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昼間のヒヤリ・ハッター


「くそっ! 離せ!」

「あの訳分からん下等召喚士さえ現れなければ!」

「せめて顔くらい洗わせてくれ! アイツの靴の

悪臭が消えねぇんだよ!!」


 ギルドの職員の内、3名が現行犯逮捕をされた。

前々よりギルドの備品を横領し、売り捌いていた

からだ。その罪を、"それらしい能力"を持った

俺に擦り付けようとしたのだが、俺が基礎能力を

駆使したアリバイ証明を行った上、ギルドの

内部事情もよく知るクレインさんが、告発

してくれたことにより、無事、逮捕にこぎ着け

られた。


~数時間前~


「ふぃ~、到着!」


 俺は、スキル : 怪力レベル6を駆使して、

ギルド職員5名を捕縛したバルディを背負い

ながら、クレインさんと共に滝の上まで走り抜いた。


「ワイルドよ、ご苦労だったな」


「本当ですよ。クレインさんに合わせて

走るだけならまだしも、こんな大人数

抱えた上で走るのは、まあまあキツかったです」


 負荷が中途半端だったので、スキルの成長も無い。


「フフ、そう言うな。しかし、本当に参加者

全員の基本報酬半分を貰うだけで、良いのだな?」


 今回、ほぼ1人で岩々を除去したので、この

クエスト全体の報償金予算の範囲内で、好きな

金額を貰える事となったのだ。


「ええ、今後後輩となる同期達に変な怨みを

持たれるのも嫌ですし、行軍中に流した例え話

通りなら、彼等も納得すると思ったのです」


「成る程な。拙者としては、お前が納得できるなら、

それで良いぞ。さてと」


 俺達は、地面に並べられた職員5名を見下ろす。


「お前達は、何故縄に縛られて、ここに連れて

こられたか、分かるか?」


「わっ、わっ、かっ、りまっ、せぇん」


 5人中、特に大量の汗を流す3人の内の1人が、

嘘だとバレバレの供述を行った。


「言う気が無いならもういい。お前達3人は、

ギルドの備品を横領した。その罪によって、

刑務所行きを通達する!」


「はぁ! どーこにそんな証拠があr…」


「これを見ろ。まずは異様な備品の消滅と、

お前達が出勤した日時に見事な相関関係が

あること、そして…………」


 話が長くなったので、単刀直入に説明すると、

この3人は間違いなく横領していたよと言うことだ。

3人はストレートに刑務所行きとなり、残り2人は

……………………


「お前達は地方ギルドへ左遷することを

ギルド長に進言する。物理能力すら私を

凌駕するワイルドという逸材を、無益な

理由で排除しようとする輩など、ギルド

本部に置いておく訳にはいかないからな」


「「そ、そんなぁ~~」」


 田舎のギルドは、部外者に非常に冷たい

態度を取ることで有名であり、この2人は

将来性の無い未来に絶望した。


「と言うわけで、他が来る前に、残りの岩の

片付けを始めるぞ。岩の大きさと個数は拙者が

正確に記録するから、お前達は存分に運ぶと良い」


「ガッデム!!」

「分かりました」


 バルディ、俺が、返事を返してから、

運搬作業に取りかかった。てかバルディ、

なにその返事??


「おおおおおっ!怪力レベル3!!」


 スキルを持っているだけでそこそこの評価を

貰えるF級としては、バルディはかなり長所を

磨いている方だと言える。1t近くの岩を

危なげなく運べているのがその証拠だ。


「本来の作業なら、君はさぞや重宝された

だろうなぁ」


「そう言うこった。アンタは…………うおおお!?」


 10t近くの岩を軽々しく運ぶ俺を見て、

バルディは驚愕の表情を見せた。


「俺はこう見えて、マジで鍛えぬいたんだよ。

早く運ばないと、本来の基本報酬にすら届かない

かもよー」


 そう言って、2度ほど『ドズン!』と音を

ならしながら、ステップを刻んで脇へと運んだ。


「負け…………るかぁ!!」


 俺とやる気のバルディが頑張ったお陰で、

皆が着いたタイミングで作業は終わった。


(拙者の出番はどのみち無かっただろうな)


 クレインは刀と俺を交互に見ながら、本来の

仕事である巨岩の切り分け作業が無かったで

あろうことを悟った。


 因みに、最初に地球に転移させた岩々の

行方だが、とある崖道に落としてやった。


~地球~


「お、お家に、帰りてぇ…………」


 DVDK・レイジが崖っぷちで涙を流しながら、

呟いた。


「甘ったれた事ォ言ってんじゃねぇ!!」

「ヒイッ!?」


 すかさず、チンピラの1人に怒鳴られる。


「チッ! スマホの電池も切れてるし…………

マジでどうすれば…………」


 奴らが残る崖道の前後は、大量の岩によって、

崩れているのだ。 引き続き、獣の恐怖を味わって

もらうのと、新たに餓死と仲間割れの恐怖を

追加したまでさ。


~異世界・城下町の宿・就寝前~


「さーてと、上手いこと2階級昇格する程には

存在感を示せたけど、今日の昼間は迂闊だったなぁ」


 俺は、一気にF級クエストをこなす切っ掛けと

なった出来事を思い出していた。


~昼間・城下町の宿~


「あー、何か初心に返った気分になるなー」


 改名後、初のF級クエストを受けて、俺は

懐かしさに浸っていた。


「少し休んでからもう1つ位…………出てこいよ、

隠れているやつ」


 平成を装って、冷淡な物言いで挑発したが、

内心ではかなり焦っていた。


(この距離まで…………反響定位レベル8、

軌跡嗅読レベル1、空力感知レベル1、

動振感知レベル1、殺気感知レベル3、

未来予測レベル1と、数多の知覚スキルを

有する俺を相手に…………接近しただと…………!?)


 女王様を護衛するSP達のような、気配察知に特化

した技術等は無いが、幾つもの超感覚スキルを

有しているのに、奴の接近に気がつけなかったのだ。


(来ないなら、こっちから仕掛けるまで。

(スモール)召喚(ゲート)落石(フォールストン)!)


 この部屋と廊下の構造は、挑発時の声の

跳ね返りで把握している。勿論、侵入者の

位置もだ。故に、奴も考えられないような

位置から、猫騙しをしてやるのさ。


 そんな魂胆で拳大の石を脳天目掛けて

召喚したが、上手くはいかなかった。


「こんにちは~~ニャン♪」


 次の瞬間、俺が召喚した石を持った、可愛らしい

猫獣人の女の子が現れた。


「は…………? って、油断禁物! 君、どうやって

ここまで入ってきたんだ?…………後、目的は何だ?」


 見た目で油断する奴は三流も良いところ、

事実を誤認する奴も二流にすら上がれない。


「ニャ? 猫らしくコッソリ入ってきたニャン。

目的は…………ニャンか君に惹かれるニャニかを

見たからニャン」


 常に細やかなステップを踏みながら、そして

可愛らしい両目で此方を見ながら言葉を紡いだ。


「…………多くの猫は、初見で知らない足臭男に

ついて行かないぞ」


 …………この発言が、後にザマァの火蓋切りに

なるとは思わなかったぜ。


「ミュン…………そこだけは残念だったニャン…………」


(…………え?)


 猫娘が近づいた。そう思った時には、鋭い爪を

振りかぶって下ろしていた。


「っお!!」


 純白のあの子(野良猫)に猛アタックをしては、

爪の一撃が返ってくるので、反射神経で避けていた

頃を思い出し、この一撃を辛うじて避けた。


「流石、ミャーの見込んだ漢ニャン♪」


「!!」


 天井で、そう言うミャー(?)の左手には、

先のクエストで獲得した銅貨が入った袋が

握られていた。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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