大ハズレなスキルとメンバー
…………ああ、何という弱さだ。
とても同じ転生者とは思えない。これでも5人とも
地球の日本から転生してきたのに、何処で差が着いた
のだろうか…………。
この世界の女王様に召喚され、それぞれが女神の天啓
を受けて今の職業に成った。最初は当然、ちょっとした
差しか着いてなかった筈だ。
~回想~
「ショウ、今度はお前の能力を見せる番だぞ」
「召喚士っていうくらいだし、ドラゴンとか出してよー」
「期待していますわ」
「分かったよ。出でよ!!」
3人の期待を浴び、俺は先程確認した特技 : 召喚を
繰り出した。
「「「「……………………何も出てこない」」」」
俺を含む4人は、あり得ない現象に首をかしげた。
『ゴポァッ!!』
「うわっ!?」
雑魚として相手に選んだスライムの突撃を食らい、
俺は転倒した。
「たっ、助け…………!!」
よく考えると、この時から俺は仲間じゃなくなって
いたのかもしれない。
「ショウ君、スライムごときなら、魔法系の素手でも
勝てる相手だ。練習だと思って単独で倒してみたまえ。
女王様の1番の期待を裏切るなよ!」
それまで静観していたアーロンが、俺に単独撃破を
命じた。
「うわああっ!!」
言われた通り、がむしゃらに殴り・蹴った所、
あっさりと倒すことが出来た。
「な、何とかなったよ…………」
「何つーか、期待はずれだな」
「今は雑魚しか出ないから良いけど、あんまりにも
足手まといだったら置いてくからね」
「頑張って食らいついてくることを祈ってます」
「わ、分かった。頑張るから1人にしないで…………」
訳の分からない世界に飛ばされ、肩身の狭い思いを
していた中、折角出会えた俺にも分け隔てなく話して
くれる仲間と離れたく無かった。だから頑張って
食らいつこうとしたのに…………
~初のモンスター討伐クエストにて~
「あぐっ!?」
背後からのモンスターの奇襲により、俺は怪我をした。
「ショウ君!」
アリスが回復しようと駆け寄る。
「いいや! 畳み掛けろ! 回復は後だ!」
アーロンが高速移動技を駆使し、モンスターに
絶え間ない斬撃を与えていく。
「おおらっ!!」
「火炎!!」
カルロス、ローズも覚えたての技を用いて攻撃力を
底上げした一撃を与えていく。
「ショウ君、少しだけ辛抱して! 光線!」
アリスも光属性の初級魔法で援護を行った。
「俺だって…………負けられない!」
俺もチームの一員として貢献すべく、当時の
"とっておき"を繰り出すことにした。
「中召喚・落石!!」
1度に半分近くのMPを消費し、モンスターの
10m上に巨大な扉を開く。扉からは、直径5m程の
大岩が落ちてきた。
「とどめぇ!」
「カルロス、下がって!」
「あぁ!? おわっ!!」
大岩は、落下時の風圧でカルロスを押し退けつつ、
モンスターを押し潰した。
「や、やった…………」
「ショウ、あんた意外と大技持ってるのね…………」
「スゴいわ! 敵の動きさえ封じれば、確実に有効打wo…」
「余計なことしてんじゃねぇぞ!!」
女達が俺を見直していたが、カルロスがいきなり
キレて来た。
「さっきのは俺がとどめを刺す筈だった!! そもそも!
お前がアイツの存在に気づいていれば、こんな急な開戦
にならなかったんだよ!! クズの分際で、隙だらけの
一撃技で粋がるなぁ!!!」
「ゴ、ゴメンね、カルロス。俺、こんなだから、あの
瞬間で最大限、皆の役に立とうと必死で、君の考えに
気づけなかった! 今後は敵も見つけられるように、
感覚も鍛えるよ!」
俺は誠心誠意謝った。今にして思えば、この対応も下
に見られることを加速していたのかもしれない。だって、
次の瞬間、アーロン達が
「まぁまぁ、カルロォス。ショウだって、自分の腑抜け
具合は死にたくなるほど分かっているさ。その上で俺達
に役立とうと醜くもがいていたのだから、その心に称賛
を与えるべきだと俺は思うのサ!」
「兄貴、あんたのおっしゃる通りだぜ! ショウ、その
思いは買うぜ。だから、すべての敵を見つけれる、
1人前を目指せ!」
「うん!」
アーロンの称賛を被った侮蔑と、カルロスの激昂を
被った奴隷宣言。俺はその意味を理解せず、急速に
落ちぶれていった。
~とあるダンジョンの1幕~
「!、壁から突き抜けてきます!!」
「アホ言うなやwww」
俺の忠告をカルロスが無視した瞬間、
『ドゴォ!!』
「んなっ!? グアッ!!」
巨大なもぐらモンスターが、壁を壊しつつカルロスを
殴り飛ばした。
「仲間の痛みはわが痛みィ! 死に晒せ!」
『パァン!』
アーロンが、先日達した音速で、モンスターの首を
斬り飛ばして瞬殺した。
「だ、大丈夫?」
「邪魔」
「あ、ごめんなさい…………」
アリスの治療中に半径3mまで近づいたので、冷たく
あしらわれた。
「だっさww」
そしてローズの陰口が聞こえてくる。
「チッ! してやられたぜ」
「無事でよかった! でもカルロス、俺の忠告をしっかり
聞いてくれれば、カウンターで倒s…アギャ!?」
頬をグーで全力殴打された。
「てめぇ! もっと早く察知して言えよ! いつもいつも
遅ぇんだよ!!!」
何度も踏みつけながら、喚いてくる。
「はい、ショウく~ん、悪いことをしたときには、
誠心誠意の謝罪をしましょ~う」
アーロンも加勢して、俺の自尊心を抉ってくる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、
ごめんなさい…………」
弱くて小心者の俺は、言われるがまま謝罪する以外の
選択肢が無かった。
~回想終了~
そして今、俺はストレスの捌け口として虐められる
挙げ句、荷物持ちをやらされている。前までは休日返上
でレベリングに勤しんでいたけど、ここ2ヶ月は雑用を
やらされまくって、より一層差が開いたな…………
最後まで読んでくださりありがとうございます。