11、文化祭よりもその後の打ち上げが楽しい
文化祭が始まり、早くも二日目の日曜日になった。日曜日ともなれば、生徒の親、学外の友人を招き、学校は一気に盛り上がる。
良二と伊達は、そんな学校の様子を渡り廊下から眺めていた。
「おーおー、人すげー」
「いっぱいだね」
「DJは誰か友達呼んだのか?」
「んーん、少し遠いし暇じゃなさそうだから」
「そか、まぁかくいう俺も誘ってないんだけどな」
「後輩の女の子...えっと、九条さん?だっけ。回ったりしないの?」
「一応これから回るつもり。たかられそうだ...」
「良二は面倒見いいもんね」
そんな話をしていると、理沙が良二の元へ走ってやって来た。状況から察するに、かなり探し回ったような感じだ。
「先輩!こんな所にいた」
「あれ、何?探してたの?」
「もぉ、あちこち走り回って探しましたよ。クラスにはいないし、体育館まで探しに行って、ようやく人気の無い場所にいそうだと勘付いたら、やっぱりここにいましたね」
「それはお疲れさん」
「携帯で連絡すれば良かったのに」
「あ、伊達先輩こんにちは。そうなんですけど、連絡先知らなくて」
「交換してなかったんだ?」
「学校でしか話さねーから良いかなと」
「この際なんで交換しましょ。伊達先輩も」
「お前早起き?」
「私ですか?まぁ朝バタバタしたくないので...」
「じゃあ交換する」
「先輩、あわよくば私にモーニングコールさせる気ですね」
「休めない授業とかあったら頼むかもな」
「なんて不純な...。まぁ良いですけど」
良二は、理沙と連絡先を交換した後文化祭の出し物たちを回っていく。
廊下を歩いている間、理沙の知り合いらしき人が何人か話しかけて来たり、ヒソヒソこちらをチラ見されながら目的の場所を目指す。
「なぁ、すっげー注目される」
「それだけ私が男の人と一緒に歩く事が珍しいってことですよ」
「今までの行いの悪さが出てる訳か」
「悪いか...?」
「人気の無いところ行きたい」
「やだ先輩大胆」
「あら、うざい」
みんなに注目されながら、着いたのは良二のクラスのお化け屋敷だった。
「えー...ここ?」
「はい、先輩の頑張りを見たくて」
「大した事無いけどな」
「まぁまぁ、私自身お化け屋敷好きですし」
「お寿司」
「は?」
「ごめんちょっと続けて言ってみたかった」
何かよく分からない事を言った後、良二と理沙はお化け屋敷へ入っていった。
「お〜寒い」
「暑いわけないだろ」
「いやまぁそうですけど...。でも確かにちょっと怖いですね、雰囲気とか」
「なんか拘ってたからな」
「先輩はどこら辺を担当したんですか?」
「今から通るところ」
良二がそう言うと、障子のオブジェから手がいくつも勢いよく出て来た。
「わぁ!」
「うぉっ」
理沙は思ったより怖かったらしく、仰け反ったところで良二に支えられた。
「大丈夫か?」
「はい、先輩のおかげで、ありがとうございます」
「お前、得意って言ってなかったか?」
「好きなだけで、得意ではないのですよ」
「ややこしい奴」
良二は理沙をしっかり立たせてまた歩き出した。
「てっきり先輩がお化け役だと思いました」
「お化け役やってたらお前とこうして回れてないがな」
「まぁそれはそうですけど、先輩がお化け役の時にまた来ますよ」
「もう俺がお化け役をやる事はねーよ」
「来年があるじゃないですか」
「三年は有志だ、俺がすすんでこんな事すると思うか?」
「それもそうですね。文化祭自体自由参加ですか?」
「もちろんな」
「じゃあ、先輩と回れるのは今日が最後なんですか?」
「そうなるな」
暗いお化け屋敷の中を、明るくもない話をしながら進んでいく。
すると、理沙はそっと良二の手を握った。
怖くなったのか、寂しくなったのか、何も分からない。理沙でさえ、何故自分が今良二の手を握ったのか分からなかった。
しかし、何故か握らずにはいられなかったのである。
「................」
「................」
良二はしっかり握り返すわけでもなく、放そうと振り払うわけでもない。
理沙のしたいようにさせた。
そこからは二人、ずっと黙って歩き続け、もうすぐ出口というところで良二は理沙の手を放した。
見られて噂になる事を危惧したのだろう。と言ってもクラスメイトには見られていたかもしれないので今更な気もする。
「他回りたいところは?」
「あ...えっと...私のところ行きます...か?」
「あーいや、どうせロクなもんじゃなさそうだし、いいや」
「むっ、なんですかその言い草!」
「また噂されても困るしな。お前が男といるの珍しいんだろ」
「あ、そっか...先輩に迷惑かけちゃいますもんね」
良二があまりに何事も無かったかのように接するので、理沙も先ほどのことは忘れて接せられた。
「あ、そうだ。先輩、まだ時間ありますか?」
「ん、おう。つか、もう文化祭が終わるまで暇だな」
「では体育館に来てください。私後から行くので」
「は?」
「良いから良いから!」
「何なん...」
良二は理沙の言われた通り一人で体育館へ向かった。
すると、何か出し物が始まるのか生徒や先生がかなり集まっており、少し蒸し暑いくらいだった。良二は邪魔にならない様に端っこの壁に寄りかかって理沙を待った。
すると体育館は暗くなり、舞台にスポットライトが当たった。そこには一人の女子が立っており、マイクを持って放し始めた。
「それでは只今より、有志団体によるダンスが始まります。皆さま楽しんで見て行ってください!」
「えー...」
会場中のみんなが盛り上がっている中、良二だけは若干嫌そうに反応した。
理沙はこの有志ダンスに出ているみたいで、良二には是非見て欲しいとのことだった。
すると突然電話が鳴り、良二が画面を見ると『後輩』と出ていた。
『先輩、体育館来てますかー?』
「ああ、言われた通りな」
『良かったぁ、先輩に是非見て欲しくて』
「いつ出てくんのお前」
『そうやって私が出てくるタイミングで帰って来て、少しでも体育館から逃げようったって無駄ですよ。しっかり目を凝らして見ていて下さい』
「めんどくさ」
『私も先輩だけ見てますんで』
理沙は最後にそう言って電話を切った。
「お前が見てたって俺が見てなきゃ見られてる事も分かんねーだろが...」
良二は誰に言うでもなく独り言としてそう言った。
しばらくして有志の団体がたくさん出てきて、軽快な音楽と共にダンスを披露していく。
良二は何の感情も無しにじーっと見ているだけだった。何だったら虚空を見ていてダンスなんてこれっぽっちも見ていない。
すると、出てきた瞬間男子の声援が凄い奴がいた。何事かと良二がそちらに目を向けると、そこにいたのは理沙だった。
(人気だねぇ)
良二は呑気にそんな事を思っていると、バッチリ理沙と目があった。そこから理沙は良二だけを見つめて踊り始めた。
(そんな露骨に見ますかね...)
良二は少し恥ずかしそうにしながら、一応理沙の踊りを見てあげる。
踊っている時の理沙は、いつもの彼女と違って大人っぽいというか、垢抜けた美人に見えた。
有志活動が終わって、良二は理沙に体育館裏へ呼び出されたのでそれに応じてあげた。
「先輩っ!どうでした!?」
「え?おお、良かったんじゃね?」
「何ですか煮え切らないですね」
「だって俺ダンスとか知らないし」
「でもカッコ良かったとか、可愛かったとかあるでしょう?」
「あーなんか周りに奴らがおっぱいが揺れてエロいとか言ってたぞ」
「どーだって良いんですよ!そんな事は!先輩どう思いました?」
理沙は意地でも良二の感想が聞きたいらしく、良二に物理的にも精神的にも詰め寄っていく。
「分かった分かった、分かったから近付くな汗が付く」
「あぁ...すみません...」
「んーまぁ格好良かったよ」
「本当ですか?」
「おう」
「また来年も見たくなりましたか?」
「んー...お前が出てくるまで時間がかかるからなぁ。それまで待つのが来年の課題」
「えー...」
理沙は落胆して肩を落とす。
しかしすぐに顔を上げてニッコリ笑いながら、
「なら、来年は先輩の家に押しかけて私のダンスを見せてあげますよ」
「結構です」
「まぁまぁそう言わずに。あ、先輩喉乾いたので頑張った私にジュース奢ってください。あとアイス」
「アイスはマジ意味わからんティウス」
良二は文句を垂れながらも理沙にジュースとアイスを奢ってあげた。




