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闇の攻略

長い間お待たせしました。エタらないように頑張ります。

46話


~中規模の病院~


「ハァ…………ハァ…………」


 包帯で顔の傷を隠した回復術士が、大怪我を負った

患者に回復魔法をかけている。


「そこ! その程度の縫合でチンタラするな!! 減給

するぞ!!」


 しかし、その手際の悪さから、常々こうした叱責を

受けている様子だ。


「す、すみません!…………(辛い。こんな過酷な仕事を

する事になるなら、サザンが決闘を受けた時、1抜け

すれば良かった…………いや、初めからリョウと仲良く

するべきだったのかなぁ…………?)」


 目の前の患者に集中しつつ、1ヶ月でボサボサ髪

から、正統派イケメンへ変貌した死霊術士の顔を

浮かべ、自身の選択ミスを後悔していた。


(でも…………仕事終わりはもっとイヤ)


 そして、顔面全体を包帯で巻かれている男の方を

チラリと見て、毎夜攻め立ててくる自身の浮気が

原因で、命を断った元彼の霊に震えた。


「…………」


 回復術士に一瞥(いちべつ)された男もまた、他人が見えない

何かに酷く怯えている様子だった。


~魔法道具生産工場~


「…………」


 回復術士同様、顔に包帯を巻いた魔法使いが、

生気の無い表情で、製造ラインの部品に魔方陣を

描いている。


「オイ! この部品に魔方陣を描いた奴!! 火炎(ファイアー)

じゃなくて、火炎(ファイアー)(ボール)を描けって言っただろぉ!!」


「す、スミマs…げはっ!!」


 工場長は、包帯を巻いた顔を容赦なく蹴りつけた。


「フン、お前だけは仕事終わりにサービス残業で

直せよ。ったく、傷物のブスな上に使えねぇとか、

よく息をしていられるよなぁ! あー、惨め惨め!」


 そして、サービス残業を言い渡すと、罵倒しながら

去っていった。


『全くもって、清々しく落ちぶれたもんだなぁ。ん?

どうした~、悔しくて涙が止まらねぇらしいなぁ~~。

良いんだぜ? 悲しい時は、思う存分泣き叫べよ~~』


 幼少期に自身のいじめが原因で、命を断った

幼馴染みが、かつて自身がそうしたように、ダメ出し

で悲しさを増大させる言葉を投げ掛けてきた。


「エグッ…………ヒック…………」


 泣けば彼の思う壺と分かっていても、涙が止まらない。


『あのリョウとかいう、イケメン君様様だぜ~~。

まさかこうして、復讐の機会が訪れるなんて、夢にも

思わなかった。俺に昇天してほしけりゃあ、俺の気の

済むまでいたぶられな。最も、その前にストレスで

死んじまうかもしれねぇケドなぁ~~!!』


(リョウ…………あんなクソ陰キャだった奴が、あんな

ハイスペックイケメンになるなんて、分かるわけ

無いでしょ!…………どうして、こうなったの…………??)


 そして、こうなった原因を思考するも、自らの

落ち度に気づくことは無かった。


~裏路地~


「お願いします…………銅貨1枚だけでも、お恵み下さい」


 大柄だが地味な男が、ひざまついて通行人に

ものごいを行っている。


「うるせぇんだよ!!!」

「グアッ!!」


 しかし、顔面を踏みつけられ、小さくない

ダメージを受けた。


(…………俺って、何してるんだろう…………?

パーティーの大戦力になりうる男を、虚勢心と恐怖

から追い出して、狙っていた女はもう1人の女共々

リーダーのモノになっていて、明らかにパーティー

の荷物で、そして、あの男がハンデを出すや否や、

恥も外部もなしにイキがり、返り討ちに合った…………)


 次第に、両目から涙が溢れ出す。


(今ではものごい。そして相変わらず女共に稼ぎで

負ける。…………情けねぇよぉ、俺は、…………あの男や、

赤髪オールバックの斧戦士みたいな、最強の漢を

目指していたんじゃなかったのかよぉ…………クソォ!!)


 この日、重歩兵だったこの男は、久しく忘れていた

夢を思い出したのだった。


 しかし、有利な条件の決闘に敗北した代償は重く、

それ以前の粗相も含めた賠償金を支払った上で、

再スタートを切る準備を行うことは、辛い道のりと

なること間違いなしである。


~魔窟・ダークホール~


「…………ワイルド、暗すぎて何も見えん。すまぬが

手を取ってくれ」


「構いませんよ」


 ワイルドは、暗くて何も見えていないクレインの

手を取った。


 この魔窟は、深層に行けば行く程暗くなる。

今回ワイルドは、修行仲間のクレインに加えて、

別パーティ2隊と行動を共にしていたのだが、

あまりの暗さに2隊とも4階層前でリタイアを

表明したのだった。


「…………しかし、お前はこの闇の中、よく視界を

確保できているな。忍の心得として、夜目を効かせ

られる拙者(せっしゃ)ですら、全く見えぬというのに」


「俺もそろそろ限界ですよ。ですが、視覚以外にも

聴覚や触覚で、地形やモンスターの形は分かります。

なんなら、モンスターの位置の把握だけなら嗅覚だけ

で十分です」


 そう、俺の五感は、ありとあらゆる場所にて、

正しい情報を教えてくれる。研ぎ澄ました個々の

感覚のどれかが通用せずとも、その他の感覚で

把握すれば良いだけだ。


(けど…………クレインさんには悪いんだけど、今の

状況、凄くドキドキしてしまうな…………)


 が、感覚が鋭い分、肌から感じる温もり等も、

人一倍感じてしまう。今回はそれが仇になって

いるな。この距離だと、整った顔も見えるし。


「そうか、それだけ観ることが出来るのであれば、

ここまで落ち着いていられるのも不思議ではないか」


「ええ。…………そろそろ、気を引き締めましょう」


「ああ。…………かなりの強さだな」


 そして、俺達は最下層へと続く段差にて、奥から

漏れ出る強大な殺気を感じていた。この分野なら、

クレインさんも深く精通している。


(!!…………俺の目に、何一つ情報を渡さない闇が

あるとは…………だが、観えるぞ)


 段差を降りきると、目の前には巨大な竜が

立ちふさがっていた。


(不味いな…………殺気で挙動こそ分かれど、敵の形が

全く分からん。これでは拙者はただの足手まといだ)


 そう、このままでは、攻撃の回避こそ可能だが、

得意の斬撃を放つことはおろか、地形やモンスター

と衝突して体勢を崩し、その隙に殺されかねないのだ。


「見えないなら、照らすまで。多重(アロット)(ミドル)召喚(ゲート)

砂漠(デザート)照明(イルミネーション)!」


『グオアオオオッッ!?』


 突如、全方向から日中の砂漠の日差しに照された

事で、眼前の竜は動揺した。


「あれは…………暗黒竜!」


 平均的なA級パーティ、4人組で倒せるかどうか

の力を持つ、闇の竜が佇んでいた。単体ならばB級

パーティの昇級試験に適応できるが、この闇の中

では下手をすればS級相当の強敵になるだろう。


「援護を頼む」

『ドッッ!!』


 俺に一言呟くと、クレインさんは縮地で初めから

最高速度に達し、暗黒竜との間合いを詰め始めた。


二重(ダブル)(ミドル)召喚(ゲート)

『グオオオオッッ!!』


 暗黒竜の反応速度は中々のようで、向かってくる

クレインさんを、両爪で迎撃しようとしている。


 恐らく、彼女なら回避できるだろうが、万が一を

防ぐことこそが後衛の仕事だ。


大海(オーシャン)挟撃(ギロチン)!」

『ゴッッ…………!!?』


 海柱で頭と顎を挟み撃ちにし、脳を揺らしたのだ。


「居合・噴靂(ふんれき)(きょう)(ざん)!」


 そして、暗黒竜の真下に踏み込みを行ったクレイン

さんが跳躍し、首の左側に斬撃を放つ。そのまま天井

を蹴り返して高速落下し、左側にも斬撃を放つ。


 音もなく地面に降り立ち、いつ見ても見惚れる

納刀動作が終了したと同時に、竜の首は落ちた。


「お見事です」


「お前が照らしたお陰だ。独りでは絶対に敵わなかった」


「それでもです。竜の鱗に斬撃を通せること自体、

素晴らしい事ですよ」


「……………………」


 俺は事実を褒めたつもりだったが、何故か黙り

込んでしまった。


「どうかしましたか?」


「いや、拙者の刀が通じるのであれば、お前の拳も

通じそうだと思ってな」


「そ、そうですかねー? 今度試してみよっかな~~」


 意外な返しに、少々しどろもどろしてしまった。


「それはそうと、我が怨敵(おんてき)2人は今、どのような

様子だ?」


「そうですね、そろそろ大詰めの頃合いな筈です。

ここでなら、観察も存分に行えます」


 俺はそういって、単眼レンズを2つ取り出し、

二重小召喚(ダブルスモールゲート)でレンズの3分の2を地球へ伸ばした。


(このままだと、1面の大海原を見ることしか

出来ないが、俺の視点が地球にある時、座標照準

はこの世界に移る)


 するとどうか、この世界の何処にでも、召喚(ゲート)

開く事が出来るのだ。


 今回は、サニーとフォールのツカハラ兄弟…………

おっ、丁度憎きアーロンと密談しようとしているか。

ならば、肖像(しょうぞう)()の目から見てやろう。そして、

漏れ出る音から聞いてやろう。


        "二重小召喚(ダブルスモールゲート)!"


~変に小綺麗な小屋~


『コンコン』


「…………入れ」


 酷く不機嫌そうなアーロンが、一言呟いた。


「失礼します。…………今月の、シノギの報告に来ました」

「ゴクッ…………」


 報告にやって来た兄弟は、アーロンの表情を見て

酷く怯えていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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