基準は人それぞれ
10/26 お待たせしています、本日夜投稿予定です
~リョウ視点~
「そ…………そんな…………事が…………」
ワイルドさん…………否、ショウさんの話を聞いた
僕は、言葉が出なくなりました。その話があまりにも
酷く、そして理不尽であったからです。
(僕がサザン達や野次馬から受けた仕打ちなんて…………
この人がこれまで受けてきた仕打ちに比べたら、蚊に
刺されるようなものだ)
同時に、直前まで自分がショウさんに、我が不幸
こそ底辺であるかのように身内話をしていたことが、
これ以上なく恥ずかしく、滑稽であったことを
知りました。
「シ、ショウさん…………」
「おっと、流石に生々しすgi…」
「先程は僕こそ世界一不幸だオーラを出しながら
ベラベラと駄弁ってしまい、申し訳ありません
でしたぁ!!」
昔遊んでくれた友達にも、親族にも、これ程心の
底から謝罪の土下座をしたことは無かったでしょう。
…………それ程、僕はショウさんに失礼な事をしたの
です。
「????? えっと??? 何で謝ったの…………
かな???????」
「!?」
なのに…………ショウさんは、僕が謝罪した意図を
心底理解できていない様子でした。
「だ…………だって…………僕の過去なんかより余程
壮絶な仕打ちを受けていたショウさんに、僕は
あたかも自分が誰よりも不幸な風に、過去を
駄弁っていたのですよ!? これ程失礼な言動を
されて、ショウさんは怒らないのですか!?」
これまた久しく、僕は人の目を見て考えを伝えて
いました。その間、ショウさんは決して目を逸らさず
に、話を聞いていました。
「リョウ君」
「はい」
流石に殴られるだろうなぁ。僕はそんな情けなく、
そして甘ったれた考えを巡らせながら、ショウさんの
呼び掛けに返事をしました。
「俺は君の過去がどんなものであれ、怒るつもりは
毛頭無かったんだよ。それに、過去の捉え方は人
それぞれだ。君にとって、その過去は間違いなく
誰よりも何よりも不幸な過去。同時に、俺にとっては、
さっき語った過去が、何があっても許せない忌々しき
世界一不幸な過去なのさ。ただ、それだけの話なんだよ」
帰ってきたのは、共感と、正論。そして、満面の
笑みでした。
「……………………」
僕はまたしても言葉が出なくなりました。しかし、
先程とは違い、今回言葉が出なくなった理由は、
ショウさんの底無しの優しさと、青天井の器の
大きさでした。
「あ、あれ? どうして固まったんだろう…………??
変なこと言ったのかな?」
そして、この方は先程の発言を"当たり前"だと認識
しているようで、またしても僕の反応の理由を理解
できていない様子でした。
「何一つ、変な事はおっしゃっていません。ショウ
さん、改めて誓います。僕はあなたの復讐の成功に、
全力で貢献します! その為に、ビシバシと鍛えて
下さい。今日からよろしくお願いします!」
「うん、こちらこそ成長を期待しているよ。訓練も
あまり体験したことの無い内容ばかりだけど、君なら
自分の力に出来ると信じている!」
「はい!」
こうしてショウさんに着いて、宿を後にする…………
前に、
「それと」
「はい」
「出来れば敬語は控えて欲しいな~。俺、別に
威張れる程のキャリア積み上げて無いからさ」
「そっそそそそんなっ!?」
ショウさんの苦笑いが混じった表情から、本心
からの発言であることは言うまでもありません
でしたが、僕にとっては最もハードルの高い初訓練と
なりそうでした。
「後、俺はショウという本名を隠して、ワイルドと
名乗っているから、リョウも俺の事をワイルドと
呼んでもらうよ」
「…………はい!」
これも、ポロリと漏らしそうで中々の難易度
ですが、ショウさん自身の利になるという側面が
あるので、直前に出された訓練と比べると、遥かに
易しい内容だと思いました。
~修行の崖・ワイルド(ショウ)視点~
「ただいま~! 新しい修行仲間を連れてきたぞー!」
俺は吐き気に耐えているリョウをおぶりながら、
修行仲間達に彼を御披露目した。
「また増えるのか」
最初に反応したのはクレインさんだった。後ろでは
バルディが汗だくで死にかけている。
「ええ、紹介します。死霊術士のリョウです!」
「よっ、よろしくおねがいします!」
見た目からしてガチそうな2人に萎縮しつつも、
誠実な挨拶をした。
「フム、死霊術士か…………」
「ほほぅ、これは鍛えた後が面白そうなヤローだな。
にしても…………」
バルディは、リョウの顔をじっと見つめた。
「え、えっと…………」
当然、人見知りなリョウは困惑した。
「お前…………ちゃんと前見えてんのか??」
「へ??」
バルディはどうやら純粋な好奇心から、目全体を
覆い隠すリョウの前髪が気になったようだ。
「みみ見えて…………いますよ??」
リョウもそんな事を聞かれるなんて、つゆ程も
思っていなかったようで、さらに困惑している。
「だとしても視界の邪魔だな。取り敢えずウルサイ
のが来る前に、この人に斬ってもらe…グホォ!?」
クレインさんをヘアスタイリストとして推薦した
ところ、案の定彼女に刀の柄で鳩尾を殴られた。
「あまり舐めた口をきくな。そういうことは専門の
店でやれ」
「は、はいぃ~~!!」
リョウなら、絶対に彼女に失言はしないだろう。
俺はそう確信した。
「イテテ、スンマセン。舐めたつもりは無かったですぜ」
「(敬語が何か変?? というかこの人の先程の発言
からして)もしかして、ここにはもう一人修行中の
方がいらっしゃいますか?」
「うん、彼と同系統の職業の女の子が居るよ」
「一言で言えば、クソマジメな集団の風紀取り締まり
役だ。そろそろ筋トレも終わる頃だな」
バルディがそう言った次の瞬間
「ワイルドコーチ! そこにいる人ってもしかして
新人さん?」
筋トレを終えたミュールが、リョウの存在に
気づいて駆けつけてきた。
「ミュール、筋トレお疲れさん。そうだよ、死霊術士の
リョウだ」
「初めまして、私はミュールよ。槌戦士を努めています。
よろしくね」
笑顔を浮かべながら、両手でリョウの右腕を握った
ものだから…………
「はっはっ、初めまして。しっしし死霊術士のリョウ
ででっすっっ。よっ、よろしくお願いします!」
全く女慣れしていないリョウは、緊張が極まった
返事をしてしまった。
「あはは! 緊張せずにラフに接してくれて良いよ。
でーも」
「はっはい!」
ミュールが最後に少しだけ雰囲気を変えたので、
リョウも緊張を少し抑え込んだ。
(ヤレヤレ…………)
一方、バルディは過緊張のリョウではなく、何故か
ミュールの方を見て呆れを見せている。
「その前髪は戦闘や訓練の邪魔になるわ。筋トレの
前にサッパリと切って来るのよ」
「わっ、分かりました…………」
「まぁ、それは後で俺が見せるから、まずは君の
能力を見せてもらうよ。それから訓練メニューを
考えよう」
「はい!」
こうして、俺達はそれぞれの鍛練を再開した。
後でバルディが話してくれたのだが、ミュールは
訓練生時代に前世の世界でいう学級・風紀委員長的な
事をしていたらしく、髪の毛だと特に目にかかる事に
厳しいようだ。
それが原因で、彼女に勝てない男10名が徒党を
組んで襲撃してきて、偶々通りかかったバルディが
彼らを挑発し、肩慣らしと称して正面から撃破した
事もあったようだ。いつもバルディと張り合う
ミュールも、これには恩を感じているからか、話し中
突っかかって来なかった。
昼御飯にバッタのチーズ炒めを振る舞った所、
リョウの好物だと判明。バルディが俺とリョウを
バッタ大好き変態野郎共と評してきた。
そういう奴も美味いと分かるや否や、ドカ食い
していたが
(前世だったらショウリョウバッタとか呼ばれたの
だろうな)
下らない事を考えている内に、E級昇格試験の
1時間前に時間が迫った。ミュールが早めに訓練を
切り上げ、リョウをいつも利用している美容院に
連れていくと称し、地獄のマラソンを課していた。
俺も昼にクエストを受ける予定だったので、同行。
流石に彼女らに合わせたランニングでは、スキル
ポイントの取得率が悪いと考えたので、彼女等が
崖下まで降りるまでの間…………
家の壁を這い回るゴキブリの如く、崖を縦横無尽に
ウゴキ回ったぜ!
「うぉ!? スッゲェイケメンになったな!!」
「ひぃい!? 恐縮が過ぎますよぉ!!」
髪を切ったリョウは、前世で幅を利かせていた
男アイドルのような、可愛げのあるイケメンに
なっていた。
流石にバルディとクレインさんは大した反応を
見せなかったが、翌日帰ってきたミュールは惚れず
とも絶賛しており、リョウの自信向上に繋がりそう
だと思った。
…………というか、リアクションの凄さだと、リョウが
初めて上腕二頭筋を鍛えた際に、動作後半から襲って
きた筋肉痛にのたうちまわっていた事の方が、強く
記憶に残っている。
そして
俺達が集まってから、1ヶ月が経過した!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。




