荷物持ちの荷物と呼ばれし男
本日、明日、めっちゃ投稿します。
俺はショウ・ザ・マジック、地球で1度死に、異世界
転生を果たした後に、ゆくゆくはSS級パーティーとして
魔王討伐を期待される、異世界転生者で構成された
B級パーティーの召還士として活動している。
…………のだが
「ギャアアアアアッ!!! なっ、何するんだっ!?」
加減された両手斧の一撃により、両脚の骨が
砕けつつも、脚その物は残っている。しかし、
その中途半端な傷は、俺に限界レベルの痛みを
与えてきた。
「兄貴はスキルを用いて後衛の女共と離脱した。
そして現場には血だらけで、肉の焼けた臭いを
放つお前と俺、そして凶悪なレッドドラゴンだけが
残った」
何を…………言っているんだ…………?? じゃあ一緒に
逃げな…………きゃ………………
「つまり、お前の脚を砕いて動けなくして、
その隙に全速力で逃げてこいということだ。
流石は兄貴、本当に天才だねぇ」
両手斧を担いだ大男は、邪悪で愉しげな笑みを
浮かべながら、そう言った。
…………そう言うことか。リーダーと後衛2人が
去り際に微笑みかけたのって…………そしてコイツも。
…………初めから俺は、仲間じゃなかったんだ。
~10分前~
「おい、遅れてんぞ、さっさと歩かねぇか」
刃渡りが胴体ほどある両手斧を肩にかける男が、
俺の片膝を蹴り曲げつつ威圧してきた。
「うわっ! とっ! とっ…………す、すいません…………」
パーティー全員の大荷物を抱えている俺は、
よろめきながらも体制を立て直し、直ぐ様謝罪した。
謝罪がなければ拳が飛んでくるし、荷物を落とそう
ものなら全員がかりで半殺しにもされてしまう。
「あっははーーー! 今の見た? 情けない声上げて
さー! 男としてどうなんかな~??」
「無いねー。奴隷でもここまで男を捨ててる奴は
無いわー。無い無いー」
魔導士、聖職者の女は、主に言葉で俺のメンタルを
抉ろうとしてくる。もしも先程荷物を落とした場合は、
杖で殴ってくるし、時には魔法で攻撃すらしてくる
外道だ。
「まぁまぁ落ち着きたまえ、ローズちゃんに
アリスちゃん。彼だって一生懸命頑張って、
俺が片腕で持てるような荷物を持っているんだ。
うめき声の1つや2つ、多めに見てやっても
良いんじゃないか?」
白金色の長髪を靡かせる美形の男が、パーティー
の女2人を宥めるように、俺への嫌みを交えて
話し出した。
「けど、アーロンの兄貴、コイツが荷物持ちを
してるのって、録に戦闘できねぇから、俺達が
お情けで仕事を与えているだけだよなー」
「あら、カルロスの癖に正論を言ったわね~」
斧戦士、カルロスの一言に、魔導士ローズは
同調した。
「そうそう、弱い、奴隷未満、男ですらない、
何もないコイツに、優しい優しい私達4人が
荷物持ちという"存在意義"を与えてあげたの
よね~~」
「その通り、俺達は放っとけば、飢え死にしか
未来がない君に、仕事を与えているんだよ~~。
さぁ、こういう時は何て言えば良いのかな~~?」
「あ、ありがとうございます…………」
言いたくない…………けど、言わなければ半殺しだ。
「んん~~?? 聞こえなかったなぁ~~~~!!」
頭の中を覗き込む視線に、際限無く溢れる邪悪な
気配…………。怖い。本当に怖いのは、カルロスでも
女2人でもなく、コイツだ。
「ありがとうございますっ!!」
「偉い! よくできましたっ!!」
屈託の無い笑みを浮かべ、荷物を揺らさずに
運ぶことで精一杯な俺の頭を遠慮無く撫でてきた。
「うわっ! ちょっ…………とっ! とっ! とっ!?」
こんなに体を揺らされたら、荷物が崩れてしまう。
だけど落とすわけにはいかない。
「…………おい、ゴミ。何でアーロン様の寵愛を受けた
くせして、情けない声でよろめいてるんだ?」
ローズが低い声で威圧してくる。
「そうよ、大方眩しすぎてよろめいたんでしょうけど、
そんなんだから男になれないのよ」
聖職者アリスは、俺を心底蔑んだ目で吐き捨ててきた。
「お仕置きが必要ね。ありがたいと思いなさい!」
遠心力が乗った杖の先端部を直撃させてきた。
「この! 役立たずの! ろくでなし!」
それも何度も何度も。恐らく後30回程殴って
くるだろうか。
…………だが、役立たずで言えば、コイツら全員も
そうだろうがっ!!
最後まで読んでくださりありがとうございました。