4、映画とレアキャラ(炎タイプ)
理沙が教室でスマホをいじっていると、友達が話しかけてきた。
「ねぇ理沙ー今日街行かない?」
「え〜連れ回されるから嫌」
「そんな事言わないで〜お願い!」
「帰りまでに答えを決めておきます」
「えぇ〜」
理沙はそう言い教室を出て、自販機に向かう。飲み物を買えるお金があるかどうか財布を確認しながら歩いていると、階段で良二と伊達が話しているのを見つけた。
「良二、今日映画館行こう」
「なして?」
「映画館限定のモンスターがもらえるらしい」
「それは胸熱、行くしかないな」
「今日は街に繰り出そう」
「オーケー。放課後はすぐ学校を出るぞ」
そんな会話を聞いたあと、理沙はすぐに教室へ戻り先程の友達に返事を返した。
「街行くんだっけ?良いよ行こ」
「え?さっき帰りまでにって...」
「行く気になっただけ」
「そぉ...?分かった!」
「HR終わったらすぐ行くよ?」
「う...うん...そんな行きたかったならさっきそう言えば良かったのに...」
理沙は返事を返すことに気を取られ、飲み物を買い損ねたのでそのあと買いに行くことにした。
学校が終わった瞬間すぐに友達を連れて良二の教室へ向かう。
(いない...もう出たのかな?)
良二の教室を覗いてみると、良二と伊達の姿はなかった。しかしまだちらほら生徒がいるのでHRがまだ終わってない可能性も捨てきれない。
近くの先輩に声をかけて、HRが終わったのか尋ねてみた。
「あのぉ...このクラスってもうHR終わっちゃいましたかぁ?」
「え...あーうん、終わったみたいだね」
「ありがとぉございまぁす」
少し高めの可愛い声と上目遣いで先輩男子を虜にしながら良二たちがもう学校を出てしまったことを知る。
理沙たちはすぐに学校を出て街へのバスに乗って追いかけた。
「理沙....はぁ...なんで...何でそんな急いでんの...?」
「ごめん、ちょっと早く行きたくて」
友達が息切れしながら理沙に尋ねるが、理沙は早くバスが街に着かないかで頭がいっぱいだった。
バスが街に到着すると、映画館まではすぐだった。
(着いた...どこにいるかなぁ)
「映画かぁ〜何か面白いのやってるかなぁ?」
理沙は良二を探すためにキョロキョロして探す横で、友達は理沙がただ映画見たいだけだと思い込んで映画を選ぶ。
すると、聞き馴染みのある声が奥の方で聞こえた。
「うわっ!SSR来た!」
「マジ?」
「マジマジマジ!やば!うわ激アツ!」
声のする方に行くとやはり良二だった。
理沙は気付かれない様に後ろに回って、良二の耳元に顔を近づけて話しかけた。
「せーんぱいっ」
「どわぁっ!!...おぃマジやめとけってビビるわぁ...」
「伊達先輩も先程ぶりです」
「ん」
「何してるんですか?こんな所に二人で」
「レアモンスターを求めて」
「なるほど、先輩随分テンション上がってましたけど、ゲット出来ましたか?」
「おぉ!よくぞ聞いてくれた!見よこの美しいグラフィックとスキルを!」
「へぇ〜このゲーム人気ですよねぇ最近」
「お前もやれって面白いから」
「先輩がやってるならやります」
「おぉやれやれ〜フレンド申請したらガチャ石貰えるからな」
「ちょっと待ってくださいね」
理沙はいつもより大分高いテンションの良二を見て楽しそうにしながら、良二おすすめのゲームアプリをダウンロードする。
「よしっ!これもう一回回せるな!」
「良二ストップ、どうやら映画を見ると確定で貰えるらしい」
「なんだとぉ!?それはハイパー激アツ」
「映画ってどれです?」
「あれ」
伊達が指差した映画は、女子高生が好きそうな恋愛映画だった。
良二は意外なチョイスに大分落ち込んだ。
「何故男子高校生がハマる様なゲームのモンスターが、女子高生が好きそうな映画を見なきゃ貰えないんだ...」
「でも先輩、そのモンスター欲しいんですよね?」
「ああ...でもアレを男二人で見る気にはなれないな」
「私と見れば良いじゃないですかね」
「は?」
「私もレアキャラなら欲しいですし、あの映画は気になってましたので。先輩が良ければですけど」
「本当か!よし行こう!映画中は寝てれば良いもんな!」
「行きましょー」
良二と伊達、友達を連れて理沙は恋愛映画を観に行った。
ちなみに友達は伊達を見てから目の色を変えて気に入られようとしていた。
映画が始まる前にトイレに行くと、友達がテンションを上げて話しかけてきた。
「ちょっとちょっと理沙!伊達先輩と仲良かったの!?」
「別に。私が仲が良いのはもう一人の方の先輩だよ」
「え?あーあっちのちょっとビミョーな方?」
「ビミョーかなぁ」
「理沙ってああいう冴えない感じが好きなの?」
「んー別に」
理沙は少し面倒になってテキトーな返事を返して良二たちと合流した。
レアキャラを求める人と、映画を観たいという人が集まって、劇場内はかなり混んでいる。そのせいで、二人一組で分かれてしまい、理沙と良二は後ろの方の席で二人で鑑賞することになった。
「先輩、映画デートみたいですね」
「これどうやってゲット出来んだ?上映中は流石に出来ないだろ?」
「先輩、映画デートみたいですね」
「痛い痛い痛い痛い痛い!!そうですね!全くその通りですね!」
良二の耳を引っ張りながらもう一度聞き返すと良二の耳に届いた。
「あー良かった、先輩この距離で聞こえないのかと思っちゃいました」
「ソウダネ...ゴメンネ」
「先輩、伊達先輩ってモテるんですか?」
「ああ、顔は良いからな。たまに他校の女子にナンパされる」
「で、先輩は空気になると...」
「失礼な、たまに俺に声かけてくる奴もいるぞ。すぐDJに持ってかれるがな」
「へぇー...」
「あの子はDJが好きなのか?」
「いえ、どうやら伊達先輩うちの学年にちょっと人気みたいで。テンション上がってました」
「ふぅん」
「ついでに、私は先輩と話している方が楽しいですよ?」
「あっそぉ、へー」
「信じてませんね」
「どーでも良いからな」
良二は本当にどうでも良さそうにスマホを弄る。まだレアキャラのゲットのやり方をネットで検索している様だ。
「先輩、そろそろ映画始まりそうですよ」
「お、マジか。じゃあ寝てるから終わったら起こして」
「ほんと興味無いんですね...」
良二は本当に寝始めて、理沙は実質一人で映画を楽しむ。横からスースー寝息が聞こえるので、ふとそちらを見ると良二の寝顔が画面の光で照らされている。
(こんな感じで寝るのか...。可愛い)
そんな事を思っていると、良二の顔がズレ始めて理沙の肩にもたれかかって来た。
衝撃で起きるかと思ったがまだ起きずに寝息を立てている良二に、理沙は緊張を隠せずにいた。
(いつもならこんな近くで先輩を見れない...)
意外と良い匂いするとか、体温が高いとか、たまに漏れる寝言とか初めて知る事ばかりで、理沙は映画に集中出来なかった。
「先輩...さっき友達が先輩を冴えないって言いましたけど...。私は先輩すっごい良い人だと思ってますからね」
「................zZ」
理沙は良二の頭に口元を埋めてそんな事を囁くが、良二は眠っていて聞いていなかった。
映画が終わったので、理沙は周りが明るくなる前に良二の頭を定位置に戻し、何事も無かったかのように良二を起こした。
「先輩、終わりましたよ。帰りましょう」
「ふがっ...?...おぉ、終わったのか」
「ええ、あとどうやらレアキャラは映画中に出てきたセリフを打ち込むと貰えるみたいでした」
「何!?ぜんっぜん見てなかったぞ!」
「私覚えてるので、後で教えますね」
「マジかっ!サンキュ〜やっぱお前と来て正解だったな」
「私もそう思います」
理沙たちはそれから少しだけお茶をして解散した。
映画のポップコーンってあれ、抗利尿作用があるとか無いとか