極悪外道との再会
「ご馳走さまでした。今日は、各自クエストを
こなしてから、解散だな」
筋肉飯を食べ終え、最後の予定を発表した。
「うぇ~~…………大胸筋と腕、脚、背中が
糞痛ぇのにかよ~~…………」
珍しく、バルディが弱音を吐いた。余程今日の
筋トレが有意義だったと思われる。
「私は受けるわ。筋肉痛ごときで弱音を吐いてる
バルディなんて、直ぐに追い抜いてあげるわ♪」
「させっかよ、MAXパワー出すまでもなく、
モンスター討伐クエストをこなしてやるぜ!」
E級からは、モンスター討伐クエストも存在する。
本来なら万全の状態で挑まなければ、命に関わる
…………のだが、
「お前なら、E級相当のモンスターは相手に
ならんだろう。気楽に行くと良い」
E級クエストのモンスターは、スライムや
弱い虫モンスターの大量発生を駆除する依頼
…………即ち害虫駆除のような内容ばかりで
あるため、本当に素人でなければ、そうそう
死ぬことは無いのだ。
「ガッデム!クレインコーチに教わった
体裁きで、シュババッと害虫共を駆除して
きまっせ!」
(今の返事何…………???)
ミュールも、バルディの謎の返事に怪訝そうな
表情を見せた。そして俺は、虫と聞いてあることを
閃いた。
「害虫駆除クエストを受けるんならさ、出来るだけ
昆虫の肉素材を剥ぎ取ってくれるか?」
「あん? どうしてだよ?」
閃いた内容とは
「昆虫料理を研究したいのさ」
昆虫食だ。昆虫は、高タンパク低カロリーの
物が多く、筋肉を作るときや、減量する時に、
役立つ可能性が高い。…………だが
「イナゴなら…………地元で食したことがあるが…………」
「ワイルドォ! むっ、虫を食べるなんてどうか
しているよぉ~~~!!」
昆虫食に馴染みの無い女性陣には、かなり
刺激的な話題だったようだ。
「えー、それこそイナゴやバッタなんかは
エビみたいな味がするって聞いたことあるし、
美味しいような気がするんだけどなー」
「食うにしても、毒味役はテメェ一択だからな?」
「勿論さ! 俺も自分の製作料理で食中毒者を
出したくないからね」
話している内に、全員の支度が終わった。
「明日、俺は7時にはここに居るつもりだ。
だけど、9時、13時、16時台は、何らかの
クエストで空ける事にするよ」
「そうか。ならば拙者は午前に鍛練を行い、午後は
モンスター討伐クエストを受けることにする」
「そしたら俺も午前は確実に出席するぜ」
「私も午前に出席して、午後から昇給クエストを
受けようと思うわ」
「昇給クエストは、日を跨ぐ物が多いからな」
「はい、なるべく頑張って、直ぐにトレーニングに
合流するつもりです!」
「じゃあ、午前は皆で鍛えられそうだね」
そう言いながら、崖の近くに来た。
「…………近道しようよ」
「崖を降りるってことか。面白ぇ、ロッククライム
スキルの特訓だな!」
バルディは早速手際よく降り始めた。
「フフッ、まだまだ遅いぞ、バルディ」
クレインが、飛び出た岩や枝を飛び移り、軽快な
降下を見せつけた。
「い、いつか抜いてやるからな! クレインコーチ!」
バルディは悔しがりつつも、追い付けなくない
目標が出来、闘志が燃えた。
「…………私、かえって時間がかかるので、
走って降りるわ」
ミュールは慣れない崖移動を断念し、坂道を
走って降りることを決意した。
「もし、ミュールが嫌じゃなかったら、俺が素早く
安全に降ろすよ」
「えっと…………どうするの?」
「取り敢えずミュールを持つだろ~」
「ちょ…………」
素早くお姫様抱っこをしたところ、ミュールは
激しく動揺した。
「で、走る!!」
「ギャアアアアアアアアアアッッッ!!!?」
そして、状況を把握出来ていない内に、
猛スピードで崖を駆け降りて、あっという間に
2人を抜かした。
「ふっ!!」
『ダァン!!』
「…………あれ!? 浮いてる!!?」
が、思い切り地面に着地すると、ミュールは
反動だけで死ぬかもしれないので、地面の3m
手前で彼女を上へと放り投げ、俺だけ着地した。
「はい、着地して~」
この高さなら、ミュールも危なげなく着地に
成功できる。
「…………ビ、ビックリしたよぉ~~!」
着地して5秒間、ミュールは放心状態だったが、
遅れて感情が爆発し、俺の大胸筋に拳の鉄槌を
ぶつけながら、泣き出した。
「いやー、言ってしまったら遠慮すると思ってさーー」
「まぁ、そうだろうな」
一足先に、クレインさんが降下を終えた。
「もうっ! ちょいでっ! 俺もっ!…………!
ええい面倒だっ!!」
結構アクロバティックに降りていたバルディ
だったが、残り20mで痺れを切らし、飛び降りた。
「5接地転回法!!」
『ズズゥン!』
謎の重低音を響かせ、無傷での着地を成功させた。
「待たせたな、行こうぜ!」
落ちてきた荷物入れと斧をキャッチし、軽快な
歩みを開始した。俺達も歩みを開始し、揃って
冒険者ギルドに到着した。
「これはこれは、皆さんお揃いで賑やかですね~~!」
受付嬢のリズが、俺達が集団で押し掛けた事に
反応を見せた。
「全員で面白い修行をしてから、最後に各自
クエストを受けようということになったんだ」
「クレインさんが皆さんのコーチになっていたの
ですか?」
「そうだ。だが、肉体鍛練は主にワイルドが
コーチをしていたぞ」
「し、召喚士なのに肉体鍛練のコーチですか…………」
リズは半ば、ドン引きした様子で俺の方を
向いてきた。
「やー、コイツの脳筋ぶりには、俺も驚かされっ
ぱなしだぜ」
「そう言うバルディは、さっきアクジキバットの
クエストをアクジキバッタのクエストと勘違い
して引きちぎろうとしていたけどね~~。
ワイルドが止めてくれなきゃ、夜通しのクエストに
なっていたね~~♪」
「正統派脳筋には、俺も負けるよ」
「んだとテメェら!」
「フフフ、仲良さげで何よりです。バルディさんは、
アクジキバッタの駆除でよろしいですか?」
「おう、何かワイルドが昆虫料理を作りてぇ
らしいから、バッタの駆除がてら採取してぇんだ」
「こ、昆虫料理…………ですか…………」
今度は衝撃を受けた様子でこちらを向いてきた。
「そうなんですよー。私達にも振る舞おうとか
考えていまして、信じられませn…」
「良いですね!! 出来た暁には、私にも是非1口
お恵み下さい!!」
「ええーーーー!?」
思わぬリズの反応に、ミュールは全力で驚いた。
「1口と言わず、1皿分持ってきますね」
こうして、4人ともクエストを受注し、城下町の
門へと歩みを進めた。
「!!(出来ればあまり接近したくなかったが、
この様子なら、バレずに済むか…………?)」
俺は、足音と匂い、マントのはためきによる
気流の変動、そして、おぞましき邪気と殺気を
感じ、アーロンの接近を予見した。そして、俺が
バレないと思った根拠もある。
(心拍数、脈拍、匂い物質、熱気、そして表情から
見て、視野が60度あるか怪しいレベルでキレて
いるな。刺激しなければ、やり過ごせそうだ)
俺には信じられない事に、奴の全身には土埃が
付着しており、何よりも"血痕"がついていた。
(誰もメンバーが居ないことからも、誰かのミスで
ダメージを受けたのだろうな)
「出会いとは、難儀なものであるな。!」
ミュールと話していたクレインさんも、顔面崩壊
するほど憤怒の形相をしているアーロンの存在に
気づいた。
『トン』
「まだ、その時ではありませんし、ここはマズい
です。どうか殺気をお納め下さい」
「…………わかって…………いる」
小声で制止を呼び掛けた所、幸いにも応じて
くれた。
そして、何も起きず互いにすれ違った。
「……………………!!!!」
俺がクレインさんの肩に手を置いてから、
ミュールが何か勘違いしてじっと見てきているが、
これは適当に弁明すればどうにでもなるだろう。
「さてと、遠視レベル6!」
俺は、分裂している外道の内、位の低い方の
3人を探り始めた。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。




