22、疑問
『いつかすごい好きって言える人に会えると良いね』
伊達はそんな言葉を大路に告げた後、家へ帰っていった。
時が経ち、伊達、良二、大路達は二年生になって良二が理沙と出会い、現在に至る。
良二、理沙、伊達の三人はもんじゃを摘みながら大路についての話をする。
「つまり、友達だとずっと思っていたけど、最近になって可愛いとか思い始めたと...」
「良いですね良いですねぇ、伊達先輩も遂に恋をしたんですね」
「うん」
「つか、何で急に好きになったんだよ」
「ずっと一緒にいたら凄い楽しくて、気を使うけどそれが苦じゃなくて、自然と笑顔になってしまうから。もうこれは好きかなと」
「好きだな」
「好きですねそれは」
「良かった」
そう言った伊達の顔はとても安心した、柔らかい綺麗な笑顔だった。
「まぁでも一つ問題が」
「あーそうだね」
「何ですか?」
「大学生の彼氏がいるんだよ。まだ関係が続いてるならの話だけど」
「奪っちまうのは良いが、フリーならそれに越した事はないな」
「まぁ何にしたってアピールしてみよう」
「何か手伝える事があったら言えよ」
「私も何かお手伝いします」
「ありがとう二人とも」
三人はお好み焼き屋を出て家へと帰る。途中、理沙と良二は二人だけの道を帰る。
「上手くいきますかねぇ」
「さぁな」
「何でそんな冷たいんですか」
「いや成り行きで手伝うとか言ったけど、正直ほとんどDJの問題だしな」
「確かに外野があーだこーだ言ってもって感じはありますよね」
「何とかするさ、あいつ一人でも。それでも助けを求めて来たら、そん時助けてやるさ」
「何か良い案があるんですか?」
「ねぇ」
「頼りなっ」
次の日、伊達は教室でいつもの様に大路と話していた。
「おはよう大路さん」
「うん」
「本読んでる。今回は何読んでるの?」
「恋愛もの」
「珍しい、恋愛ものなんて」
「私だってこういうのも読む」
「どんな話?」
「期待する事をやめた男の子と、世界中を旅してきた旅人の女の子が出会う話」
「面白そう」
「読む?」
「今度読むよ」
大路はスマホで漫画を読む以外に、こうした小説等もよく読んでいる。
ジャンルはバラバラ、小難しい本は伊達は好きではないが、頑張って読んだときの達成感は大路に共感してもらった。
「今度この本に登場する町に行ってみたいな...」
「近いの?」
「そんなに遠くはないらしい」
「彼氏と一緒に行くの?」
「うん、連れて行ってもらおうかな」
「そか...」
伊達は仕方のない事に少しだけ落ち込む。今もし大路に彼氏がいなかったら、伊達は大路をその町へ一緒に行こうと誘えていただろう。
「そういえば、もうすぐ冬休みだね」
「あーそうだね」
「寒くなるのは嫌だけど、長い休みに入るのは嬉しい」
「確かに」
「冬休みは何するの?」
「食って寝る」
「それは...良いね」
「でしょ、今からでも楽しみ」
大路は本当に楽しみにしているのか分からないくらい無表情だが、今までの付き合いを思い返してみると本当にそうするんだろうなと察していた。
「伊達くんは?」
「僕は、バイトかな」
「つまんないね」
「一緒に見えるけど...」
「お互い楽しい事があると良いね」
伊達の方を一切見ず、まして微笑みさえもせずに無感情にそう告げる大路。
冬休みに入ったのはクリスマスイブ前日の二十三日。
修了式を終えた学生たちはこれから始まる二週間余りの長期休みに心を躍らせる。因みに今日は良二も理沙も約束があったらしくそそくさと帰って行った。そんな中、大路と伊達は二人きりで教室に残っていた。
「そういえば、ロケ地に行くっていう話、どうなったの?」
「明日行くってさ」
「良いね...楽しんで来てよ」
「んー」
二人はそんな会話をしてから学校を出た。寒い下校道を雑談を交わしながら歩いていく。
「じゃあ明日行くところはかなり有名な所だね」
「観光客多そうで凄い嫌だ」
「人混み嫌いだもんね」
次の日、伊達はバイトの唐揚げ屋さんで働いていた。
「冬休みだねぇ」
「そうだね」
「ていうかクリスマスだねぇ」
「そうだね」
「私まだ独り身なんだけど、どう思う?」
「やばいね」
「そうだよねーーー!!」
「................(ビクッ)」
一緒のシフトで雑談していた同い年の女子高生が伊達に言われて塞ぎ込んだ。
「華のJKがクリスマス一人ってヤバくない?しかも唐揚げ臭くなってるし」
「僕もいないし、そんなに気にする事じゃないと思うけど」
「分かってないんだもんなぁ〜伊達くんは。いい?『作らない』のと『作れない』、この二つには明かに大きな違いがあるんだよ」
「いや僕だって...」
「やめて!これ以上私に優しくしないで!」
(早くバイト終わらないかな...)
そんな会話をしていると、とても見覚えのある女子が遠くの方に見えた。
(...大路さん...?)
その女子は大路で、何やら浮かない表情というか、怒っているように見える。
(確か今日彼氏と聖地巡礼するとか言ってた気が...)
伊達は一抹の不安を抱いて残りのバイトをこなし、家に帰る前に大路に連絡した。
『...何』
「もしもし大路さん?今どこ?」
『何でそんな事聞くの』
「今日バイト中大路さんを見かけたんだけど、今日彼氏と遊びに行くんじゃなかったっけ?」
『あー中止になった』
「中止って...どうして...」
『急な飲み会だってさ。サークルの女の子たちと』
「前から楽しみにしてたじゃん、優先させなかったの?」
『別に。元からそんなに熱ないし』
電話口から聞こえる大路の声は、いつも通り淡々として変わらないのだが、伊達は少し寂しそうな声に聞こえた。
「ねぇ大路さん」
『何?』
「僕と...行く?その小説の場所に」
『...どうして』
「大路さん行きたそうだったし、彼氏との予定が未定なら、僕が連れて行くよ」
『場所知らないじゃん』
「それでも」
『................良いよ、行こ』
「うん、じゃあ明日何時にしようか」
『10時』
「分かった、また明日」
『うん』
伊達はそう言って携帯をポケットに戻し、暗い夜空の中に微々たる光を発している星達を見ながら大きく鼻から息を吸い、白い息を吐いた。
大路は部屋で電話をしていたのだが座っていたベッドに仰向けに倒れ込む。
顔に手の甲を押し当て、深いため息を吐いた。
(どうして良いって言ったんだろう...)
寒い冬のクリスマスイブに、そんな疑問だけが残った。




