司令官室へ
~日本国海上自衛隊 あたご型ミサイル護衛艦1番艦 DDG-177「あたご」~
アメリカが開発したイージス武器システムを搭載したミサイル搭載型護衛艦。
そんな艦に高校生、しかも海将として乗ってていいのだろうか?
「小川伸也 海将 お待ちしておりました。艦長の高橋雅也一佐です。」
そう言って敬礼して迎えてくれたのは艦長だった。
「艦長、聞きたいことがたくさんあるのですがよろしいですか?」
「敬語はおやめください。私はあなたの部下なのですから。」
「わかりま...わかった。では司令官室に案内してくれ」
「かしこまりました。ではこちらへ。」
俺は艦長と一緒に護衛艦あたご司令官室へ歩いていた。
「艦長。護衛艦あたごの現在位置は?」
「異世界の国ブリュンヒルド王国から西に1200キロ地点です。」
「単艦でか?補給はどうしている?」
「補給はまだ行っておりません。本艦が出現したのは海将が到着する5分前でしたから。」
「出現とはどういうことだ?舞鶴基地を出港し異世界に来たのではないのか?」
「いいえ、海将がいらした世界とは別と考えてください。」
まぁ、予想はしていたが異世界なのか。
「艦長、他の艦艇を出現させられるか?」
「はい、もちろんです。海自のみならずアメリカ海軍などの他国海軍の艦や陸自空自の航空機や車両も出現させられます。」
「海将、こちらが司令官室です。」
以前映像で見た司令官室と同じだった。
俺は司令官室で異世界のことについて艦長と話すことにした。
「この世界の法律や情勢、領海に関する情報はあるか?」
「そのような情報はこちらに全て入っております。」
艦長は俺にタブレット端末を渡してきた。
「現在、本艦は公海上を航行しています。公海の定義は現実世界と同様とお考え下さい。公海上を航行中とは言え、この世界には日本という国はありませんのでこの世界の軍艦や巡視船に臨検される可能性があります。」
「艦長、護衛艦あたごの指揮命令権は私にあると考えてよいか?」
「はい。護衛艦あたごの指揮命令権は小川海将にあります。」
「わかった。では艦長、各種レーダーを活用し他の船舶の監視を強化、探知した場合は目撃されないように回避行動をとってほしい。」
とりあえず他の船から目撃されなければ臨検は回避できるだろう。
「了解しました。他船舶に目撃されないよう航行します。目的地はありますか?」
「今のところは無い。周辺海域を航行し、次の指示があるまで待機せよ。」
「了解しました。周辺海域を航行し、次の指示があるまで待機します。」
「艦長、食事はどこでとればいい?」
「本日は士官室係が司令官室にお持ちしますので、司令官室でお願いします。」
「明日以降は?」
「明日以降は司令官室係が飲み物や食事の準備を致します。」
まぁ、高校生とは言え海将の司令官が士官室で食事をしたら他の幹部自衛官は緊張して食べた気にならないだろう。
「ほかにご質問はありますか?」
「いや、大丈夫だ。」
「では私はこれで失礼します。」
高橋艦長はそう言って退室していった。
ソファーに座り、自分で入れいたコーヒーを飲みながら考える。
自分が護衛艦の司令官室にいる。しかも海将という階級でだ。
未だに現実とは思えない。
さて、これからどうするか・・
【資料】護衛艦あたご
海上自衛隊が運用するイージス武器システムを搭載したミサイル護衛艦。日本のイージス艦としては5隻目。2007年3月就役。
前級であるこんごう型との違いを見るととアーレイバーク級フライトⅡAと同様にヘリコプター格納庫も装備、ベースラインのアップグレード、ステルス化を意識した外観となっているなど進化している。艦隊防空や弾道ミサイル防衛はもちろん、司令官室や戦闘指揮所の横に司令部作戦室が用意されるなど護衛隊の旗艦としても役割を果たす。
現実世界では第3護衛隊群第3護衛隊に所属し、定係港は舞鶴となっている。