正体不明機
お久しぶりです。
パソコンも治り、書くコンディションが整ったので今日から連載再開していきます。
よろしくお願いします。
【護衛艦あたご】艦橋 正体不明な航空機探知から23分
護衛艦あたごは最大戦速で回避行動をとっていた。まだこの世界にこの艦の存在を探知されるわけにはいかないからだ。
〈CICから艦橋。面舵一杯、進路反転!〉
CICから進路反転の指示が出た。それに合わせて航海指揮官が操舵手に指示を出す。
「面舵一杯!速力このまま!急げ!」
操舵手が復唱し、舵をいっぱいまで切る。
「了解!面舵一杯とします!」
艦は正体不明機の予測進路から離れるため、全速力で航行する。
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【護衛艦あたご】CIC 正体不明機目視圏まで約10分
「正体不明機、再び進路変更!本艦にまっすぐ向かう進路に変針!」
「目視まで何分だ?」
「約10分程です。」
「司令官に指示を仰ぐ。」
高橋艦長は再び司令官室に電話を掛けた。
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【護衛艦あたご】司令官室
司令官室の電話が鳴る。CICからだ。
「司令官、正体不明機は本艦にまっすぐ近づいています。目視可能になるまで約10分です。」
「回避はもう不可能なんだな?」
「その通りです。迎撃を進言します!」
正体を確認してから判断するか、すぐに撃ち落として事故に見せかけるか。選択肢は2つだろう。正体を確認してからであれば敵も本艦を視認する。必ず不審船として通報されるだろう。撃墜すれば事故に見せかければ正体不明機に視認されずに、このままの状況をとりあえずは維持できる。
「高橋艦長、回避行動を継続。何としても振り切れ」
「了解しました。最善を尽くします。」
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【ブリュンヒルド王国海軍】グリーピル攻撃飛行隊 C小隊 隊長機視点
今のところ順調だ。まぁ、今回の飛行はただ洋上を飛行するだけ。簡単なことだ。
そろそろ進路を反転して帰投するか。
そんな事を考えていたその時、先行していた部下から無線が入る。
≪3番機から隊長機。前方に船舶を視認。間違って訓練区域に入ってきたみたいです。≫
この海域は戦闘訓練区域として指定されており、海上も軍用船舶以外は航行が禁止されている。海軍は他の訓練区域で訓練するのがほとんどなのでこの海域に船が来ることなど滅多にない。民間船が間違って入ってきたのだろう。
「≪後で上に報告するから接近して所属を確認してくれ≫」
≪了解。接近して所属を確認します。≫
所属を確認したら帰投しよう。
≪隊長、船首に177と番号が書いてあります。民間船のようです。≫
100番台ってことはアメジスト海運商会だな。前にもやらかしてるし下手したら事業停止だろう。
≪わかった。司令部に報告しよう。そろそろ時間だから帰投するぞ。≫
≪了解≫
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【護衛艦あたご】司令官室
「では、正体不明機はこの護衛艦あたごを確認したが何もせずに離れたと?」
「その通りです。正体不明機はSPY-1レーダーの探知圏外に出ました。現在は艦内哨戒第1配備とし、引き続き対空、対潜、対水上警戒を続けています。」
「司令官。ご命令を。」
「護衛艦あたごは正体不明機遭遇海域から速やかに離脱。離脱後も回避行動を継続すること。以上。」
「承知致しました。」
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【護衛艦あたご】司令官室 正体不明機遭遇から5時間後
艦長に今後の命令を伝えるため艦長室に呼んだ。
「先の一件でこの世界に存在が知れ渡った以上、単艦で対応できない脅威にも備える必要があるので
護衛艦あたごは、第3護衛隊「ひゅうが」「みょうこう」「ふゆづき」の3艦と合流。警戒態勢を強化するとともに次の命令まで周辺海域にて待機すること。また、情報収集衛星4基を召喚しこの世界の軍事関係施設の偵察監視活動を行う。第3護衛隊はこの後召喚するので速やかにに合流すること。」
「承知しました。司令官はどの間に乗艦されますか?」
「ひゅうがに乗艦する。第3護衛隊司令官はあたごに乗艦してもらう。」
「ではそのように手配します。」
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【護衛艦あたご】司令官室
自分の手元にあるタブレットでは、様々な装備品や施設の召喚はもちろんこの世界の軍事情報や国家及び政府に関する情報、通貨・経済に関する情報など様々なことが出来る。
現在位置から一番近いブリュンヒルド王国の情報を見てみることにした。
【ブリュンヒルド王国 軍事装備品・拠点情報】
主な戦力
・陸軍と海軍があり、それぞれ海軍大臣と陸軍大臣が管理し、国王陛下が最高司令官にあたる。
・海軍艦艇数 戦艦3隻、巡洋艦6隻、駆逐艦12隻
・陸軍航空機数 88機(零式戦闘機65機・一式貨物輸送機19機・YS-11人員輸送機4機)
・海軍航空機数 57機(一式貨物輸送機5機・零式水上観測機13機・零式戦闘機39機)
・拠点 海軍基地3か所、陸軍基地4か所、王都航空基地
解説
・この世界で一番の軍事力を持つ国家。航空戦力と海軍戦力は断トツ。20年以上前に異世界転移してきた日本人開発者の遠藤拓海が艦艇や航空機の製造を手掛けた。しかし、陸上戦力は剣や槍そして大盾とローマ帝国を連想させるような旧時代的な装備となっており、小銃が開発されていないなど海空と陸上で技術力に大きな差がある。周辺国はこの技術力を持つ遠藤拓海の身柄を狙い、1週間前にある国の秘密機関が暗殺した。
遠藤拓海とその仲間は技術自体を提供せずに完成品を王国に収めていたことから遠藤拓海とその仲間の死後、王国は軍事技術の優位性を失う事となった。代替技術が手に入れられなければ、航空機の新造や修理はもちろん部品や爆弾や銃弾などの武装も製造が出来ないため、最終的には軍事的な優位性を低下させていくことだろう。
どうやら拠点の場所やどこの拠点に何がどれくらいの数配備されているのかは書いてないらしい。だが、その辺は情報収集衛星や偵察機で情報収集が出来るだろう。