20、冷め切っていたなら
大路と伊達が仲良くなってから友達とみんなに言われるまで、あまり時間はかからなかった。何故ならよく一緒に話している所をみんなに見られていたから。
そして、ゆっくりと、長い時間かけて友達になったおかげで、大路の態度は少しだけ変わっていった。
「大路さん、今日暇?」
「まぁ」
「じゃあご飯食べに行かない?今日親がいないから」
「めんどくさいから嫌」
「じゃあ放課後に。あ、お昼食堂で一緒に良二と食べようよ」
「んー」
と、この様に軽口を叩いてくる様になっていた。相変わらず無表情で、何を考えているのか分からないが、伊達の誘いには極力乗って来てくれる様になっている。
「悪いな、わざわざ食堂来てもらって」
「別に、ちょっと歩けば行ける場所だし」
「食堂の位置に感謝」
「何だ食堂の位置に感謝って...。そういえば、そろそろ中間だな」
「あ、そうだった。ここ来て初めての中間試験だね」
「はてさて、どうなるか」
「伊達くん勉強出来ないの?」
「何で僕だけに聞くの?」
「大変そうに見えたから」
「別について行けてない訳じゃないけど、不安なところはあるかな」
「じゃあ勉強会すっか。俺ん家で」
「そだね」
「因みに二人は何が出来るの?」
「俺は数学」
「僕は理科。化学と物理かな」
「へぇ、英語は?」
「「まぁそれなりに」」
二人は口を揃えてそう言うと、大路は少し気まずそうな反応を見せた。
「もしかして、英語苦手なの?」
「...中学から。何だったら小学校から。あと古典も」
「あー...じゃあ一緒にやる?」
「良いの?」
「得意って程じゃないけど。そんなに自信無いなら人並み程度に教えるよ」
こうして土曜を使って三人は良二の家で勉強会をすることに決まった。
土曜になり、10時少し前に大路と待ち合わせであるコンビニ来ていた。伊達はコンビニの中でお菓子などを吟味しながら待っていると、後ろからアキレス腱を蹴られた。
「いった!いった...!」
「お待たせ」
「あ、うん...せめてお尻でしょ蹴るの」
「じゃあちょっともう一回...」
「いややらないやめて」
二人は一緒に良二の家へ向かう。
着くと、良二が鍵を開けてくれて中から今起きたという様な顔で出迎えてくれた。
「おはよう」
「おぅ...悪いんだけど先に部屋入ってて、シャワー浴びて目ぇ覚ますから」
「分かった」
「お邪魔します」
二人を残して良二はシャワーを浴びにいってしまったので、伊達と大路は二人で部屋に移動する。
良二の部屋は意外と片付いていた。二人が来る前に片付けておいたのか元々綺麗好きなのか定かではない。
「男の子の部屋久しぶり」
「久しぶり?」
「中学に付き合ってた彼氏の家、よく連れてかれてたから」
「彼氏、どんな人だった?」
「んー?まぁ別に大した人じゃなかったかな。今思えば」
「そうなの?」
「多分今付き合ってる人と同い年になったら、大人っぽいなーと思ってる彼もそう思わなくなるのかな」
「へぇ、彼氏いるんだ?」
「うん、大学生の」
「大人だねぇ」
「そうかな」
鞄の中から教材を取り出して勉強を始めようとした。するとシャワーから上がって来た良二が腰にタオルを巻いた状態で現れた。
「良二、だらしない」
「着替え部屋に忘れたんだよ。悪いな大路さん」
「大丈夫」
「見慣れてるだろ」
「マサカソンナ」
良二が着替える間大路は視線を外して、着替え終わったところで三人は勉強を始めた。
「分かんない所があったら、まぁ可能な範囲で助け合っていこう」
「だな」
「ん」
三人は苦手な教科を教え合っていきながら勉強を進める。
お昼ご飯も食べ、また勉強を進めて時間は16時。およそ五時間ほど勉強した三人は今日はこれでお開きにする事にした。
「さて、終わるか」
「そうだね」
「ありがとう二人とも、助かった」
「いいえ〜」
「DJ、今日止まってくだろ?」
「うん。あ、今日アレやりたい」
「アレ?一人用じゃん」
「だから交互に」
「あーなるほどな」
「?、何の話?」
伊達と良二が意味不明な会話をしているので、大路が思わず首を傾げる。
「今日は僕は帰らないで良二の家にお泊まり」
「で、やりたいゲームがあるからそれを夜通しやると」
「勉強は?」
「日中あれだけやりゃ十分だろ」
「やれば良いってものでも無いしね」
「やけに休憩短かったのはそのせい?」
「そゆこと」
しかしその話を聞いて、大路は楽しそうだと感じて残ることにした。
「私も一緒にゲームしたい」
「え?女子一人で?本当にただゲームするだけだよ?」
「良いのか?彼氏とか...」
「大丈夫でしょ、怒って来たら別れればいいし」
「そんな雑なの?」
「別に、好きって言われたから付き合ってるだけだし」
「さすが受け身の大路さん」
「なにそれ」
「僕が今勝手に作った呼び名」
「何でもいいけど、飯は食ってくんだろ?なら先に飯の材料でも買ってくべ」
「ご飯作れるの?」
「男飯ならな」
「美味しい良二の男飯」
「期待大」
一先ず三人は近くのスーパーに行く事にした。
外食という手もあったが、ほぼ一人暮らしの状態なので節約出来る所は節約したい。
「スーパーとか久しぶり」
「普段来ないの?」
「基本彼氏とは外食だし、親とスーパーなんて行かないし、一人だったらコンビニ行くし」
「えぇ...こんなに楽しいのに」
「どこが」
「友達と行くスーパーすごい楽しい」
「全然分かんない」
三人はグルグル回りながら食べたいものを決めていく。
「何がいい?」
「何でも」
「お好み焼き」
「あーいいんじゃね。鉄板あるし」
「決まり」
良二たちは家でお好み焼きパーティーをする事にした。
材料を買って帰って来たところで、さっそく作り始める。部屋中にジュージューと鉄板の上で焼かれているお好み焼きを三人で囲んで眺めていると、良二が言った。
「すっげぇ今更な事なんだが...」
「なに?」
「俺お好み焼きうまくひっくり返せない」
「僕も」
「私も」
「「「.................」」」
リビングに何とも言えない雰囲気が漂う。
もう既に裏面は良い感じに焼き目が付いており、そろそろひっくり返さないと焦げてしまいそうな状況にある。
「何でもっと早く言わなかった」
「小さく出来ると思っていたが、案外大きくなっちまった」
「誤算だね」
「誤算だねじゃないんだよ。これどうすんの」
「仕方ねぇ、やってみるか」
「怖い...大路さん離れてて」
「分かった」
良二は一つ深呼吸をして、ヘラをお好み焼きの下に通す。ギュッとヘラを握ってひと想いにひっくり返す。
しかし、勢いが良すぎたのかお好み焼きはヘラの上を滑り、前方の伊達の方へ投げ出された。そしてそれに即座に反応した伊達は、思わず手でお好み焼きを鉄板のほうに向かって弾く。
「あっつぁ!!」
「あぶね」
良二は鉄板の上に着地したお好み焼きが跳ね無いように鉄板の上に着地した瞬間ヘラで押さえつけるようにしてそれを防いだ。
結果的に上手いことお好み焼きは裏返り、片面を焼く事に成功した。
「いやぁ...上手くいったな」
「どこが」
「何かすごい凄かったよ」
「語彙力無くなってんじゃん」
「自信が付いたわ、サンキューなDJ」
「もう二度とお好み焼きはしない」
三人はお好み焼きを食べ終わったら良二の部屋でホラー、格闘、RPGなど様々なゲームをやっていった。
時刻は22時、既に外は真っ暗で流石に泊まっていく訳にはいかない大路は帰る事になった。
「じゃあ今日はありがとう羽島くん」
「おー。俺も楽しかったぜ、久しぶりに女子とゲーム出来て」
「送る」
「ありがと」
伊達は大路を途中まで送る事にして、鈴虫の鳴く帰路を一緒に歩く。
「暑くなって来た」
「まぁもうすぐ夏休みだし」
「夏好き?」
「クーラーがあれば」
「分かる」
「ん、電話だ」
伊達と喋っていると大路の電話が鳴り、画面を見ると彼氏の名前らしき男性の名前が書いてあった。
「もしもし、何?...はぁ、うん。で?はぁ...ふーん。...あそぉ、わかった。...じゃあ後でね」
大路は終始声も表情も一切変わらないまま、彼氏との通話を終えた。
「彼氏?」
「そう。何か会いたいんだとさ」
「今から?」
「うん」
「可愛らしい人だね」
「会いたいって言わなきゃ会わないし私」
「そうなんだ...冷め切ってる」
「周り程熱くなれないだけ」
大路は冷たくそう言った。
しかし伊達はそんな大路の冷たい反応に対して、全く逆のテンションで応じる。
「じゃあいつか会えると良いね、熱くなれそうな人に」
「多分会わないと思うけど」
大路がここまでで良いというので、伊達とはそこで別れた。
「バイバイ」
「うん、また」
大路の遠くなる背中を見つめていると、伊達は大路を呼び止めた。
「大路さん!」
「................?」
「彼氏さんには笑ってあげたほうがいい」
「...余計なお世話」
大路はピッと中指を立て、舌を出すとそのまま振り返ってまた歩き出してしまい、伊達はそんな大路の態度を鼻で笑った。




