訳有り物件 貸借人:澤邊良平
私、澤邊良平、25歳、この度沖縄に転勤が決まり引っ越し先を探しに「イキイキ不動産」に入店、ここの不動産屋さんは日本のみならず世界中の物件を探す事が出来るらしい!?。
ピン?ポーンっ(ドアホンの音?)
店員1
「いらっしゃいませぇ~、、当店では例え老い先短い老人でも、世間のいろはを知らない未成年でも、生血が好きな殺人指名手配人でも、分け隔てなく住まいを提供するのをモットーにしており、必ずやお客様のご要望にお応えするイキイキ不動産ですぅ~。」
澤邊
「口上が怪しいなぁ~。」
店員1
「本日はどのようなご用件でしょうか?。」
澤邊
「あっ!、はい、実は今度、沖縄に転勤が決まりまして何か良い物件がないか探しにきたんですが。」
店員1
「ああぁ~、沖縄!、良いですねぇ~、毎日がバカンスですよぉ~、・・・・たまに鉄の固まりが落ちてきますが・・・。」
ん?、なんか最後の方、声が小さくて聞こえなかったぞ!?。
店員1
「条件とかはございますか?。」
澤邊
「あっ!!、はいっ、私は北海道の網走市の出身なので東京の夏の暑いのにさえ耐え難いのに今度の転勤では沖縄なのでクーラーがガンガンに効く物件があれば有り難いんですけど。」
店員1
「クーラーがガンガンにねぇ~!。」
澤邊
「あぁ、でも、出来れば電気代が安く済むとありがたいんですが・・。」
店員1
「矛盾してますね!?。」
澤邊
「はい~、そうですよねぇ、やっぱ無理ですかねぇ~。」
店員1
「少しお待ちください。」
しばらくパソコンとにらめっこしている店員1。
店員1
「あっ!、これならどうかな?!。」
澤邊
「ありますか?。」
店員1
「はいっ、那覇市内の「南国キングダム」と言う物件で、近くに「波の上ビーチ」と言うレジャースポットもある良好な所ですね。」
澤邊
「なんか、場所的には良い所ですね、部屋の間取りとか写真みたいなのはありますか?。」
店員1
「間取りや写真なんかは、当社1押しの物件紹介システム「バリバリ間取り伝説」と言うバーチャルリアリティーでご覧になれます。」
澤邊
「バリバリ・・間取り・・・伝説?。」
あ、怪しいぃ~~!?。
店員1
「これは遠く離れた物件でもバーチャルリアリティーで間取りを拝見するシステムで遠方へ転勤される方々には好評なんですよ。」
澤邊
「そ、そうなんですか?。」
店員1
「遭難・・・する時もあるんですがね!。」(小声で)
また、声が小さい説明なんだけど!!。
澤邊
「???。」
店員1
「使い方は簡単、VRゴーグルを装着してコントローラーで移動するだけです。」
早速試してみた!。
階数は6階、東向きのベランダではオーシャンビューが広がる。
店員1
「この物件は暑さ対策が施されていまして夏でもクーラーをあまり必要としていない物件でございます。」
澤邊
「ここっ、良いですね、ここにします。」
店員1
「解りました、では早速ご契約を行いたいと思います。」
そうして私は那覇市の「南国キングダム」と言うマンションに引っ越しをしたのだ。
引っ越しをして解った事として、壁っ、特に外壁が分厚い!、壁の厚さが東京の1.5倍はあり、大家さんの説明では外壁を厚くして、外壁の塗装には宇宙ロケットの先端部分の断熱に使われている塗料が塗られていて、内部の断熱材も最新技術の物を使い、内壁は外壁で使われた塗料に珪藻土を加えて質感を柔らかくした塗料が塗装されているそうだ、そして、窓ガラスはペアガラスはめたサッシを二重に配置する工法を採用しているそうだ。
たしかに、外の気温が30度の今でもクーラーの設置していない部屋なのに暑くない?!、何もしていないのに室内温度は22度だ!。
むしろ、窓を開けると外の熱い空気が入ってくるので窓は開けられない!。
ちなみに、大家さんからは各フロアーへの行き来は自由ですが最上階へ行く時は必ずこれを来て行ってください、と、ある物を渡された?!。
引っ越ししてから初めての夏、私の部屋は相変わらず快適だ!。
最近、気になっているのは大家さんから渡されたある物だ。
それはこの沖縄ではとても不釣り合いな物で、むしろ、私の田舎では重宝される物だ。
私はこのある物を渡された真相が気になったので最上階に行ってみる事にした。
このマンションの住人から聞いた話では何も変な事は無いらしいが、最上階に行くなら大家さんから渡されたある物を持って行かないと危ないと言われた!、あ、危ないって、何も無いはずなのに危ないって、増々意味が解らなくなった。
このマンション全体の内部は涼しいとは思っていたがエレベーターが最上階の13階に到着して扉が開いた次の瞬間、エレベーター内に冷気が入って来た!!。
澤邊
「寒みっ!、ここ真夏の沖縄だよな?。」
最上階のフロアーに足を踏み入れた私。
澤邊
「まるで冷蔵倉庫みたいな寒さだな?。」
私は大家さんから渡されたある物、つまり「防寒着」を着る事にした。
少し歩いたところでとある1室のドアが開いて中から綺麗な女性が出てきた!。
澤邊
「あっ、は、初めまして、私、6階の澤邊と言う者です。」
白糸
「初めまして、私は白糸と言います、ここに住んでいる者としては結構長くいますので解らない事がありましたらなんでもお聞きください。」
澤邊
「はい、ありがとうございます。」
その日はそれだけで終わったが、後日、10階にある住人専用のラウンジで夜のオーシャンビューを見ながらお酒を嗜んでいたら、先日お会いした女性もやって来た!。
客は俺だけって事もあり隣の席に座った女性とは色々と会話を楽しんだ。
女性の名前は白糸由美、ご両親も北海道の上川町の層雲峡が故郷だそうで、ここの大家さんが北海道旅行の際に知り合いとなり一家で住み込みの管理人を任されているそうだ。
で、最初は一家だけだったんだが、親族一同も沖縄に移住して同じマンションの最上階のフロアーで生活しているそうだ。
同じ北海道出身者同士って事もあってか女性とは短期間で親しくなり、交際を始めた。
そして、1か月後ついに私の部屋で関係を持つ事となったのだ。
まずは私の部屋で彼女が料理を作ってくれて美味しく頂き、TVやDVDを鑑賞、夜も深まりムード的に最高な雰囲気のところでベッドへと移動した。
彼女の身体を愛撫するのだが、何となく彼女の身体の体温が低いように感じた。
その時の私の心は燃えたぎっていたのだが、どういう訳か私の大事なアレが凍傷しかけた???。
彼女、と結ばれた瞬間、中が冷たくて私の大事なアレが一度萎んだ。
だが彼女への愛のパワーで持ちこたえ最後まで逝く事ができたのだが。
でも、まさか、凍傷しかけるなんて、一体どういう事なんだろうと思った。
澤邊
「しかし、私の部屋、こんなに寒かったっけ?。」
と、言うか、ベットで一緒に寝ている彼女の身体が冷たいのだ?、死んでもいないのに???。
朝になり、目が覚めた彼女にかくかくしかじか説明をしたら。
由美
「あらっ、言っていませんでしたっけ!?、私達、一般的に言われる「雪女」や「雪男」の雪精霊一族だって?。」
聞いてないよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!。
まさか、彼女とその一族が人間ではないとは?。
でも、彼女は綺麗で可愛いのでそのまま交際して1年後に結婚、子供も2人ほど授かりました。
しかし、2人目が産まれた半年後に私は凍傷による身体壊死と低体温症でこの世を去ってしまいました。
悲しいです。
本当、悲しいです。
だって、わずか30歳でこの世を、しかも、綺麗で可愛い奥さんと2人の子供達を残してこの世を去るのですから、未練タラタラ残りますよぉ!?。
終わり
追伸
しかし、今では私も「雪男」の雪精霊として家族と共に沖縄の「南国パラダイス」で幸せに生活をしております。
本当の終わり