迎撃指令を送った後、他の土地
でも動きがあり次第、迎撃指令を送れ」
~工業都市~
「了解です! リジョン支部! モンスターの動き
を確認した。正門を中心に、防衛の準備をお願い
します!」
~リジョン~
「了解。冒険者諸君、モンスターの接近に備え、
迎撃の体制を整えろ!」
司令塔の掛け声で、現地の冒険者達は配置についた。
そして、
「「「ギャオオオオオオッッ!!」」」
「「ガルルルルルルルッ!!」」
100を裕に超える数のモンスター達が、辺鄙
な場所へ一斉突撃してきた。
「「「火炎津波!!」」」
「「「岩石流星群!!」」」
対する冒険者達は、遠距離攻撃の十八番、魔法
で対抗したり、
「「「「オラオラオラオラオラァ!!」」」」
対遠距離の飛ぶ物理攻撃で対抗する。
「カスはさっさと死んでちょうだ~~~い!!」
そして、カルロスは一際大きな飛ぶ斬撃を放ち、
ざっと30体のモンスターを瞬殺した。
「「「カルロス様…………素敵ですぅ~~!!」」」
傍らのビキニ3人は戦闘に参加せず、カルロス
に媚を売っているだけだった。
「ん?」
1人の冒険者が、あるものを目撃した。
「何が起きてんだ!?」
もう1人が、ソレの違和感を叫ぶ。
『ドドドドドドドド…………!!』
「音が…………遅れて聞こえてる??」
目にも止まらぬペースで、破裂していく
モンスター達に対し、その破裂音が心なしか
遅れて聞こえてくるのだ。
(おい…………アレって1時間前に会った生意気な
大男か…………?)
だが、飛び抜けてレベルの高いカルロスだけは、
ソレの姿を捉えることが出来た。
「ウッシャア!!」
『ドパァァァン!!!』
そして、群れのリーダーだと思われるモンスター
が、盛大に破裂した瞬間、1人の大男が立っている
姿が見えた。
「最ッッ高だねぇ…………今なら、SS級モンスター
も一捻り出来そうだなぁ!!」
バルディは、拳2つでカルロスの倍のモンスター
を倒し、敵前ど真ん中で棒立ちになり、補助魔法の
心地よさを堪能していた。
「「「「「「グギャアアアッッ!!」」」」」」
生き残りの6体が、隙だらけの彼に飛び掛かった。
『グチャ!』
『グチャ!』
『グチャチャチャチャァ!!』
だが、高速で飛来した6つの鉱石塊で、肉が
四散した。
「全く、勝手に飛び出されるこっちの身にも
なりなさいよ!」
『火の玉小僧と言うには、いささか巨大すぎるし
速すぎるわね』
「でも、皆のMP温存になったよ!」
どうやら、ヴィヴィアンが精製した硬い鉱石を、
ミュールのハンマーで弾き飛ばした攻撃だった
らしい。
「ディー君…………!?」
「芋女にクソイケメンも…………!!」
「あんなに…………強いの…………?」
ビキニ3人は、彼らの戦闘力に戦慄した。
(アイツ…………!! あの時の田舎女!!!)
カルロスは、かつて襲い損ねたミュールの
存在にも気づいた。しかし、流石にイメチェン
が過ぎたリョウには、気づけなかった。
「さぁーーて、殺り合おうぜ、モンスター共!」
今、人類と魔物の威信をかけた戦争が、始まった。
最後までご覧くださりありがとうございます。




