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43/104

リベンジ・オードブル -承-

普段の数倍のボリュームです。

43話


「おお、あいつらが追加で派遣される冒険者達だな」


 やや顔に肉のついた重歩兵の青年が、リョウ達を

指差して呟いた。


「おはようゥ! 僕はC級パーティー・サウザンド

グローリーのリーダー、サザンだァ。君達も

サイクロプスとリザードマンを討伐しに来た

パーティーだねェ?」


 サザンは明るく自己紹介をしてきた。


「その通りだ。俺はバルディ。左側のチビ共とは、

修行仲間だから、俺が仮のリーダーをやってるぜ」


「チビ言うな! あっ、私はミュール。このデクノボウ

がさっき言った通り、2人の修行仲間なんだけど、私は

断じてチビでは、あ・り・ま・せ・ん!!」


 バルディを蛇のように(にら)()えつつ、語尾を強めて

断言する姿に、サウザンドグローリーの面々は呆気に

とられていた。


「…………僕は、レイ。僕は、彼の言う通りチビだけど、

まだ成長期なので、その内彼を追い抜かすつもりだよ。

よろしく」


(…………こんな名前だったか?)

(リョウ…………何で偽名を名乗ったのかしら?)


 当然、修行仲間の戦士2人は、リョウの行動に

疑問を抱く。


「はっはっはァ! とてもユーモラスな自己紹介を

ありがとゥ! ほらァ、3人も自己紹介ッ!」


 サザンが最後の人物の正体に突っ込まず、自身の

メンバー達に自己紹介を促した。


「俺はドグロ、向かう敵全てを跳ね返し! この槍で

致命傷を与える、無敵のタンクを目指す男だぁ!」


「可憐な魔法使いのサンドラと~」

「世界の癒し、ローリーでーす!」


「はーい、3人とも自己紹介ありがとねェー!

サンドラちゃんとローリーちゃんはァ、あのアース

ヒーローズのローズさんとアリスさんを目指して、

日々(しょう)(じん)しているんだァー。リーダーとしてとても

(ほこ)らしいよォ」


 サザンは一見すると、リーダーらしく仲間のPRを

率先している風に見えた。


 加えて、僕の友達であり、尊敬する人物と因縁の

ある人名が2つ出てきた。


「あれ? ドグロは誇らしくないの?」


 ミュールは、サザンがドグロをスルーしたことを

指摘した。


「あァ、ドグロも頑張ってはいるけどォ、ちょっと

自己主張が激しすぎるし、顔もパッとしないからァ、

誇るにはあと一歩って所だねェ」


「ふーん(自己主張はバルディの足元にも及ばないと

思うし、顔って…………アイドルじゃないから、どんな

顔でも良いのでは??)」


 話を聞いてから、3人の方を見ると、ドグロは

つまらなさそうにうつむき、女子2人はそんな

ドグロをクスクスと笑っていた。


「アースヒーローズっつったらよぉ、カルロスさんも

有名だよな」

「!!」


 バルディの言葉に、ミュールが反応した。


「俺もあの人の"強さ"には、憧れてるんだが、どうも

黒い(うわさ)が絶えねぇんだよなぁ」


「そうかなァ? 有名すぎるパーティーならァ、黒い噂

がホイホイ出てくるものだと思うけどォ」


「どうかしらね。火のない所に煙は立たないって言う

じゃない。ここ1月の停滞(ていたい)と言い、私はどうにも()

落ちないのよ」


「僕もそう思うよ。どんなに外面を取り(つくろ)っても、

心に秘めた思惑(おもわく)を隠しきることは不可能だからね…………」


 僕が意味深な表情で呟いた所、4人は一瞬固まった

ように見えた。


「世界中にその名が(とどろ)くパーティーの闇ィ…………、

実際に存在するのならァ、見てみたい物だねェ」


「つーかさっさとサイクロプス、ブッ飛ばしに

いこうぜ!」


「フッ、それもそうだねェ!」


 手始めに、小山の大将を気取っている3体の

サイクロプスの討伐に向かった。


「オイ、あんた」


「どーしたよ?」


 ドグロがバルディ君に話しかけている。以前は

大きく見えた背丈や肩幅も、彼と比べたら一回り

以上小さく見える。


「先に言っておくけどよ、俺の筋肉は見せかけじゃ

ねぇぞ。つまり、あんたがサイクロプスに攻撃を

加える前に、俺のカウンターで、奴等は沈むのさ」


「あぁ? 言ってる意味がわかんねーよ。速力最強の

俺様が奴を瞬殺しちまうから、お前に出番が回らねぇ

の間違いだろ」


 今回の討伐数は3体だが、3体ともが固まって

いたら、実際にそうなってもおかしくはないと思った。


「ドグロ~、今のは流石に(よう)()できないアホ発言

だったねぇ~~」


 そこに、サンドラが割って入ってきた。


「それにしても~、バル君って上半身も凄いケド~、

下半身も太いね~~。太股(ふともも)とか、片方だけで私の

ワガママヒップより太いんじゃな~い?」


「ほぅ、分かってるじゃねーか。上半身しか鍛えねぇ

奴は、三流も良いところだ。下半身を鍛えてこそのっ、

パワー…………だっっ!!!」

『ドゴォン!!!』


 バルディ君の(しん)(きゃく)により、サンドラはおろか、

重歩兵のドグロまで、一瞬浮いた。


「わ~! 浮いた~~!! 今度は腕に乗せて持ち上げ

て~~!」


 サンドラは、初めて体験した浮遊感に高揚し、彼に

更なる要求をする。


「ホラよっ」


 そして、バルディ君も、まるで幼子に構うように、

サンドラを片腕に座らせ、立ち上がった。


「高~い! 熊に乗ったみたい~~!」


「…………」


 バルディ君の筋肉を堪能(たんのう)しているサンドラを見て、

ドグロはつまらなさそうにしていた。


「へェ~~! ミュールちゃんはァ、女の子であり

ながらァ、あんな大きなバルディを何度も倒したん

だねェ、凄いやァ!」


「フフン、信じてくれる?」


 一方、サザンはミュールさんとバルディ君の決闘話

を聞き、ここぞとばかりに煽てていた。奴の本性を

知らない彼女は、素直に喜んでいる。


「信じるさァ! なんなら、心から尊敬してるよォ!

よかったらさァ、クエスト終わりに僕のパーティーに

加入してェ、バルディに歴然とした差をつけてやろう

よォ!」


「うーん、そういうのは実戦でお互いの強さを見せあって

から考えようよ」


 しかし、露骨な引き抜きの誘いに対しては、妥当な

返しで即決を回避している。…………次の瞬間だった、


「そうだねェ~~。でーもォー、僕はいつでも歓迎

するよッ!」

『ギュッ!!』

「ヴ、ヴン…………(な、何なの!? どうしてこんなに

積極的なの!? 距離感おかしくない!?)」


 サザンがミュールさんの手を両手で握った事で、

彼女の表情が引きつったのがハッキリと分かった。


 …………流石に見ていられない。


「あのさ、サザン君。ミュールさん困っているから、

手を離してあげようよ」


 あんまりサザンとコミュニケーションは取りたく

なかったが、僕は奴の肩に手を置いて提言した。


「レイ君だっけェ? 彼女は一言も拒否していないの

にィ、どうしてそう思ったのかなァ? あれッ?」


 案の定、奴は僕の腕を振り払いながら開き直ったが、

その瞬間、ミュールさんを(つか)む手が片手になったので、

彼女は呆気なくその手から逃れた。


「ホラ、手を振りほどいたってことは、嫌がって

いたんだよ。第一、ちょっとした表情の変化でも

(さっ)せれると思うよ」


「…………ふゥん。今回は僕が至らなかったらしいねェ。

悪かったよォ、ミュールちゃん」


「良いよ。お互い距離感が分からなかっただけだろうし、

今の事は気にしないわ」


 一先ず、この場は収まった。


「…………ry…レイ。ありがとうね」


「見てしまったなら、動かないわけにはいかないよ。

…………お返しにといったらあれだけどさ」


「あー、はは…………」


 そう、ボッチになりがちな僕だが、今回は悪い意味で

ボッチになれなかった。


「ねぇ、レイ君聞いてる? 私達、絶対お似合いだと

思うんだよね!」


 僕の腕を…………1月前、ボロボロの僕を回復せずに、

(さげす)んだ目で見下ろしたローリー(性悪女)が掴んでいるのだ。


 理由はただ1つ


「いかにも強そうなバルディ君に認められてぇ、

その上超絶イケメンなレイ君と、ウチのリーダー

からお(すみ)付きをいただいた私達って、ベストカップル

まった無しだと思うんだぁ!」


 僕の顔が、以前よりマシになったからだろう。

以前は挨拶しようと振り向いただけで、避けていた

癖に。実に不愉快な女だな。


 仮に、隣にいるミュールさんや、いつも僕を鍛えて

くださる女性コーチの誰かが、腕に抱きついて来たら、

理性が飛んで立てなくなっていそうなのだが、ローリー(この女)

に抱きつかれても、何一つ気分が高揚(こうよう)しない。


「ねえ、ローリー。あんまりマイルールを押し付け

たら、嫌われると思うよ。そうやって初対面でベッタリ

するのm…」

「えー、何ー? ミュールったら、(しっ)()しちゃったー?

私ったら、美女なんて表現で現せないほど美女だから、

嫉妬されても仕方ないのかなぁ~~?」


 …………正直、彼女に助けを求めた事を後悔した。

助け船を出した彼女に、コイツが蔑んだ笑みで

自画自賛をしたからだ。


「(イラッ…………)そうじゃなくてさ…………。もう、

レイに聞いてみてよ」


 彼女の怒りは、コミュ力の無い僕にも、ひしひしと

伝わったよ。


「(プッwww、(いも)(おんな)()(けつ)ほってるし)レイ君、私に

抱きつかれて嬉しいよねーー?」


 ローリーは、勝ち(ほこ)ったような表情で、僕に訪ねて

きた。だから、


「全く嬉しくないし、ハッキリ言うと、凄くウザイよ」


 自らの感情に従い、本当の事を言ってあげたよ。


「…………へ?」


「これが彼の本音なのよ」


「ミュールさん、助け船をありがとう」


「いえいえ、お互い様だよ」


 ともあれ、これにて一件落着…………、


「はぁあぁ~~…………イケメンに()(べつ)の眼差しを

向けられながら、責められたぁ~~…………(くせ)

なっちゃう~~~~」


(えっ? 何この娘、怖すぎ…………)


(引き(はが)がせたは良いけど、気持ち悪いものを

見てしまった…………)


 一件落着なんて、到底(とうてい)する筈が無かった。


(レイ、顔面的なライバルとしてはァ、中々歯応えの

ある奴だなァ。サイクロプス戦で戦闘力の格を見せて

ェ、ミュールちゃんを寝取ってやるさァ!)


 何故なら、相手は理屈で動くわけがない、グズ共

なのだから。


(にしてもォ…………どっかで会ったことあるかァ?

レイィ)


 そして、僕達はサイクロプス3体が根城にしている

低山の頂上へ到着した。


「フムゥ、3体とも居るかァ。どんな作戦で行くゥ?」


 討伐対象のサイクロプス達は、疎らに向かい合い、

コミュニケーションを交わしているようだ。


 何だかんだ、戦法を見知っているのは1月以上、

同じ飯を食べた仲間だけ。最低限の打ち合わせは

必要だ。


「普段の俺達なら、俺が速攻で1体瞬殺しつつ、2人

は連携で他を倒す。俺が立て直すまでに打ちそびれて

いれば、加勢して素早く片付ける感じだな」


 バルディ君が普段のフォーメーションを伝えた。


「成る程ォ~、それなら僕も速攻するしィ、サンドラ

ちゃんとドグロはァ、ミュールちゃん達の邪魔に

ならないように連携だァ。ローリーちゃんはいつも

通りィ、怪我人の回復ねェ」


 こうして作戦が決まり、1分をかけて限界まで

接近した。


「………………!!」


『クイッ』


 バルディ君の(とう)()(じゅう)(てん)を感じた僕は、ミュール

さんと、サザン達に合図を伝えた。


「おおおおおおおっっ!!!」


 それと同時に、バルディ君が空気を()()らす程、

急激な加速を開始した。


「「「!!?」」」


 サイクロプス達は、一瞬だけバルディ君の残像(ざんぞう)

視認したが、もう遅い。


「オラァ!!」

「ゲェアァァアア!!」


 サイクロプスの1体が、瞬く間にキリングアックス

の餌食となった。…………しかし


「やべぇ! ちょっと落ちる!!」


 バルディ君は勢いが余りすぎて、少し斜面を落ちて

しまったようだ。


「あーもぉー…………」

「だけど、実戦練習になるよ!」


 ミュールさんが分かりやすく呆れたが、元々バルディ

君の復帰にタイムラグのある作戦なので、そこまで支障

は無い。


(な…………何だあの速度はァ!!! てか、2人にすら

追い付けないッッ!!!)


 サザンは内心で、バルディ所かリョウ達にも追い付け

ない事に驚いていた。


「死霊招来!(今回のゲストさん達は…………)」


 いつもの5名に加え、サイクロプス2体に(うら)みのある

幽霊さんが、計9名加わった。


「私右側倒すね!」

「了解。アンドレさん、レオンさん、ヴィヴィアン様は

ミュールさんのお手伝いをお願いします! ニーナちゃん

とゲイルは僕と共に左のサイクロプスを倒そう!」

『『承知!』』

『ウフフフッ!』

『楽しむぞーー!』

『ガルルルッ!!』


 名前を呼んだ順に、剣士の青年、壮年の兵士、魔女、

鞭使いの女の子、そしてスーパータイガー。彼等が、

僕を認めてくれた方々(死霊達)だ。


 そして、複数の敵を前に招来したゲストの死霊達は、

半自動的に恨んでいる対象へ攻撃を開始する。


 今回は右側に6名、左側に3名向かったので、右側

はミュールさんとの連携で速攻撃破。左側は、僕らで

ある程度ダメージを与えておき、サザン達と合流して

確実に仕留める作戦でいくことにした。


 心底気が進まなかったが、右側の戦力が潤沢な以上、

これが最善手として割りきった。…………しかし、サザン

が僕より足が遅いと知った時点で、この作戦が本当は

悪手であることに気付くべきだった。


「アンドレさん!」

『ああ!』

「グオオオッッ!!」


 ミュールさんは、サイクロプスが振り下ろした棍棒を

危なげなく避けつつ、その時の捻転(ねんてん)動作で加速した戦槌

を、サイクロプスの右膝に直撃させた。


 そしてアンドレさんも、左足のアキレス腱を絶技と

呼ぶに相応しい一閃で、切断した。


「ぐぎゃっ!?」


 突如襲い来る痛みや、バランスの崩壊に(おどろ)き、

サイクロプスは体勢を崩してしまった。


『フンヌッ!!』

「ゲアアアアアッッ!!」


 倒れ込む勢いに(はさ)み込むかのように、レオンさんの

槍が、人でいう鳩尾(みぞおち)に当たる部位に突き刺さった。


『ロック・フォール』


 間髪入れず、ヴィヴィアン様の重力魔法による岩石

落としがサイクロプスの頭に命中。レオンさんは零体

なので、サイクロプスに押し潰される事はなく、透過

する。


「だあっっ!!」

『ボギィ!!』


 更に、背後からミュールさんが、回転して戦槌(せんつい)

打ちつける大技・大車輪撃(だいしゃりんげき)を繰り出し、サイクロプス

の背骨を砕いた。


『『『『『『オオーーーーン!!』』』』』』


 そこに、ゲストとして呼ばれた狼死霊達が、次々と

食らいついた。恐らく彼等は、このサイクロプスに

愛する仲間達諸とも(群れごと)、えげつない殺され方をしたの

だろう。


 そして、僕らの方はというと


(しび)れ打ち!』


 ニーナちゃんが、()(こう)に命中させれば永続的に

痺れさせる一撃を放つ。


「グガゴォ!!」


 今回は秘孔を外したが、敵意(ヘイト)が此方へ向いた。


『ガルルァ!!』

「グギャアッッ!!」


 その一瞬の隙を突き、ゲイルの牙が、サイクロプスの

ふくらはぎを食いちぎる。


「はあっ!! だりゃあっっ!!」


 そして僕は跳躍し、サイクロプスの(あご)を蹴りあげて

から、錫杖(しゃくじょう)を突いて鳩尾(みぞおち)に衝撃を与えた。肉体的能力

はミュールさんの足元にも及ばないので、彼女以上に

弱点を突くことが求められる。


『家族の仇だぁ!』

『ガーー! ガーー!』

『ブモォォオオ!!』

『畳み掛けるよぉ!!』


 更によろけたサイクロプスに、恨みを持った怨霊達(人・鴉・猪)

と、ニーナちゃんの袋叩きが始まった。だが、その時、


「うおおおおッ! とどめだァァ!!」


 ようやく追い付いたサザンが、とどめのチャンスと

いきり立って、拳に魔力を込め始めた。


「まずい! 避けろ!!」

「ギャオオオオッッ!!」

『ドゴォ!!』


 こんな奴に忠告する価値はない。等と考える間もなく

反射的に行った忠告だったが、サザンの脳天に無慈悲な

一撃が命中した。


「が…………は…………」


 サザンは脳天から鮮血を()()らしながら、更に

遅れて走ってきた自身のメンバー達の中央へと落下

した。


「キャアアアッ!!」

「サ…………ザン…………!!」


 女子2名が、生死をさ迷うリーダーの姿を見て、

固まった。…………更に、


「まずい! そっちに行ったぞ!!」

「グギャロロロロッッ!!」


 サイクロプスは、死霊達と僕の攻撃を意に介さず、

明らかに弱いサウザンドグローリーの方へと猛進(もうしん)

し始めた。


「(僕だと追い付くので精一杯だ!)怨霊(グリフ)合体(ドッキング)

巨獣(ウルトラタイガー)招来(インビテーション)! いっけぇ、スーパーゲイル!!」

『ガルルルルアァァ!!!』


 ゲイルに死霊1人と2匹を合体させ、野獣の速力と

怨念の殺意で、サウザンドグローリーが()られる前に

()る作戦にかけた。


 だが、奴等の立ち回りがヒドイのなんの…………、


「ウガアアアッ!!」


 ドグロは自身の得物を、明後日の方向に投げつけて

自ら丸腰になり、


「キィヤァアアアッッ!!」


 サンドラは、(えい)(しょう)の隙を絶叫で浪費し尽くし、


「あ…………あ…………」


 ローリーに至っては、大怪我を負った患者(リーダー)が目の前に

倒れているにも関わらず、腰を抜かして失禁(しっきん)していた。


 僕が知るよしも無かったが、この時ミュールさんは、

一刻も早くサイクロプスに追い付こうと必死に走って

いたのに、奴等の()(ざま)さでゲンナリした表情になって

いたそうだ。


(ゲイル! 後…………一撃だけでも…………!!!)


 かくいう僕も、走りながら祈ることしか出来なかった。

…………その時、


「アイツで終わりかぁ!?」


 覚えたての(しゅく)()で最高速度に達したバルディ君が

僕らを横切り、ゲイルの噛みつきで転倒し始めた

サイクロプスの振り上げた両腕と(くび)を、

両断した。


「ウラァ!!」


 更に、首無しの死体を蹴りあげる事で、サウザンド

グローリーの4人が潰されることを阻止した。


「流石…………バルディ君だ」


 パワーに傾倒する人物は、何かと過小評価されがち

だが、僕はバルディ君を見ていると、その評価が間違い

であると心底思う。


「間に合って良かったわ。4人とも、バルディの

パワーに助けられたわね」


 ミュールさんも一安心しながら、4人にバルディ君

への感謝を遠回しに(うなが)した。普通の者達なら、応じる

だろう。


 だけど、目の前の連中は、普通では無かった。


「…………ぁあ? 獲物横取りするような木偶(デク)に感謝しろ

だぁ??」

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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