リベンジ・オードブル -結-
まさかここまで長くなるとは…………。しかし、これは
あくまで、"前菜"にすぎない…………。
45話
「突風正拳ゥ!」
~回想・格闘術訓練~
「良い? 相手の攻撃を見切る時は、相手の全身を
ぼんやりと見れば良いのよ」
「ぼ、ぼんやり…………ですか?」
僕は、シャールさんの言葉に驚いた。
「全身をぼんやりと見ておけば、攻撃の予備動作を
見ることが出来るから、拳や脚が何処に飛んでくるのか
分かるのよ。言葉よりも実践。今の言葉を参考に、私の
攻撃を避けてみなさい!」
「はい!」
拳は一瞬にして、僕の眉間を捉えた。
~回想終了~
(…………酷すぎる)
脚の魔力を限界まで高めるサザンに対し、僕は
右手に掴んだ錫杖を後ろに回し始めた。対する脚は、
左足を前に、右足を後ろに下げた。
『ドォン!!』
次の瞬間、サザンの暴風が炸裂し、拳を突き出した
奴が猛スピードで接近する。
「がはァ!??」
そしてサザンは…………、
(内臓ゥ…………潰れたァ!?)
僕の逆手右ボディブローを、鳩尾に食らったのだった。
対するサザンの拳は、僕の頭の右側を通過した。
(あまりにも予備動作が大きい。こんなの体術持ち
モンスターの群れに出会ったら、直ぐに殺されるぞ)
が、相手は仮にも魔拳士。どのような体勢からも、
流れるように次の手を打ってくる。
「ォオ"ッ!!」
(首と右手を狙った掴み! 掴んで即、電流地獄か。
更に、左後ろには、槍を構えたドグロが迫っている)
現状を踏まえ、僕が最適解として弾き出した
アクションは、大きく屈みつつ左足を軸に身体を
半回転させることだった。
「うおっ!?」
ドグロからすれば、大きく屈んだ僕が突如消えたかの
ように見え、加えて、このまま突撃すればリーダーに
手傷を負わせることになる。
奴は急遽、全力の踏み込みで減速を開始した。
その間にも、僕は脚捌きを駆使してサザンの背後を
取る。
そしてサザンの手は…………、
「雷握流撃」
「ギャアアアアアアア!!!」
ドグロの左肩と甲冑を掴み、フルパワーで電流を
流し出したのだ。
「っえェ!?」
一瞬遅れて、自身が掴んでいる対象が、重歩兵の仲間
であることに気づく。
「俺だ…………糞ボケがァ!!」
サザンの電撃が止むや否や、ドグロは奴を引き剥がし
ながら罵倒した。すると次の瞬間、
「うるせェ! 毎度毎度ノロマの分際でしゃしゃり
出てくるんじゃねェ!!」
『ガン!』
「ッ!?」
サザンはドグロの腹を蹴りつつ、罵倒しだしたのだ。
鎧でほぼノーダメージとはいえ、パーティーのリーダー
にあらざる行為だ。
後衛の女2人は、援護も忘れて拍子抜けした表情で、
こちらを見ている。
「んだとコラァ!! 大した実力もねぇ癖に、顔で女を
侍らすからって、リーダーを気取りやがってぇ!!
テメェも前から気にk…」
「グエッ!?」
サザンが再び反論しようとしたタイミングで、背骨に
虚を突いた一撃が入った。というか、僕が入れた。
理由は簡単。実力を縛った僕を舐めてかかり、決闘を
受けた癖に、目の前で下らない口喧嘩を始めた事に
怒りが沸いたからだ。
「反撃なんか、させるかよ」
「ギャ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガッッ…………」
更に、ワイルドさんやシャールさんから学んだ、
人体の急所の位置を参考に、奴等が反応できない
一瞬の間に、錫杖先端部の連撃を、サザンの全身に
おみまいした。
「ふんっ!!」
「ゲハァアァ!!!」
「「キャアッ!?」」
最後に、錫杖の取り回しと重心・脚裁きを駆使し、
破壊力を最大にした振り抜きを食らわせ、サザンを
思考停止している女共の方へと飛ばしてやった。
ドグロの供述を深読みすれば、サザンと女共は
深い関係にあると予測できるので、僕なりに女共へ
プレゼントしてやったのさ。
次はっと、
「邪魔者を、排除してくれて助かったぜぇ!」
サザンと女共の動きが封じられたや否や、ドグロが
いきり立って雑な一撃を繰り出してきた。当然、錫杖
でいなした。
「これでアイツが敵わなかったお前を殺しぃ! 俺の
力を証明できる!!」
感情任せに連続で突きながら、叫び散らした。
しかし、僕を倒して力を証明するとは、なんと
まぁ…………、
「おや? 君達の中では、僕は楽勝な相手じゃ
なかったのかな?」
「!!」
決闘前、サンドラが笑いながら発言した一言を
引き合いに、ドグロの理論を崩し始める。そして、
奴が反論する隙を与えず口撃を続ける。
「そんな相手を殺すことで、そんな相手にすら勝てない
奴を超えたという証明をするって、ギャグなの??
ぜんっぜん、力の証明にならないよねぇ~~!」
嘲り、煽りはしたが、本音でもあった。
「っつ! テメッ…………!! うおっ!?」
『ガチャン!』
奴が正面切って反論できなくなり、動揺した瞬間に、
数ヵ所を錫杖で強めに殴り、重心を崩壊させて尻餅を
着かせた。
「んなろ…………オッ…………グッ…………立てねぇ…………」
「おやおや、踏ん張り時が多い重歩兵のドグロクンは、
どうしてこんなに重心が乱れているのかなぁ~~?」
煽りながら、絶えず重心を崩すように錫杖先端部で
突き続ける。
「うぉら!!」
当たる訳がない、雑にも程がある蹴りを放ってきたので、
「ほいっと!」
「うおあっ!?」
その時の勢いを利用し、奴をうつ伏せの体勢にした。
そして
『ガチッ!』
「重歩兵らしく、力で退かしてみなよ」
「っつっっ!!!!」
奴の頭を足で踏みつけにしてやった。
(リョウ…………雰囲気も、戦法も、普段の彼とは思えない…………)
ミュールさんが見ている手前、今まで見せたことも
ないような残虐性を見せることに、引け目が無いわけ
ではない。
だが、奴等は弱者、或いは驚異になるような人間を
いたぶり、そして"復讐"を誓わせるような"外道"だ。
幽霊さん達の復讐を幾度も手伝った僕は分かる。外道
共の悪行を止める術は、"徹底的に心をへし折る事"
以外に無いと。
「こぉの!!」
ドグロが僕の足首を掴みにかかる。
「遅いんだよ、ノロマ!」
僕は脚捌きによって、奴の両手を回避しつつ、真横に
陣取り、レンガの壁まで蹴り飛ばした。
ワイルド君主導の筋トレと食トレを、能動的に行った
今の僕にとって、ドグロ程度は玉蹴りのボールと何ら
変わらない重量感だ。
さて、僕や友人達を影から暗殺する気すら起こせなく
なる程の、恐怖心を植え付けようか。
「まだ続けるのか?」
が、ドグロはさして堪えていない様子で、軽く
めり込んだ壁から抜け出てきた。
「ふぅん、最低限の防御力はあるんだ」
図らずも、この言葉は本心から発していた。
「お前が非力なんだよ。サザンが出るまでもねぇな。
俺がお前を倒し、サウザンドグローリーのリーダーに
なり、女共とサザンを俺専用の奴隷にし、そして
パーティー名もドグローズに改名だ。当然だよな?」
ドグロは下らない野望を長々と述べた後、そろそろ
サザンの回復を終えようとしているローリー達の方を
向いた。
「…………わ、分かったわよ」
「あんただけで何とかするなら…………飲むわ」
2人も僕とドグロの立ち回りを見て、了承した。
回復術士はさておき、魔法使いが援護を申し出ない
事には呆れることしか出来ないな。
「さぁーて、虐待タイムの始まr…」
「食らえ」
僕は、奴基準で瞬時に間合いを詰め、拳を打ち付けた。
「効くk…ゴプッ!!…………な…………に……………………?」
先程の蹴りより、明らかに速度も破壊力も遅い拳に
よって、奴は血反吐を吐き散らした。
「お前ごときにダメージを与える事など、造作も
ないよ。フン、フン、フンッ!」
触れた相手に"勁"を送る技、発勁によって、鎧を
超えて内臓にダメージを与えたのだ。
「ガハアッ!! ゲホッ!! ゲホッ!! わ、悪かっ
…………た……から…………も…………やm…」
「ダメだ、後百発食らうまで許さん。フン、フン…………」
「がああっっ!! ゴポァアッッ!!」
僕は、まるで作業を行うように発勁を行い、その度に
奴は大量の血反吐を吐き散らした。
(これ…………流石に止めるべき…………??)
あまりにも絵面が惨かったため、この時ミュールさん
は、僕を止めるか迷っていたらしい。
「雷撃!」
「っと」
が、サンドラが"漸く"援護に回ったため、僕が誤って
ドグロを殺す事態は回避できた。更に、
「爆衝正拳ゥ!」
回復したサザンが突き出した拳から爆発を起こす技で
攻撃してきた。僕は錫杖を駆使して奴の視線を欺き、
身一つで宙返りをして回避した。
「フッ!!」
「っくッ!」
手足を縮めて回転速度を上げ、直ぐ様反撃の蹴りを
放ったのだが、これは紙一重で避けられた。
「丁度良い。純粋な格闘能力で競おうよ、サザン」
「カスが、僕に格闘力で勝てると思うなよ?」
奴は、脚に纏った風魔法で超加速する突き技を
繰り出してきた。
「があッ!?」
「低能が、何故同じ過ちを犯すのかい?」
バルディ君の、開幕速攻を11度経験した僕から
すれば、こんな攻撃は止まって見える。…………11度
中、8度即死した身で言えることでは無いが。
奴は僕のアッパーから受けた衝撃により、全身を
回転させながら、どうにか壁に着地した。
「火球!」
「見るまでも無いね」
言葉通り、サンドラの火球を見ずに回避しつつ、
落ちた錫杖を、山なりに蹴飛ばした。
「炎魔法は速度不足だッ! 雷で攻めるんだァ!」
『カンッ!』
サザンはそう言って、壁を蹴り、突撃してきた。
同時に、僕の錫杖が壁に当たり、こちらへと戻って
くる。
「暴風挟腕ッ!!」
そして、僕の首に炎熱と冷氷を纏った腕を挟み込もう
とした。僕は早々に横跳びで範囲外へ逃れると同時に、
丁度真上を通過しつつあった錫杖を、キャッチした。
「墜ちろ!!」
「ガッ!?」
奴は先程の横跳びを単なる回避だと踏んでいたため、
脳天に直撃する一撃に、大ダメージを受けた。
『バウッ!!』
「イタタタッ!!」
「ああああっ!!」
地面スレスレで暴発した技により、女共の方へ大量の
石つぶてが飛んでいった。サンドラの詠唱も中断できて、
一石二鳥だ。さて、締めだな。
「君達との戦闘も飽きてきたね。僕は男女差別は嫌い
だから、痛くなるのを覚悟してね~~」
恐怖を与えることも兼ねて、カマをかけると、2人の
表情が変わった。
「雷撃! 雷撃! 雷撃ォ!!」
ドグロ、サザンに続いて、次は自分だと焦った
サンドラが、半狂乱気味に雷魔法を連発した。僕は
単調な魔法を、慌てず、急がず回避しつつ、距離を
詰めていく。
「さァ…………せないぞォォ…………!!」
頭を回復しつつあるサザンが、迎撃の体勢を取った。
「雷撃!! よsi…っ!?」
最後の魔法が直撃したと思ったサンドラは、喜ぼうと
したのだが、着弾地点に錫杖しか残っていないことに
気づき、顔を青ざめた。
「ガハッ!?」
『ドガァ!!』
「!! サza…!?」
僕にサザンが蹴り飛ばされ、壁にめり込んだことで
僕の位置を捉え、魔法を放とうとしたが、次の瞬間、
僕の姿が消えていたことで、背筋が凍りついた。
「魔封じ」
「カッ…………!? ハ…………!!!」
何て事はない。喉を錫杖で強打し、詠唱能力を
殺したのだ。魔法は無詠唱でも放てるのだが、相当な
想像力がなければ、てんで有効な威力にならない。
恐怖と喉の痛みに悶えるサンドラが、僕の魔法防御力
を突破する程の魔法を撃てるとは、考えにくいだろう。
「サンd…!!」
愛人の片割れを、なぶられた事に気づいた所で
もう遅い。僕の拳は目前だ。
「おおおおおおおっっっ!! フン! フン! フン!
フン! フンッ!! ぬおおおおっっ!!!」
「ガッ…………ゴッ…………クァ…………ッッ……………………」
そこから10秒ほど、百数発の連続突きを全身に
浴びせ、顔面には複数の陥没を作った。ローリーの
回復魔法だけでは、時間をかけても、元の顔に
戻らないだろう。
「一丁上がり~」
完全に失神したサザンを、震えることしか出来なく
なった女共へ、蹴り飛ばした。
「サ……ザン…………!? か…………お…………!!」
「君ごときじゃ治せないだろうなぁ。まぁ、それでも
頑張るなら、止めはしないけど」
「お、お願い…………です…………。彼と…………ドグロを
…………治させて…………下さい」
(こ…………ろ…………さ…………な…………い…………で)
一先ず、ひざまつく以外の行動を取れない程度に、
恐怖を与えることには成功したらしい。
「それじゃあ、君達が僕に与えた分を清算したら、
解放してあげよう」
拳を握り込み、ローリーの顔面へ
「!!…………あ…………が…………!? が……………………!!!」
ぶつけることはしなかった。本日2度目の辱しめを
与え、
「いたっ!? やめっ……あっ…………!!」
(何で…………こんな事に…………!?)
サンドラ共々、錫杖の先端部で十数回つつき回した
のだ。まぁ、男共への殴打と比べたら、撫で回すような
ものだ。事実、傷は継続的な回復で、消えるレベルだ。
とはいえ、顔を含めた傷の治癒期間は、1月以上
要するだろう。これは、男に取り入り、今から与える
"罰"の負荷を軽減することを、防止する為でもある。
「やっぱ…………俺の手柄…………だ!!」
ドグロがゆらゆらと此方へやって来た。
「ヒィ…………ぅう…………!」
(もう…………終わって…………!!)
女共に、反撃の余裕は無い。ならば
「!?」
「ただの打撃で沈め」
『ドゴォッッ!!』
僕はドグロの背後へ回り、渾身のパワーを込めた
錫杖の1振りで、女共が震えている直ぐ上の壁に
めり込ませた。
「ゴプッ…………」
今までの打撃も、厳密には多少効いていた。加えて、
今回は内臓を損傷した状態だった為、普通に大きな
ダメージが入った。
「これで、僕の完勝だな。今すぐサザンを治して
目覚めさせろ。敗者の落とし前をつけてもらう」
錫杖の先端部に引っ掻けたサザンを、ローリーの
目の前に突き出し、回復を命じた。
「その前に…………ドグロの内臓を…………治させて下さい
…………。命が…………危ないです…………!!」
腐っても回復術士のつもりかよ。僕の感電火傷を
治さなかった分際で、実に滑稽だね。しかし
「決闘の結果、死なれるのは困るな。まぁ、君達の
命そのものはどーーーーーーうでも良いけどねぇ。
良いよ、ドグロから回復しなよ。ただし、迅速かつ、
サザンの回復も完遂出来るように自分で調節しろよ。
出来なかったら、分かってるよね?」
「は…………いぃ……………………グスッ…………!!」
ローリーは泣きながら、どうにか2人を短時間で
回復させることに成功した。
サザンの目覚めと同時に、かつて僕へ働いた暴行の
慰謝料と、バルディ君、ミュールさんへの不適切発言
及び迷惑行為の慰謝料、そして、この裏路地一帯の
破損箇所修繕費を支払う契約を取り付けた。
「(居ないことを祈るばかりだが)、怨霊召喚!」
「「「!!」」」
念のため、怨霊を呼び出した所、女共に男霊が
1人ずつ、サザンには5人もの女霊が現れた。彼等
の悔恨解消も含め、決闘での出費は奴等の自己責任
とした。
僕の復讐は、完遂した。
~回想終了~
「と言うことで、無事に復讐出来ました。ミュール
さん、目の前で気分が悪くなるようなものを見せて、
本当にゴメンね」
いつもの僕とかけ離れた姿を見せたことを、謝った。
「ううん、確かに驚いたけど、私の事まで弄ぼうと
企んでいたアイツ等をギャフンと言わせてくれて、
スカッとした気分の方が勝ったわ。何より、私達
への暴言まで償わせたリョウの仲間を想う気持ちが、
すごく嬉しかった。ありがとう!」
ミュールさんは、怒るどころか満面の笑みで僕の手
を握り、感謝してくれた。感謝されると、僕としても
気分的に助かる
「当然だよ。あんな非人道的な考えを、実行しようと
する奴等は、懲らしめないとね」
「うん!」
「まぁ、俺はあんな奴等が悪巧みして、歯向かって
来ようが、何も成せねぇと思うがな~~」
バルディ君が、気だるそうに呟いた。
「あいつ等と、戦闘力に開きがありすぎなあんたなら、
そうでしょうねぇ…………」
彼の気持ちが理解できる反面、力の無い一般人相手
だと、そうはいかない。だからこそ、彼女も言い返した。
「後さぁ、バルディ…………何であんたは直ぐに屍の
山を作っちゃうの?」
僕への笑みとは対照的に、凄まじく呆れた表情で、
バルディ君に問いかけた。そう、僕と奴等の決闘の
裏で、もう一つの事件が起きていたんだ。
「しょーがねーだろ。俺が最強の勇者を目指す限り、
イジメ・カツアゲの放置は、仁義に反するだろーが」
「それでどうしてB級パーティーまで山の一部に
するのよ!」
理由は、彼が悪漢に困っている市民達を助けた筈が、
何故かB級パーティー達までシメ上げていたからだ。
「始めは、女共に鬱憤を晴らそうとするマヌケ共に、
犯罪防止がてら、楽しいことを教えるだけのつもり
だったんだよ」
彼曰く、互角以上との楽しいケンカを知れば、弱者を
虐げる無益さを実感出来るようになるとの事だ。
「そしたらなんと、マヌケ共がA級犯罪者の人拐い軍団
で、奴等を片した後に、クエストで追ってたB級冒険者
パーティーにも因縁をつけられ、デッドボールのノリで
第2ラウンドを制した結果、あの山が完成したワケよ」
つまり、慈善活動(?)のケンカを行った相手が、想像
以上に悪質な犯罪者と追跡中の冒険者で、結果的に逮捕
協力と職務妨害を同時にしてしまったということだった。
「はぁ、大体、悪い奴もくたばるから、多少は目を
瞑っているけど、やりすぎは看破できないわ」
「良いじゃねーか。戦力さえ互角に整えりゃあ、互い
に腕っぷしも強くなるし。アイツら、捜査能力の割に、
中々歯ごたえあって、良い刺激受けたぜ~」
僕も、野良喧嘩こそ経験していないが、彼の戦闘勘
を見ていると、決して無駄なことではないと思える。
「前は確か、冒険者ギルドに居た、荒くれ系全員対
バルディ君で開始したケンカが、いつの間にか
ミュールさんとの壮絶な一騎討ちになっていたよね
…………」
あれは、壮絶だった。僕が割り込んだら、秒未満殺
されそうな程に。そして、その時の彼の表情から、心底
互角以上との勝負が好きなんだと、改めて思った。
(…………そういえば、あの時の彼女からも"高揚感"の
ような雰囲気を、感じられた気がする。やはり、誠実
な彼女も、"戦士"たる気質を内に秘めているということ
なんだね)
僕の隣に腰かけた人物に挨拶する彼女を見つつ、そんな
事を思い返していた。
「それは見てみたかったなぁ、というか、そう言うこと
なら俺が相手になるぞ?」
「な~に言ってやがる。お前とやるならタイマンだぜ。
今度は勝つからな!」
そんなバルディ君すら、素手喧嘩で圧倒するのが、
ワイルド君…………いや、ショウさんだ。
「その時は、互いに全力で殴り合おう。リョウ、目的
を果たせて、この1ヶ月が報われて良かったな!」
「はい! 今度は僕が、ワイルド君に…………いや、
バルディ君、ミュールさん、この場の皆の役に
立つ時だ!」
そう、今度は僕の能力で、彼等の目的達成を
手伝う番だ!
(…………今のワイルドコーチの物言い、元々リョウの
復讐心を知っているようだった。それに、彼の雪辱が
果たされたときの嬉しそうな顔と、その後の決意を
新たにしたような表情…………、
ワイルドコーチも、何かあるのかな?)
「よし、今日はずっとここに居るから、何かあったら
声かけてねー!」
本日も、ワイルド一派の修行は続く。
最後まで読んで下さりありがとうございます。




