18、伊達くんの話
修正致しました。
理沙がいない時代の話で理沙の話を出してしまっていたので、混乱させてしまい大変申し訳ありませんでした。
時間は良二達が一年生の頃まで遡る。
伊達の席は窓際の席の一番後ろから二番目の席で、その後ろの席の大路という女子とよく話していた。
顔は綺麗系だがあまりクラスの人と話してる所を見た事がない。話しかければ応じてくれるが、自分からいかない。そんな感じの女子。
そんな大路さんは最近はまっている漫画があり、スマホの無料漫画アプリで何度も読み返したり、他の作品を探したりと一人の趣味を楽しんでいる。
そんな中話しかけると怒るのでみんなあまり話しかけようとしないのだが、伊達はそんな事お構いなしに話しかけては、よく漫画を読む手を止めさせている。
「大路さん、今日日直。一緒に職員室行こ」
「あー...そっか」
二人は一緒に職員室へ向かう。
「大路さん、いつも眠そう。どうして?」
「バイト」
「何時までやってるの」
「ちょっと遠い所だから帰りが遅くなるだけ」
「何でそんなバイトしてるの」
「欲しい物があるからですけど」
「何欲しいものって」
「教えない」
大路はあまり笑わない、それも一人になる要因の一つでは?と伊達は考えているが、別に一人になっている事に劣等感や孤独感を感じている訳ではなさそうなので特に指摘したりしない。
「大路さん、友達ちゃんといる?」
「んー...まぁ一応いるんじゃない?」
「何でそんな反応?自信持ってよ」
「だって確認取れてないし」
「そんな曖昧なんだ」
「でも、俺ら友達だよね?なんて羽島くんに聞かないでしょ」
「聞かないなぁ...」
「ほら」
大路にも友達がいる事に何となく安心しながら、伊達は教室に戻って来た。
「校外学習、もうすぐだね」
「あぁ...アレね」
「どこ行くか決めた?」
「まぁね」
「どこ行くの?」
「寺とか、後は適当に歩いて気になった店とか行って...って感じ」
「あまり忙しくなくて良いね」
「計画立てるの苦手だから」
「行き当たりばったり?僕と一緒だ」
「あっそ」
大路は興味なさそうに相槌を打った。
しばらくすると良二が登校してきたので、良二と話すことにして大路を一人にする。
「良二おはよ」
「おー。大路さんと喋ってたのか?」
「うん」
「あんま男子と喋らないイメージだけど、お前とは話すんだな」
「話しかければ話してくれるよ。自分から来ないだけ」
「ふーん」
休み時間、大路が教室の隅っこにある自分の席で一人、コンビニのおにぎりを頬張っていると伊達がやって来て、一緒に食べ始めた。
「一緒に食べて良い?」
「既にお弁当広げといてよく言う。まぁ良いけど」
「ありがと」
「羽島くんと食べれば良いのに」
「良二は食堂で後輩と食べてる」
「へぇ、羽島くん部活入ってたんだ」
「良二は部活入ってないよ。そういう後輩じゃなく、ただ単に仲良くなった後輩」
「ふーん、私には縁のない話だ」
ご飯を食べるのが早かった大路は、既に食べ終わり、スマホで漫画を読み始める。
「今は何にハマってるの?」
「バトルもの」
「へぇ、どんな話?」
「攫われた恋人を助ける的な」
「王道だね」
「でも一番シンプルで良い」
「複雑過ぎてもだよね」
基本的に伊達から大路に話しかけ、大路から伊達に話しかける事は少ない。とてもレアなケースだ。
しかし、話しかければしっかり応じてはくれる。積極的に一人になりたいわけではないらしい。
「校外学習さ、もしどこかで会ったら一緒に回ろうよ」
「何で」
「楽しそう。こういう時くらいしか大路さんの色々知れる事ないだろうし」
「はぁ...まぁ会えたらね」
「やた〜」
「そんな事知ってどうするの?」
「大路さんと友達になりたい。いっぱい喋れて、時には楽しい話、感動した話をたくさんしたい」
「意味分かんないけど、頑張ってね」
大路はそう言って立ち上がり、教室から出て行ってしまった。
一人になった伊達に、周りで食べていた女子達が話しかける。
「伊達くんやめときなよ〜大路さんは一人が好きなんだよきっと」
「そうなのかな」
「じゃなきゃ伊達くんをそんな無下にしないでしょ」
「でも興味が出てきちゃったからなぁ」
「興味?」
「知らない事を放っておくとモヤモヤする、もしかしたら大路さんは凄い面白い人かもしれない。それを卒業した後とか、どころか一生知らないままかもしれないと思うと、何か損した気分になる」
「でもすっごい嫌な人かも知れないよ?」
「それもまた一興」
伊達はそう言って止まっていた昼食を食べる手を動かし始めた。
放課後、伊達が帰っていると前に大路の後ろ姿を見つけた。もちろん伊達は何の躊躇いもなく話しかける。
「大路さん、一人?一緒に帰ろ」
「おぉ」
大路はイヤホンをしていたが、外して並んで歩いてくれた。
「で、良二が川に飛び込んで背泳ぎしてたらさ...」
「へー」
伊達の話を相変わらず適当に聞いていた大路。すると、伊達が道端で一匹の猫を見つけた。
「あ、センゴクだ」
「誰センゴ.........っ!?」
伊達がそう言って、大路が伊達の見た方向に目を向けるとそこには一匹の猫がいた。
すると大路はビンっと背筋が伸び、目を見開いた。
「びっくりした。猫嫌い?」
「まさか...その逆」
「あ、大好きな方の反応ね」
「その猫は知り合い?」
「んーまぁこの間一緒に遊んだくらい。名前は勝手にセンゴクと名付けました」
そう言って伊達は猫をヒョイっと持ち上げ、大路の顔の前に持ってくる。すると、大路の顔が今まで見せていた仏頂面の無表情をふにゃっふにゃにさせて、甘ったるい声を出した。
「あにゃぁ〜可愛ぃねぇ〜!」
「にゃあ...」
大路のあまりの愛の大きさに、若干猫が引いている。
それを見ていた伊達も猫を見つけて紹介したのは間違いだったのではと考えるレベル。
「はぁ...癒し」
「そ、そう...」
「にゃあ」
しばらく好きにさせて、伊達は猫を下に下ろした。しかし、まだ構って欲しいのか伊達の足に頬擦りをして逃げていかない。
「随分懐いてるね」
「うん、動物に好かれやすいのかもね」
「良いなぁ...」
「好かれにくいの?」
「寄っては来ない」
「なるほど、センゴクは人懐っこいから撫でて大丈夫」
そう言われて大路はゆっくり猫に手を伸ばす。一瞬警戒した感じで大路の方を見たが、優しく撫でてくる大路の手を気に入ったのか大路の方に寄って行き、頬擦りをしていく。
「お、おぉ...」
「懐いたね」
「凄い...可愛ぃ」
猫と触れ合えて楽しそうな大路を見て伊達は一人満足していた。
しばらくしてまた二人は帰り道を二人で歩き始め、分かれ道に差し掛かって二人はそこで別れることになった。
「じゃあまた明日」
「うん」
そっけなくそう言って大路は返事をする。だが、まだその場に立ち、ずっと伊達の方を見つめている。そして、ようやく口を開き先程猫と触れ合わせてくれた事についてお礼をしてきた。
「ねぇ」
「ん?」
「さっき、猫触らせてくれてありがと」
「あ...うん」
「それだけ、じゃあね」
「うん...」
先ほどまでの猫の前での態度が嘘のように淡々とお礼を伝え、帰って行った。
(クールだなぁ)
伊達もそんな大路の背中を見送ると、自分も家へと足を進めた。




