12、ナンパよりSNS使った方が全然簡単に釣れるらしい
文化祭が終わったその日は、片付けなどのおかげで学校を出るのが18時ごろになった。
良二はDJこと伊達と一緒に二人だけで打ち上げすることになっていた。のだが、
「楽しみね」
「何でお前まで一緒に来るんだおい」
須賀も一緒にやって来ていた。
「何でも何も、一緒に文化祭を楽しんだ仲じゃない」
「嘘つけお前撮影でどっか行ってたじゃん」
「細かいことは無しにして、どこ行こうとしてるの?二人とも」
「鉄板焼き」
「へぇ〜良いわね。私も行きたい」
「顔刺されてしまえ」
「そしたらあなたをその場で抱きしめてスキャンダル起こしてやるわ」
「おや、こんな所にクズが」
「良いところ知ってるわ、そこ行きましょ」
「お前の金銭感覚おかしいから、お前オススメの店は行きたくないです」
「いや私だって普通のお店行くわよ。とりあえず、2000あれば大丈夫よ」
「リーズナブル〜」
須賀に連れられて街中にあるビルの中の鉄板焼き屋にやって来た。
壁に垂れ下がっているメニュー表を見ると、須賀の言っていた通り確かにメニュー自体は安かった。そのおかげか、周りに若者が多い。
「ここはどちらかというとお酒の値段が高いの。夜に来る大人のお客さんを狙ってるみたい」
「へぇ」
「夜遅くに来ると、サラリーマンが多いからあまり来ないのだけど」
「何だって良いからさっさと食おうぜ」
須賀の説明を切って、良二は伊達と一緒にメニューを選んでいく。と言っても、よく二人でご飯を食べに行ったりしているので、大概何を食べたいか分かり、すぐに頼むものが決まった。
「あなたたちって、いつも一緒に色々遊びに行ってるの?」
「おう」
「うん」
「仲良いのね、どちらかが女だったら付き合ってそう」
「どーだろな、今と変わんないかも」
「良二は楽しい奴なのは変わらなそう」
「女になったからって俺のギャグセンは変わらねぇからな」
「面白いわね」
「なら笑ってくんね」
良二たちがもんじゃやお好み焼きを食べ始めてから2時間が経ったところで良二たちの打ち上げはお開きになった。
良二たちが店から出て駅に向かっている途中、理沙が駅前でナンパされてるのが見えた。
「あら、あの子確かあなたの友達じゃない」
「俺らの後輩だ、俺の友達じゃない」
「助けてあげなさいよ。私顔差されたくない」
「めんどくさ...」
良二はそう言いながらも理沙を助けに行った。一応伊達もその後ろからついて行く。
「ねぇ良いでしょ?」
「しつこいキモいウザい臭いワキガ」
「言い過ぎだろお前...」
理沙のありえない数の暴言を聞いたら、逆に良二が気を遣ってしまった。
急に良二に背後から話しかけられ、理沙は驚いた表情で良二の顔を見る。
「口が悪くてすんませんね、うちの妹が」
「え...」
「全然似てねーじゃん。嘘つくなよ」
「バレたー」
「当たり前でしょ。本当に似てないもん」
「あ、伊達先輩もいた」
理沙の両脇に伊達と良二が立って、三人で男を見つめる。
「俺の妹に手ぇ出してんじゃねーよぅ」
「だから違うでしょって。でも、大事な後輩なんだ、嫌がる事はしないで欲しい」
「あと息も臭い」
「もうやめてよぉ!!」
男は泣きながらどこか走り去ってしまった。
「確かにニンニク直喰いしたぐらい臭った」
「あの顔でよく私をナンパしようと思ったと思いません?」
「思った思ったうるさいと思う」
「やめてその会話、頭痛くなる」
男を追い払って理沙を回収した後、後ろで待っていた須賀と合流して駅まで送ることにした。
「初めまして、須賀 雪よ」
「初めまして、九条 理沙です」
「大変だったわね?平気?」
「先輩たちが助けてくれたので、特に何もありません」
「そう、ああいうのは無視して歩き続けた方がいいわよ」
「はい」
理沙は初めて須賀に会うので緊張しているのか、いつも良二に接している態度ではない。
良二と理沙は同じ駅なので、須賀と伊達よりも先に家の最寄り駅に着き、一緒に帰った。
「お前、何であんなとこいたの?」
「今日打ち上げがあって。先輩たちと同じ駅のところでやったみたいですね」
「なるほど。で、帰りがけにナンパされたと」
「制服着てないですしね〜されると思ってましたけど、まさか本当にされるとは...」
「されるって分かってんならさっさと帰れやって話だけどな」
「私なりに早く帰ったんですよ。というか何だったら抜け出して来たんですからね」
「なして?」
「クラスの男子が言い寄って来たっていうか...」
「はぁ〜ん、よくオモテになりなさる」
「普通ああいう楽しい場で来ますか?考えて欲しいってもんですよ」
「まぁ確かにちょっとモラルが無いかもな」
「TPOを守って欲しいですね」
「こんな話に出されるその言葉が可哀想」
二人で話しているうちに、すぐに理沙の家に着いてしまった。
しかし理沙は家に入らずもう少し良二と話したい旨を伝える。
「まだ先輩と話してたいんですけど」
「電話かメールじゃダメなのか」
「顔見て話したいじゃないですか」
「…じゃあちょっと歩くか」
二人は近くにある少し大きめの神社まで歩くことにした。
昼は観光や散歩のお年寄りなどでたくさんの道も、夜は誰も通らないので静かだ。
静かで暗い道を二人きりで歩く、道の先は暗くてよく見えず、まるで異世界へ行ってしまいそうな気分になる。
「先輩、そういえば先程助けて頂いたお礼、まだしてませんでしたね」
「ん?あぁ…アレな。別に良いけどな」
「そうですねぇ、何か奢りましょうか」
「後輩から奢られるのはなぁ…」
「私から貴重なキスというのはどうでしょう?」
「マジでどうなの?」
「嫌ですか?口じゃなくほっぺにですけど」
「やめとけ、わざわざそんな体張らなくていい」
「むぅ…」
理沙は指を顎に当てて良二へのお礼を考える。
そんな理沙を横目で見ながら、良二は一つ、ある頼み事をした。
「お礼っていうなら、今度お前が言ってる喫茶店に連れて行ってくれ」
「え、そんなので良いんですか?あ…じゃあそこでご馳走させて下さい」
「いや自分で払うわ。連れて行ってくれるだけで良い」
「そうですかぁ」
理沙と良二がそんな話をしているうちに神社についた。もちろんだが誰もいない。
ベンチがあったので一先ずそこに座って談笑した。
「須賀先輩も一緒に打ち上げしたんですか?」
「ああ、何か勝手に入って来てな」
「シたんですか?」
「DJがいるだろ…」
「もしいなかったら?」
「さぁな、あいつの機嫌次第な所があるし」
「先輩から誘う事ってないんですか?」
「無いな。初めっから全部あいつ任せだし」
「…へぇ」
理沙は頷きながら納得した様な表情をした。意外だったのか、良二から須賀を誘ったことがない事を知って驚いている様にも見えた。
「意外か?」
「まぁその…はい」
「ふっ...」
良二は鼻で笑いベンチの背もたれに寄り掛かる。しばらく黙り込み、会話が続かなくなった所で二人は帰ることにした。
理沙の家に先に着き、理沙の家の前で別れる。
「では先輩、また」
「ん、じゃな」
良二が背中を見せてさっさと帰ろうとしたところで、理沙は良二を呼び止めながら小走りで近付いた。
「先輩」
「あ?」
「ちゅっ」
理沙は良二の頬にキスをして、楽しそうに後退りした。
「えへへ〜」
「このお礼は要らないっつったろ」
「これはお礼じゃないですよ〜」
「じゃあ何だ」
「秘密です」
理沙はそう言って家の中へ入って行ってしまった。良二は一人取り残され、一つため息を吐いてから家路を歩き始めた。
何だかんだサブタイトル考えるのが一番悩んでる気がします




