聖女を騙る、残虐な悪魔
俺が奴等との実力差にうちひしがれる一方、
奴等は別のことに注目を寄せていた。
『グキャア~~』
「あらあら、もしかして助けてくれたことを
感謝していますの?」
向こうでは、アリスが助けた飛竜になつかれて
いたのだ。
「流石はアリス。魔王討伐を為し遂げた暁には、
テイマーの適正を女神様に見てもらうのも
良さそうだな」
「幼体とはいえ、飛竜になつかれるなんて滅多に
無いわよ」
俺以外の4人が和気藹々と飛竜の子供と戯れて
いる。俺も動物は大好きだ。それは、モンスター
とて例外でない。一緒にあの子と戯れたい。
しかし、今下手に近づいたら、カルロス辺りが
八つ当たりと評してあの子に危害を加えかねない。
そう思って影を薄くしていたが…………今思えば、
どのみち運命は変わらなかったように思う。
「へへっ、けどよ、やっぱりアリスは絶望が
大好きなんだよな」
アーロン、ローズが賞賛する中、カルロスのみが
不穏な言葉を発した。
「ええ、当然に決まっている…………でしょぉ!!」
『ギャアアッッ!!!』
何と、みるみると表情が悪どくなったアリスは、
自身を慕っていた飛竜の顔面を中心に、光魔法で
焼き始めたのだ。
「な、なっ、何しているんだ!!?」
俺は思わず敬語も使わず、大声を上げてしまった。
「うるせぇ!! お前ごときが何、タメ口で喚いて
やがる!!」
「アリスの行動を否定する気?」
「そ、そうだ! モンスターとはいえ虐待するなんて!
お前それでも人間か!!」
~回想~
「やめろおおおおおおおっっ!!」
学校の帰り道、チンピラ達に蹴飛ばされている猫を
見つけた俺は、敵わないと分かっている筈の奴等に
挑みかかった。
「んだてめぇ!!」
「ぐあっ!?」
ただただ突撃した俺は、迎撃のケンカキックで
盛大にカウンターを食らった。
「今すぐソイツに土下座しろぉ!!」
それでも食いつこうと再び突撃をする。
「はん!」
「があっ!? ブッ!!」
側にいた奴の踵落としで頭から転んだ所、挑んでいた
チンピラに頭を踏みつけられた。
「お前、猫を袋に詰めとけ。他全員でコイツを
いたぶろーぜ!」
「良いね~www」
「それ最ッッ高だぁwwwww」
奴等は下劣な笑い声をあげ、俺の全身を
蹴り込み、踏みつけた。
「むぐぐぐーーーー!!」
猫に逃げるよう叫ぶも、声にすらならない。
「ギャッハハハハハハwwww」
「何て言っているかわかんねぇよぉwww」
「オラオラァ!!」
「死ねぇ!!」
この辺で、意識が途切れたのだと思う。
~回想終了~
どうにも俺は、昔友達だったのが近所の野良猫や
野良犬だったため、明らかに人を慕う動物を虐待する
人間が許せない性分らしい。
「…………ハァ、君は何も分かっていないんだな。
良いか、モンスターは本来存在すらしてはいけない
存在。だからアリスは敢えて希望から絶望に変える
ような事をして、その魂が後々受けるであろう罰を
軽減してi…」
「うるさいっ!!」
俺はアーロンのうざい説教を切り上げ、クソ共の
荷物を投げ捨てて駆け出し、焦げた臭いを放ち始めた
飛竜を庇うように光を遮った。
「グワアアアッ!! 逃げろぉぉおおおおおっっっ!!」
「あらあら」
その身を焼かれつつも、飛竜を飛び立たせる事に
成功した。これで少しは報わr…
「ゆっくりといたぶれなくて残念ね~~極光・線貫!!
アッハハハハハハハァッ!!!」
目の奥に莫大な狂気を有したアリスは、無数の
レーザー光線を詠唱した。
『ギャオアァァァアッッッッ!!』
無数の細いレーザー光線に貫かれ、幼体とは
思えない断末魔を発しながら、飛竜は息絶えた。
「…………ケッ、こんな不味い肉食えるかよっ! ペッ!
ペッ!」
最早血肉といえなくなった身体に、カルロスは
唾を吐いて、何度も何度も踏み潰した。
「やめろっ!…グアッッッ!!!!」
その憎い踵を止めようとした俺だったが、
待ってましたとばかりに蹴り飛ばされてしまった。
「さっきからよぉ!!」
「ギャアッッ!!」
ボディーブローが腹にめり込んだ。吐血しただけ
でなく、腸の一部と腹全体に内出血が起きたことが
分かってしまう。
「ごちゃごちゃと!」
「アグッッッ!!!」
フックで右の肋骨全てが折られた。全て胃に
貫通した。
「うるせぇぞ!!」
とどめの蹴りで、左腕が折れて頬の骨にもヒビが
入った。
「あまりにも酷い。これはお仕置きしなければね」
「ヒッ…………」
アーロンの表情があまりにも恐ろしかったせいで、
小心者の俺は情けない声を上げてしまった。
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