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緊急発進

【ア島統合基地】ア島統合基地 防空指令所


「シニア、光跡探知!」


レーダーで正体不明と思われる光跡を確認した警戒担当の下士官が指揮官へ報告する。


「了解!識別係は関連する飛行情報を確認!」


報告を受けて指揮官は識別担当へ飛行情報を確認させる。


「シニア!関連する飛行情報なし!」


この世界では自衛隊機と米軍機以外の味方機はいないため、飛行情報がなければ敵機の可能性が高いことになる。


「了解!アンノウン!バイパー01 スクランブル!」


識別担当の報告を受けて指揮官は第8航空団のバイパー01に対し緊急発進を命じた。また、同時に上級司令部であるア島航空方面隊司令部へ正体不明機と戦闘機の緊急発進が通報される。


「了解!」


指揮官の指示を受けて直ちにア島統合基地の管制塔へ緊急発進命令を伝える。


〈ホットスクランブル!バイパー01、F-2A戦闘機2機。方位250度へ向け進路を取り、高度8000フィートへ上昇。離陸後はチャンネル1と交信。〉


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【第8航空団第6飛行隊】F-2A戦闘機 バイパー01


管制塔からパイロットへスクランブル指令の詳細が伝えられる。


≪バイパー01 スクランブル指令 方位250度へ旋回後、高度8000ftまで上昇。チャンネル1でレーダー管制と交信せよ。≫


「バイパー01 方位250度へ旋回後、高度8000ftまで上昇。チャンネル1でレーダー管制と交信する。」


≪バイパー01 その通り。≫


と無線交信しながらF-2A戦闘機が2機地上走行していた。


≪バイパー01 風は微風 滑走路26Rからの離陸を許可する。グッドラック。≫


「了解。離陸する。」


離陸許可が出た直後に戦闘機が離陸していった。


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【第8航空団第6飛行隊】F-2A戦闘機 バイパー01 


「バイパー01 離陸した。」


≪バイパー01 レーダーで確認した。無線機の感度良好。方位250度へ進路を向け高度8000フィートへ上昇せよ。≫


「バイパー01 了解」


離陸したバイパー01は防空指令所の指示を受けて正体不明機に向けて飛行する。


≪目標機は方位250度に距離200マイルの位置を高度7000フィート・速度220ノットで飛行中。≫


「バイパー01 了解」


管制官からの誘導に従い飛行しているとF-2A戦闘機のレーダーでも正体不明機を捉えたようだ。


「自機のレーダーで方位250度に高度7000フィートを速度220ノットで飛行する目標を捉えた。」


≪それが目標機である。目視確認を急げ!≫


「バイパー01 了解」


管制官から指示を受けた戦闘機は正体不明機に対してさらに接近する。

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【第8航空団第6飛行隊】F-2A戦闘機 バイパー01 


目標機を目視したパイロットは驚いた。


≪バイパー01 目標は確認できたか?≫


「垂直尾翼に日本語で王都トオマ商会と書かれている。主翼にブリュンヒルド王国の国旗を確認した。目標はブリュンヒルド王国の航空機と思われる。」


「了解した。該当機に忠告を実施せよ。」


「了解。忠告を実施する。〈我々は日本国航空自衛隊である。貴機は現在、我々が飛行を禁止している空域に接近中である。進路を変えよ。〉」


正体不明機からの返信は無い。


「該当機の行動に変化なし。写真撮影を実施する。」


「バイパー01 目標制限空域侵入。警告を実施せよ。」


「我々は日本国航空自衛隊である。警告する。貴機は現在、我々が飛行禁止にしている空域を飛行中である。国籍所属と飛行目的を明らかして進路を反転し当空域を離脱せよ。さもなければ撃墜する。」


〈日本国航空自衛隊 こちらATA13便です。ブリュンヒルド王国のトオマ商会所属です。商用飛行でブリュンヒルド王国王都国際空港へ向けて飛行中でした。燃料漏れのためア島に緊急着陸したいのです。お願いします。飛行許可をください。〉


「ATA13便、こちら航空自衛隊。司令部に確認するのでお持ち願いたい。」


〈了解しました。だが急いでいただきたい。〉


「了解した。」


パイロットはすぐにこのことを防空司令所に報告し指示を仰ぐ。


「対象機は燃料漏れのため、緊急事態を宣言しア島統合基地への緊急着陸を要請している。指示を乞う。」


〈上級司令部に報告する。指示があるまで現状のまま待機せよ。〉


「バイパー01 了解」

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【ア島統合基地】最高司令官執務室


航空方面隊司令部から電話で報告を受けた。


「つまり、不明機は民間機でア島に緊急着陸することを望んでいるのだな?」


「はい。どうしますか?」


来て欲しくは無いが人命最優先だ。仕方がない。


「人命優先だ。着陸を許可する。戦闘機にはこの基地に誘導しろと伝えてくれ。念のため着陸後に陸自の中央即応連隊を警備につける。陸自部隊へは私から連絡しておくので、そちらは受け入れ準備を進めてくれ。」


「了解しました。」


航空方面隊司令部からの電話が終わるとすぐに陸上総隊司令部へ電話を掛けた。


「中央即応連隊に命令。王国国籍の民間機が緊急着陸してくる。万が一に備えて当該機付近で待機せよ。燃料不足が嘘で、中に兵士がいる可能性を否定できない。」


「了解しました。」


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【F-2A】バイパー01 パイロット視点



≪バイパー01、最高司令官から当該機のア島着陸許可が出た。当該機を滑走路へ誘導せよ。≫


「了解。当該機をア島滑走路へ誘導する。 ATA13便、飛行許可とア島への着陸許可が出た。ア島の滑走路へ誘導する。」


〈了解しました。ご協力に感謝します。〉


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【ア島統合基地】


「YS-11が無事着陸しました。現在、地上走行中です。」


「わかった。ありがとう。」


さて、出迎えに行くか。


エプロンでは天幕を張ったりして準備が進んでいた。

搭乗していた乗客達には取り合えず天幕の中で待機してもらう予定だ。


その時、YS-11が整備班の誘導に従って到着スポットに近づいてきた。


陸自の隊員達に緊張が走る。もしかしたら機内にいるのが兵士かもしれないからだ。


L1扉が開いた。エアステアが搭載されているタイプらしい。

中央即応連隊の隊員たちが乗客待機スペースへ誘導を始めた。


乗客達は不安そうだ。敵国の基地に着陸してしかも完全武装の隊員達に囲まれているのだ。この先どうなるか不安だろう。


パイロットが降りてきた。どうやら俺に気付き、こっちに向かってきた。


「初めまして。機長のフンベルト = デッサウです。おかげで助かりました。ありがとうございました。」


「最高司令官の小川 伸也です。ご無事で何よりです。」


「私たちは今後どうなってしまうのですか?」


「我が国は王国と戦争状態にあります。しばらくはこちらに滞在していただくことになると思いますが、必ず皆さんを王国へ帰国できるようにしますのでご理解ください。」


「ありがとうございます。私が思うに燃料不足の原因は燃料タンクの損傷だと思います。離陸前に燃料を満タンまで給油しましたから、本来なら燃料不足などありえないはずなんです。」


「わかりました。では後者の対応で準備します。」


「よろしくお願いします。」


「機長何個か聞いたいことがある。」


「かまいませんよ。私の知る情報であればお答えしましょう。」


「1つ目は出発地と出発地の滑走路の長さと幅を教えてほしい。」


「出発地は王都にあるブリュンヒルド国際空港です。ブリュンヒルド国際空港は長さ3000メートル幅60メートルの滑走路があります。本来であればそんな長さはいらないはずなんですが、佐々木一という方が作らせたそうです。ちなみに、彼は私が機長を務める飛行機や王国の戦闘機も作りました。」


佐々木一。完全に日本人だろう。


「2つ目の質問だ。駐機場に全幅65メートルの飛行機は駐機できるか?」


「実際には行われていませんが、設計上は可能です。佐々木一さんはYS-11の後、ジャンボジェットというのを作ろうとしていたそうですが、YS-11の量産を完了させた後亡くなってしまいましたから。」


「そうか… ありがとう。疲れただろう。とりあえず、ゆっくり休んでくれ」


ちょうどいい大きさの輸送機が無い…

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【ブリュンヒルド王国】トオマ商会 王都本店 YS-11消失事故対策本部


ア島陸上基地にYS-11が緊急着陸して38時間が経過した頃、YS-11の運用元であるトオマ商会では対策本部が建てられ、情報収集と話し合いが行われていた。


「王宮に貴族が乗ったYS-11が行方不明だと伝えろ!」「貴族が何十人と乗っているんだぞ!もし墜落して全員死亡とかだったらトオマ商会は終わりだ!」「今は戦時下だ。軍を捜索に使ってもらえるとは思えない。もし、軍が何もしてくれないようなら冒険者を世界各地で雇って捜索するしかない。」「すぐに小型機を出して捜索しろ!無人島に不時着しているかもしれない。」


話し合いになっているのか疑問だが大騒ぎになっていた。そんな中対策本部へ通信が入る。


〈宛:ブリュンヒルド王国国王・トオマ商会 発:日本国最高司令官 小川 伸也

我々は現在、貴国の航空機ならびに乗員乗客86名を人道的に保護している。彼らは帰国を帰国を希望している。我が国としては貴国とは戦争中ではあるが、搭乗者全員を速やかに帰国させたい。貴国の意向を聞かされたい。〉


この通信を受け、商会はすぐに王宮へ使いをだした。


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【王宮】


王宮にも燃料切れを起こしたトオマ商会のYS-11が日本国に保護されたことが伝えられた。


「国王陛下、いかがいたしましょう?」


各新聞社は既に号外としてこのことを多くの国民に速報している。

見殺しにすれば多くの国民と貴族の反感を買うこと、日本国の要求を受け入れれば一部の貴族の反感を買うだろう。国王は難しい判断を迫られた。


「...搭乗者を速やかに帰国にさせる。日本国へ向けて帰国交渉を行いたいと連絡しろ。日本国からの指示に従い必要な人員を拠出すること。」


「仰せのままに。」


王国は搭乗者の帰国を選んだ。

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【ア島統合基地】


〈発:ブリュンヒルド王国 宛:日本国最高司令官 小川 伸也 我が国は危機に瀕していたYS-11乗員乗客の保護に対し感謝の意を表する。我が国も搭乗していた者の速やかな帰国の要望に同意し必要なことへ協力する意向である。ついては代表者の会談を行いたい。場所と日時については一任するので指定されたい。以上。〉


「返信が早いな」


「乗客へ身分の聞き取りを行ったところ、乗客は全員が貴族のようです。身分の高い人間だから終戦まで待てないと言う事でしょうかね?」


「だが、ブリュンヒルド王国の国王が重要な決断を迫られたのは事実だろうな。交戦中の国からの要望を聞き入れるのだから。」


2時間後、次のように返信した。


〈場所はブリュンヒルド王国沖東に30キロ地点でわが国の拠点とする。拠点までの移動手段はわが方の航空機とし、当日に貴国の街シーバークへ迎えの航空機を送る。武装は一切認めない。参加者はトオマ商会代表者、王国軍幹部代表者1名、王国外交官2名とする。話し合いは15日後を希望する。〉


王国にも準備する時間が必要だろう。

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