悪逆共の計画のほつれ
「アースヒーローズご一行、よくぞ戻られました。
…………その身なりや欠員を見るに、様々な障害が
立ち塞がったことはお察しします。アーロン、
何があったかをご説明ください」
この世界では珍しい純粋な黒髪を束ね、後ろに
結い上げているドレス姿の女王は、普段とは様子が
違うアースヒーローズの異変を察知し、アーロンに
報告を促した。
「はっ、我々は魔界に続くルート候補の1つ、
ドラクル・ケーブの探索を行っておりました!
深さにして24層、総移動距離約21km地点
までは、滞りなく探索を進められました!」
全く…………それまでは何一つとして問題の無い、
楽しい楽しい探索だったのだよ。
「まあ、流石はアースヒーローズ。次期英雄の
肩書きに相応しい実力ですわ」
フン、女王様の俺達への期待は相変わらず度が
過ぎていらっしゃる…………アリス等とは比にならない
美しい笑みを惜し気もなく向けやがって…………。
「しかし、そこで雑兵を粗方倒した頃、突如として
厄災が現れました!」
…………忌々しい、俺やカルロスの物理攻撃、
ローズやアリスの魔法攻撃が1つも通じず、
「厄災…………それは、どのような者でしたか?」
まるで羽虫を蹴散らすかのように、俺達を
圧倒した…………
「…………SS級の竜、レッドドラゴンです」
あの、怪威だ。
「レッド…………ドラゴン……………………!!」
フッ、流石にこの女も面食らったと見えるぜ。
「で、では…………今、…………この場に居ない…………
ショウは……………………」
ハイハイ、キマシタァー!
「ショウは…………」
この残心でぇ、演技モードに完全切り替えしてぇ!
「私達を逃がす為にっ…………」
涙(嘘!)を流してぇ!
「殿となって…………!! 俺達を逃がじ…………
まじだあ"っ!!!」
…………ワーオ、完璧ッ! 200点満点の泣き落とし
テクニックだ。いやぁ、パーフェクトイケメン+
鼻水付きの涙は最強コンビネーションだよねぇ…………。
はい! 下僕達もどうぞぉ!!
「うっ、うっ…………いつも私達、女性に優しく、
負担を減らそうと、率先して荷物を持って
くれました(荷物持つしか脳のないクズが居なく
なって清々したわwwwww)」
ローズが悲しみにくれている振りをして、
心の中ではショウを笑い倒していた。
「ヒグッ…………グスッ…………いつも皆を笑わせて
くれて…………最期の直前も、素晴らしいジョークを
繰り出してくれましたわ…………(飛竜を弄んでいる
時に邪魔されたのは腹立ったけど、その後焼いたら
良い反応してたわね。あれは滑稽すぎたわwwwww)」
アリスも被せて、内心でショウを罵った。
「うおおおーーー!! ショウーーーーォイオイ
オイーーーーーー!!!!(あーーーwwwww 死後
まで俺達を悦しませる荷物って、マジエンターテイナー
すぎだろぉwwwwwwwwww)」
カルロスに至っては、爆笑を号泣で隠している
始末だった。
「我々は必ず、ショウの想いを継いで魔王を討伐し、
彼の望んだ平穏な世界を取り戻す所存です!!」
ハイハイハイハイ、完璧ーーーーーッッッ!!
いやー、アースヒーローズの連携が決まり
ましたッ!! 女王様、これは俺に対する好感度
マッーークスでしょ!!!
へへへ、そして俺は王となり、この女と世界を
手にいれる!
アーロンは、事が完璧に進んだと思い込み、
愉悦が最高潮に達した。
「…………ええ、その通りです。私もショウの意思を
継いで、あなた方のサポートを全力で努めさせて
頂きます! 共にショウの仇を取り、彼の望んだ
平穏な世界を取り戻しましょう!」
「「「「はい!!」」」」
こうして4人は去っていった。
「…………彼らは、確かにショウの死を悲しみ、志
新たにしていた筈(…………なのにどうしてなの?
…………こんなに違和感を感じて、不穏な気持ちに
なるのは…………)」
その為、女王が4人に負の感情を抱いたことを、
気付けなかった。
~ショウサイド・ドラクル・ケーブ浅層~
「おおおおおおおっっ!!」
俺は全身から汗を吹き出しつつ、荷物を背負い
ながらも脱力し、素早い脚捌きを繰り返していた。
「「「ぐぎゃぎゃぎゃぁあ!!?」」」
こうすることにより、1000に達する
リザードマンの攻撃を細かく避けつづけ、
敏捷系、回避系、スタミナ系のスキルを
大きく成長させることに成功したのだ。
「抜けた! 回復した瞬発筋の力で跳ねまくるッ!!」
『ドドドガドガガドドドガガドガドドガガッッッ!!』
床、壁、天井、巨岩を問わず、俺は洞窟中を
跳ね回って脱出口に向かっていった。
「ああ、見えてきた…………長いようで短かった…………」
遂に…………
「太陽の下に出たぁーーーー!!!」
嫌な思い出ばかりだった洞窟を脱したのだった。
『ピロリン♪
スキル : 軽業がレベル4に上昇しました。
』
「よし! 今すぐ城下町に行きたい所だが、
後少し下準備が必要だな」
~3日後~
「フシュウウウ…………」
俺は巨岩と睨みあっていた。
「ダリャァァァァアアアアアアアッッッ!!!!」
『ズズズ…………』
掛け声と共に、一気に持ち上げた。
『ズドンッッッ!!!』
そして全身の筋肉が千切れつつ、力が消失したことで、岩を落とした。
『ピロリン♪
スキル : 剛力がレベル6に上昇しました。
スキル : 激痛軽減がレベル4に上昇しました。
』
「ハアッ! ハアッ! 良し、次は冒険者登録だ!!」
変哲の無い髪型から、前髪をセンターに分けた
髪型へ、そして…………モヤシと中肉の間から、
普通にマッチョな体型へと変化したショウが、
野望の2歩目を踏み出したのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございました。




