16、理由を探す
まだ辛そうな良二のそばに座り、心配そうに見つめる理沙。
時刻は20時を回ろうとしていた。
「お前、そろそろ帰れよ」
「先輩が辛そうなので帰りませんよ」
「こんなん放っておけば治るって…」
「そりゃいつかは治りますけど、早く治るに越したことは無いじゃないですか」
「学校サボれるやっほー」
「セコいですね」
理沙はカバンに入っている小説を良二の横で読んで時間を潰す。
本のページを捲る音とたまに家の前を通る車の音だけが耳に入ってくる。
すると、良二が突然話を始めた。
「今でこそ、誰も家にいない事に疑問とか、寂寥感っていうのは無くなったんだけどさ」
「……………」
「なんか久しぶりに家に誰か来た事で、久々にそういうの感じそう」
「怖いですか?そう感じる事が」
「怖い…?怖いのかな、俺」
「怖いなら、ずっといてあげましょうか?」
「ずっとは無理だろ」
「そうですかねぇ」
理沙は本を閉じて良二の話に集中した。しかし良二の方を向かず、良二も理沙の方を向かずに天井を見つめる。
「先輩覚えてますか?私の胸を先輩が揉んだときの話」
「揉んではない」
「あの時私、先輩の事何とも思ってなかったから、あんなに動じずにいれました。でも今は…結構動じるかも知れません…」
「変な告白」
「どうぞ笑って下さい」
「笑えねーし、笑わねーよ」
良二はそばにあった理沙の頭を優しく撫でる。理沙は驚きつつ抵抗せず、気持ち良さそうにその手を受け入れる。
「お前は良い奴だな」
「何ですか急に」
「俺さぁ、後輩つか年下苦手だったんだ」
「そうだったんですか?」
「でもお前は…違う気がする。自転車直してくれたお前も、一緒にスマホゲームしてるお前も、今こうして看病してくれてるお前も、苦手な年下に変わりないのに、受け入れる事が出来てしまっているのは、お前だからだと思ったんだ」
「……………」
「お前はさっき曲がりなりにも俺に好きだと言ってくれたが、正直俺はまだお前を好きと堂々と言える気がしない」
「そう…ですか」
良二は理沙の頭から手を離し、気怠い体を起こす。理沙もその音に気付き後ろを振り向き、良二と目線を合わせる。
「俺という人間は誰かを好きになるにも理由が欲しい奴なんだ。面倒な人間でごめんな」
「そんな先輩だと分かっていますよ」
良二は理沙の柔らかな頬に手を添える。撫でて、おでことおでこを合わせると、理沙も嬉しそうに微笑む。
「ただこれだけは言える、お前が今日俺にしてくれた事を他の奴にされたとすると、俺は多分不機嫌になるんだ」
「はい…」
「やり場の無い怒りを、きっとお前にぶつけてまた喧嘩する事になる。それは…嫌なんだ」
「はい、それは私も嫌です」
「もう少し待っててくれ、ちゃんと言葉にするから」
「はい、いくらでも、いつ何時迄も先輩の返事を待ちましょう。ちゃんと聞けるように、近くにいましょう」
「ん、頼む」
良二は理沙にキスをしようとしたが、理沙が先にチュッと良二の唇にキスをした。
「そうだった…お前が想い通りになった時の方が少なかった…」
「えへへ、甘いですね先輩」
「然るべき所は譲れよお前」
「良いですよ、それではとりあえず寝てください。風邪を治しましょう」
「ゲームがしたいです」
「風邪を治してからです」
理沙と良二は最後はいつもの様に楽しく会話をした。良二は安心した様に眠り、理沙もその顔を眺めて満足してから眠りについた。
短めですね。
長らく書いてないなぁと思っていたらかなり経っていた様ですね。
読んで頂ければ二人はまだ付き合ってはいない事は分かりましょう。これから色々な話を書いていきます。
やる事が多くて、なかなか更新出来ないかも知れませんが、耐えて楽しんで頂ければと思います。




