最強で最凶のメンバー達
「ギャッ! 前…ブッ!! モンスダアッ!!」
俺は殴られつつ、前方にモンスターが居ることを
伝えた。危険なダンジョンでこんなことを平気でする
奴らだ。モンスターの気配に気づくのは、俺よりも
圧倒的に遅い。
わき見しながら、ミノタウロスが跋扈するダンジョン
を歩く、等々、今まで何度も俺が気づかなければ、
全員あの世行きだった局面があった。
「ブハッwwwww! モンスダアッって何だよ?」
殴られておかしな発音になった俺を、カルロスが
笑い飛ばした。
「さぁ? お星さまの1種かしら?」
アリスがとぼけて見せる。
「んなの関係ないわよっ! もっと反省しなさいっ!」
ローズは更に怒って殴ってくる。危険を教えて
やったのに、この仕打ちは本当に畜生外道だ。
「おやおや皆。あんなところにリザードマンの
大群が居るぞ」
リーダーでもあるソードマスターのアーロンが、
俺の成果をさらりと自分の物にした。
「キャッ、怖いわ~…………」
アリスがわざとらしく怯え、アーロンのコートの
裾を握った。コイツだってあれくらい一掃できる
実力がある。…………そう、コイツらの実力ときたら
「案ずるな、アリスちゃん。どれ、リーダーの俺が
一肌脱いで見せよう」
アーロンはアリスの頭を、俺と違って優しく撫でると、
ロングソードを抜いた。
「アーロン様…………」
アリスがアーロンに向けるその顔は、意中の男に
向けるそれだ。
「お見せしよう…………我が」
「「おおっ!」」
「剣技」
アーロンが剣を構えて駆け出した。俺がそう認識した
瞬間、リザードマンの首が一斉に宙を舞った。それは
3人も同じだったようで、カルロスとローズは同時に
声を上げ、アリスは更に見とれた表情になった。
「!、壁から来ます!」
壁の壊して突き進む轟音、あまりにも長年敵の気配を
察知してきた俺は、所謂エコーロケーションを習得
していた。
「それがどうした。無能がっ!!!」
カルロスがイラつきながら、岩壁を壊して
襲いかかってきた岩竜を、通常攻撃1発で
向こうへと吹き飛ばしてしまった。
「いよっ、流石は筋肉大将~~!」
アーロンはわざとらしく、カルロスを大袈裟に
褒め称えた。ローズも口角を上げて、「その力だけは
本物ね」と言わんばかりの表情をしている。
「上から15匹来ます!」
「うるっさいのよっっ!!」
ローズは氷の槍を複数本作り、それらを15匹の
飛竜の幼体に直撃させた。
「ヒュウ~~♪ 女の怒りは怖いねぇ~~」
その様子を、カルロスは茶化した。仮に俺が同様の
発言をすれば、最悪殺されるかもしれない。
『グェ~~…………』
1体、死にそびれた個体が声を上げた。
「あら、可愛そうに。種族は違えど同じ命、助けて
あげましょう」
アリスはそう言って、片方の翼が千切れて胴体の
傷口からは、内蔵が見えている個体に、回復魔法を
かけた。
『グエッ??』
すると、個体の傷はみるみる塞がり、千切れた羽も
元通りになったのだ。
「おお、流石は我がギルドのヒーラー! 回復力が
段違いだ!」
「そこらの聖職者とは訳が違うわね」
「モンスターにも優しいアリス。これだから俺は君を
手放せないのだよ」
三者三様、アリスを褒めに褒め称えた。…………そう、
この4人が揃っていれば、俺が敵を見つけるまでもなく、
アーロンが瞬殺するし、相手が巨大ならカルロスの
力業で対応できるし、遠距離型ならローズの攻撃魔法
でどうにかなる。そして致命傷を負っても、アリスの
回復魔法でどうにでもなるのだ。助けた飛竜が次の
瞬間噛みつこうが、殺して回復すれば良いだけの事。
コイツらは、強すぎる。
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