15 風邪引いた
夏も終わった秋、この周期は気温の変動も多少激しく体調を崩しやすい風潮にある。
そして良二はその風潮にしっかり当てはまり、部屋のベッドに倒れていた。
「機能窓開けっ放しにして寝たから…くそぅ」
そんな事をボヤきながら熱を引かす事に全力を注いでいた。
一方その頃、理沙の方は誰から良二が風邪で倒れた事を知って心配している所だった。
「え、今日先輩休みなんですか?」
「風邪引いたらしい。今朝連絡があった」
「大丈夫なんですか?」
「さぁ?」
「心配です…」
「そんなに心配ならお見舞いでも行ってみれば?家知ってるんでしょ」
「知ってますけど…いきなり来られて迷惑じゃないですか?」
「良二は優しいから、心配して来てくれた人を拒む様な人じゃないよ。知ってるでしょ?」
「そう…ですね」
理沙は今日の放課後、良二の家に寄ってお見舞いに行く事にした。
学校が終わってすぐに帰り支度を済ませて、理沙は学校を飛び出す。途中一緒に帰ろうと誘ってくる友達もいたが、今日は無理と呆気なく断った。
(あ、連絡してない)
理沙はすぐに携帯を取り出して良二に連絡を入れようとしたが踏みとどまった。
(もし仮に連絡なんてしたら、来るなとか言われそう…)
理沙はあえて言わずにお見舞い品だけでも受け取って貰おう事にした。
良二の家に着いたら、一応連絡を入れる。するとすぐに返信が返って来て、中に入ってくる様に頼まれた。
「お邪魔しまーす」
「おう、悪いな」
「意外です、家に入れてくれた事も、意外に元気そうなのも」
「あーDJが入れてやれって来たからさ、なんか心配してくれてありがとな。ところでお前、いつの間に分身の術を覚えたんだな」
「今すぐベッドに行きましょう先輩」
「やだ大胆」
「ツッコミませんよ」
容態がかなり悪い事に気付いた理沙は、良二をさっさとベッドに放り込んだ。
「温度計どこです?熱測りましょう」
「大したことねーって」
「声のトーンとか何でそんな平常時と変わらないんですか。一瞬治ってるのかと思いました」
良二は熱が出ても辛そうな顔も、声のトーンも、気怠げな感じが出ておらず、平常時と全く区別がつかない。
理沙は測り終えて音を鳴らす温度計を見るとそこそこの熱があったので安静にする様に伝える。
「先輩、洒落にならない数値叩き出したので絶対動かないで下さいね」
「よっしゃあ」
「褒めてませんからね。もしかして、私が来る前にお風呂とか入ってませんよね?汗で気持ち悪いとかで」
「お前探偵向いてるよ」
「容易に想像出来ましたよ…。お腹空いてますか?うどんを一応買って来たんですけど」
「食べたい」
「じゃあキッチン借りても良いですか?」
「おー」
理沙は良二のために買ってきた材料でうどんを作る。
静かなアパートの部屋のリビングに包丁で野菜を刻む音、お湯が沸騰してうどんが煮えていく音が響いていく。
良二はベッドの中でその音を聞いているうちき眠くなって来てしまった。
しかし、目を閉じようとしたところで理沙がうどんを持ってやって来たので、眠ることは叶わなかった。
「先輩、うどん出来ました。食べて下さい」
「んぅ…」
「もしかして眠いです?食べるのやめますか?」
「いや…食べる」
「起きられますか?」
「うん」
「うんって言うのやめて下さい。可愛いので」
良二はだんだんと頭が回らなくなって、ボーッとしてきていた。
意識半分の中うどんを食べ終えると、座っているのも辛くなって来たのかすぐにベッドに寝転んだ。
「先輩、今日は親御さんは?」
「いない。基本的に」
「じゃあ先輩今日の夜は一人ですか?」
「今日どころか明日もかもな」
「そんなに忙しいんですね」
「まぁな。もう慣れたけど」
良二が風邪を引いても普通に過ごそうとする理由が何となく母親が忙しく家に一人ぼっちである事と繋がっている気がした。
「先輩、今日泊まっても良いですか?」
「は?なんで」
「先輩どうせ私が帰ったら普通に起き上がっていつも通り過ごそうとするでしょう?そんなんじゃ治るものも治りません。私が見張ってますので」
「やめろよ。後輩なんかに面倒見られたくねーっつの」
「ダメです、見張ってます。なので、…早く治して下さい」
理沙は良二の前髪を退かしておでこに手を当てる。
「冷たいですか?」
「……………」
理沙が優しく笑いかけながらそう聞くと、冷たくて気持ち良かったのか、良二はスッと眠りについた。
理沙は今日は友達の家に泊まってくると、母親に連絡を入れた。




