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共有結合  作者: 粥
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2、恋の素晴らしさとは

「あれれ〜先輩じゃないですかぁ〜」

「げ...」


お昼休み、良二が自販機で缶コーヒーを買っていると理沙がニヤニヤしながら近寄ってきた。

良二は見るからに嫌そうな顔をする。


「相変わらず一人で暇そうですね」

「何がいけないんだよ。つか教室行ったら友達いるわ」

「先輩、私の前では強がらなくて良いんですよ?」

「やめろ諭すな違うから、ちゃんといる」


二人はしばらくの間誰もいない裏庭のベンチで談笑することにした。


「先輩って友達いるいる言う割に、見た事無いんですけどー」

「失礼な。いるぞ、DJっていう友達が」

「何ですかその面倒くさそうな名前の先輩は」

「DJは消しゴムで文字を消す時ついつい片手を耳に当ててしまう俺の楽しい友達だ。ちなみに本名は伊達(だて)くんだ」

「紹介だけでちょっとウザいですけどね」

「ただ紙を抑える手が耳を抑えているせいで、結果紙も一緒に動いて消せてないっていう弱点がある」

「狙ったらTKOですね」

「普通に消した方が早いのに、俺が見てる時は絶対やってくれるんだよ。俺その度爆笑」

「先輩が楽しそうでなによりです」

「ただ最近マジでDJにハマっているそうだ」

「ちゃんとオチつけて来るんですね伊達先輩」


くだらない話の中で良二が楽しくやっているようで安心する理沙。

理沙はこの間男子を振った話を良二にしてみた。


「そういえば先輩、私とこの間一緒にご飯食べたじゃないですか?」

「覚えてるぞ、後輩のくせに先輩を待たせつつ、しっかりカレーを味わいやがって」

「あの後、やっぱりクラスにいる男子に誰だと問い詰められましてね?」

「ほほぅ」

「胸張って言ってやりましたよ、彼氏だって」

「馬鹿じゃね」

「まぁそれは冗談として」


理沙はコホンッと咳払いして話を続ける。


「私って何でモテるんでしょう?」

「お、レアガチャコラボってる、引こ」

「先輩、どうしてだと思います?」

「いったっっ!!!!」


話を聞いてくれない良二の内腿をノールックでつねると悲鳴を上げた。


「どうしてだと、思います?」

「うわ何こいつ何でこんな圧強いの先輩に対して...。知らねーよほんで、丁度いい可愛さだからじゃね?」

「何ですか丁度良いって」

「従姉妹の姉ちゃんが言ってた、『超可愛い女子は逆にモテない、高嶺の花っぽくて手が出せない。でも丁度良い塩梅の女子は手が出しやすいお手頃品だからモテる。それはもう練磨の如く』って」

「それは私がお手頃品って言ってるんです?」

「あれ?殺し屋ですか?」


殺し屋ばりの眼光で睨んできたので思わず確認を取る良二。

気を取り直してちゃんと答えてあげた。


「いやぁまぁ実際うちの学校の偏差値レベルはかなり高いって噂だぞ。中学でちょっと羨ましがられた」

「へぇ〜そうなんですか?」

「モデルいるしな、うちのクラスに。将来は女優を目指すんだとよ。名前は須賀(すが)

「へぇ〜先輩はその人のストーカーだと」

「一言でも言ったか?そんな事」

「モデルか〜名前なんていうんです?それか私より可愛いですか?」

「お前より怖くないって点では可愛い」

「意味分かんないです、顔の点で喋ってください」

「ふざけたら怒られるんだな、よし理解した。お前より可愛い!痛い!!」


次は平手打ちを食らった良二は、叩かれた頰を抑えながら理沙を睨む。


「先輩、教えて差し上げますね。こういう時、女子は例え相手が誰であろうと自分が可愛いと言って欲しいものなんです」

「ごめん嘘がつけないタチで」

「そうですか、マイナス点ですよ今ので更に」

「女子ってロクでもねぇ。俺女子と喋んの辞めよかな」


遠く物思いにふけながら、良二は悟りを開きそうになっていた。


「へぇ、てか告白断ったんだ。お前みたいなやつってとりあえず誰でもツバつけとく感じするけど」

「ものっそい偏見ですねー」

「良いね青春、恋せよ若人たちよ」

「先輩は彼女とか居ないんですか?」

「あ?居ないけど」

「でしょうね」

「何だお前」

「先輩のタイプとかってあるんですか?」

「草タイプ」

「真面目にお願いします」

「なして後輩と真面目に自分の女子のタイプを話さないかんのじゃ」

「後学のために知っておきたいんですよ。先輩の好きそうな人紹介出来るかもしれないじゃないですか」

「後輩の紹介ってロクなもんじゃねぇだろ。それに今はいらねー」

「何でですか?良いって言ったじゃないですか」

「俺は自分のことで忙しーの」


そう言って良二は缶コーヒーを鉄製のゴミ箱に投げ入れる。缶は綺麗な弧を描いて吸い込まれるように入っていった。

よしっと小さくガッツポーズをすると、ベンチから立ち上がり教室へ戻る。理沙もそれに着いて行くことにした。


「先輩、恋人は素晴らしいものですよ。辛い時側にいてくれたらどれだけ幸せか」

「みんなそう言うけど、俺辛いって思った事未だに無いから。あるとすればモンスターがどうしても狩れない時だけ」

「そんな時彼女がいてくれたら励ましてくれるかもしれませんよ?」

「励ますくらいならフレンドになって一緒に狩ろうや」

「先輩って世間の女子から見たらかなりつまんない男ですね...」

「自覚してるから大目に見ろよ」

「まぁでも...」


理沙は自分の教室の方が早く着くので、途中の階で足を止める。そして良二が振り向いたところで続きを話した。


「世間の女子にとってつまらなくても、私にとってはとても楽しい人なので誇って良いですよ」

「ふっ...そか」

「................っ!?」


良二は優しく笑って理沙にそう言った。理沙はまた悪態を吐くだろうと構えていたが、思いもよらない返事をされて喫驚した。

良二はすぐにいつものポーカーフェイスに戻り、中指を立てて階段を登っていった。


(先輩の笑顔初めて見たかも...。あんな風に笑うんだ)


理沙はヤケに良二の笑顔が頭から離れずにいた。


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