17、テスト終わり
いよいよ寒さが頂天に達したかという12月、良二達の学校は今日で期末テストを終えた。
テストの日はどこの学校も大抵午前中には終わってしまう。良二の学校も例外ではなく、テスト週間を終えた学生達は我先にと帰宅するか制服そのまま街中へ出て遊び倒すかのどちらか。
故に学校にはほとんど人は居残っておらず、教室には良二一人が残っていた。
因みに伊達は用事があると言って先に帰った。
「おやまぁ一人で寂しそうな先輩がいますね。抱きついてしまいましょう」
「お前が一人で待ってろって連絡寄越したんだろーが」
いつの間にか教室に入って来ていた理沙に、後ろから抱き付かれても特に何の反応も見せない良二。しかし前までなら迷惑そうにしていたが今は好きにさせてくれるので、これはこれで今は満足していた。
「お待たせしてすみません、それでは帰りましょう」
「分かった、分かったから離れろ」
未だにくっ付いて歩いて行こうとする理沙を引っぺがして、良二は自転車を取りに行った。
そのまま二人乗りで寒い風を受けながら二人で帰る。
「寒いですか?先輩」
「お前は寒くないだろうな。俺という風除けがいるんだから」
「先輩はいつも私を守ってくれるんですね」
「守る気はさらさら無い。むしろ同じ苦痛を味わって欲しい、あーマジさみぃ」
「もう直ぐ家です、頑張ってくださいな」
「俺の家な」
良二は理沙を乗せながら家に着くと、部屋のストーブを付けて暖を取る。
「とても寒くなって来ましたね。二人乗りも考えものです」
「別に乗らなきゃいけないわけじゃないだろーが。道路交通法違反だ」
「固いこと言いっこなしですよ」
「ダメだろそれは」
良二は制服のままベッドに倒れ込むと、理沙はその直ぐそばにベッドを背もたれに床に座る。
良二は目の前の理沙の髪を弄り始め、理沙はそれに少し驚きつつ好きにさせた。
「どうしたんですか?」
「ん?お前の髪綺麗だから、弄りたくなった」
「そ…ソデスカ」
理沙はこれほど直球で良二に褒められた事がないので、嬉しさと喜びが一緒に来た。
「私の髪…好き…ですか??」
「んー?まぁ嫌いじゃない」
「煮え切らないですね、そこは素直に好きでいいじゃないですか」
「じゃあ、好き」
理沙は振り返りつつそう言ったので、油断し切った良二の色っぽい顔とか、振り返った時に頬に当たった大きく骨張った手の暖かさとか、良二の良い匂いとか、全ての感覚器官が良二を捕らえる。
「ん?」
「先輩、ちぅして良いですか」
「やだ」
「どして」
「はずい」
「彼女なのに…」
「…あと、多分抑えらんない」
「???」
「ここでキスしたら、多分お前の事食べると思う。そんなの今は嫌だ」
「須賀先輩だったらどうしてました?」
「どうもしない。言ったろ、全部あいつからで、俺が能動的にそういう気分にはならないって」
「納得いきません」
「まぁ、とにかく今はこれが精一杯」
良二はそう言って理沙の頬にキスをした。
優しく、一瞬ではなく、唇で理沙の頬の暖かさを感じるように。
「まだ須賀先輩とシてるんですか?」
「してない。そもそもそんな頻回でヤらねー」
「先輩、先輩が面倒臭いって思う事言っても良いですか?」
「もう面倒な雰囲気を察してる」
「須賀先輩との関係をただのお友達にして欲しいです…。でもこれは私と付き合う前どころか、私と知り合う前からの関係なので、無理にとは言いません。須賀先輩のストレス解消法で、お互いに気持ちが無いのは分かってるんですけど…」
良二は理沙の願いを聞いて少し笑った。
「ふっ、お前が気ぃ使ってんのすげー変な感じ」
「何ですかそれ…。私だって気ぐらい…うむっ?」
良二は理沙の柔らかい頬を指で優しく摘んだ。
「気なんて使うなお前らしくねー。言ってみ?隠さずに」
「…せっかく良い彼女になろうと思ったのに」
理沙は摘まんでくる良二の手を離し、口元に持ってきて優しくキスをする。
「先輩、先輩の全部が欲しいです。心も体も全部」
「ふーん」
「ふーんって…反応薄過ぎませんか」
「ま、良いんじゃねーの、お前らしくて。須賀との関係は今度話し合っとくよ」
「ありがとうございます」
良二は理沙の頭をワシャワシャ撫でた後、仰向けでベッドの上に寝転がり直した。その顔は何だか満足そうだった。
すると、家のインターホンが鳴ったので、出てみると、伊達がいた。
「あれ?何してんだDJ」
「用事が終わったから遊ぼうかと思ったんだけど…」
「あ、伊達先輩だ〜」
「邪魔そうだね」
「んなことねぇよ」
「三人で遊びましょう」
先ほどの二人きりとの空気から一転して、三人で据え置きのテレビゲームをする事になった。
「君たち一応付き合ってるんだよね?僕邪魔じゃない?」
「邪魔じゃないな」
「邪魔じゃないですね。あ、先輩甲羅そっち行きました」
「お前が投げたやつだろーが!」
「あれ?これ逆走してる?」
各々一位を目指した結果、一位はコンピューターに獲られてしまった。
ゲームを散々遊びまくった後、夕飯を食べる時間になり、せっかく三人揃ったということで、良二の家ではなく外でご飯を食べることにした。
「もんじゃ焼き食いたい」
「あ、良いですね」
「いつも良二と二人で行く店があるし、そこ行こう」
三人でもんじゃを摘んでいると、伊達から衝撃的な話を切り出された。
「あのさ、僕好きな人できた」
「はっ!?」
「ほう」
二人は伊達の話に予想通り喫驚した。




