1、そして二人が出会うのです
いつ投稿出来るか分かりませんし、いつ飽きるかも分かりません。
ヒヤヒヤしながらお待ちください。
※続きますようにと作者本人が一番思っています。
「せんぱぁ〜い、食堂のカレー大盛り奢ってください」
「は?嫌なんですけど」
食堂の食券売り場前でそんな会話を繰り広げているのは高校一年生の九条 理沙と二年の羽島 良二だった。
二人が出会ったのはつい最近で、お互い帰り道が一緒だった。その帰り道の途中、自転車通学である良二の自転車のチェーンが絡まって立ち往生しているところに、理沙が助けてあげたところで知り合った。
以来学校で理沙から話しかける様になって、友達とも言えない「the 先輩後輩関係」が出来上がっている。
「先輩って、どしていつも一人なんですか?」
「後輩って、どしていつも辛辣なんですか?」
「だっておかしいじゃないですか、私と一緒にいるのに」
「お前仲間引き寄せアイテムとかだったりすんの」
「こんな可愛い子が近くにいれば、ちょっとは話しかけられる回数増えてもいいじゃないですか」
「ははん、最近喧嘩腰で話しかけてくる奴がいんのってお前のせいか」
理沙は自分でこれだけ言えるほど人気がある。可愛くて、小さくて、男が好きな、女子が嫌いな女子のトップである。
一方良二は地味というか目立たず、友達も少なく、なぜ理沙と仲良くやれているのか周りが不思議がるほどに対極している。
「言わせて貰うけどお前だって友達いないじゃん」
「失礼ですよ、先輩よりはいます」
「お前、俺と比べてる時点でちょっとやばいぞ」
「友達なんて軽々しく作るもんじゃないですよ、裏切ったり裏切ったり大変なんですから」
「裏切ってしかねぇじゃん」
「まぁ冗談として。これは由々しき事態ですよ」
「何が」
「先輩に友達がいない事です!」
「別にそんな事なくね...。教室いけば普通に喋る奴いるし」
ご飯を食べ終わった良二は食べ終わった料理を持って立ち去ろうとした。しかしそこを理沙に止められてしまう。
「あ、先輩ちょっと待ってください」
「なに」
「ここに居てください、具体的には私が食べ終わるまで」
「やだよめんどくさい」
「じゃあこれから私の元に先輩の事聞きに来た人がいたら、クラスメイトに彼氏ですって紹介して良いんですね」
「早く食え」
軽い脅迫を受けながら、目の前で昼ごはんのカレーを頬張る理沙にさっさと食い終われと目で訴えるが、理沙は何も気にせず美味しそうに食べる。
「先輩、私先輩とご飯食べれて嬉しいんですよ?」
「へぇ〜あっそぉ」
「先輩はこんな可愛い後輩と『ご飯一緒に食べて欲しい』って誘われて嬉しくないんですかぁ?」
「無論なんだけど、てか早く食ってくんね?なんか視線を感じる。三人ほど」
「ドンピシャ。凄いですねー最近私に告ってきた男子一人と、私を好きらしい男子が二人います。多分その人たちですよ」
「わぁ...」
「先輩、ヤキモチ焼かれてますよー」
「お前の彼氏来る前にさっさと帰りたい」
「私そんなん居ませんのでダイジョーブですよ」
「へぇ、そりゃ意外」
「おやおや?ちょっ...」
「ちげぇよ」
「察しが良いですね」
調子に乗らせまいと良二は理沙の言葉を遮ってシャットアウトした。
ようやくお昼ご飯を食べ終わった理沙は良二と一年と二年の教室が分かれる階段まで一緒に歩いた。
「先輩、たまには一緒にお昼ご飯食べて下さいね」
「もう嫌だ」
「何でですか!私何もしてないじゃないですか」
「お前というか、お前の周りの人間が嫌いだから無理」
「じゃあ私は好きって事です?」
「お前は好きでも嫌いでもない。こんな事あるんだな、本当にどっちでもない」
「めちゃくちゃ私に興味ないじゃないですか...」
「まぁな」
「じゃあ何でこんな喋ってくれるんです?好きでも嫌いでもないなら、おかしいですよ」
「あーそうなぁ...」
良二は少しだけ顎に手を当てて考えてから、理沙の問いに対しての答えを出した。
「話さなきゃ、そいつがどんな人間かは分からないだろ?」
「まぁそうですね」
「もしかしたらそいつが自分が思ってる様な人間じゃないかもしれないから、それを確かめる為に話すんだよ」
「つまり?」
「自分の見立て通りの人間かそうで無いかを、会話する事で確かめたい」
「そこは素直に私と喋りたいで良いんです」
「話したいわけじゃない、確かめたいんだよ」
「途中まで良い事言ってたのにぃ」
「いつでも名言しか出ないからな」
「逆にクドイですよそれは」
教室に戻った良二は、理沙と会った日の事を思い出した。
「直らない...」
「チェーンがホイールに挟まってるんですよ。一回ペダルを逆回転させながらチェーン引っ張り外してホイールに噛ませれば直ります」
「は?え?誰?」
自転車が壊れて立ち往生している良二に徒歩で帰っている途中の理沙が後ろから声をかけた。
急に知らない女子から自転車についての専門用語と直し方を説明されて驚いていると、良二の横にしゃがみ込んで直し始める理沙。
「おい手...」
「別に良いですよ」
チェーンのオイルが理沙の手を汚していく。黒くなった指なんて気にせず、理沙は自転車を直してあげた。
「ママチャリで良かった。クロスとかマウンテンは分かんないので」
「いや...ありがとう。助かった」
「先輩、私と同じ学校ですよね。制服一緒だし、見た事ある」
「ああ、そうなんだ?」
「とりあえず、直ったので私はこれで。また学校で」
「うん。あ、ありがとな。ほんとに」
「はーい」
理沙はフッと笑って帰っていった。
思い出してもあの時助けてもらったかっこいい女子が、今ではちょっと喋ったらイラつかせてくる奴とは思えない良二。
一方その頃、理沙のクラスでは、理沙に話しかける男子がいた。
「ねぇ理沙、さっきの奴誰」
「さっきの奴?」
「食堂で喋ってたろ。なんかビミョーな奴」
「あー先輩の事」
ビミョーな奴と言われて思い出したと言ったら、先輩はどんな顔をするかなと、理沙は想像して少し笑ってしまった。
しかしそれは相手の男子にとって嫌な笑顔だったらしく、少しイラついているように見える。
「まぁ、ただの先輩だよ」
「ただの先輩にわざわざ食い終わるまで待てって言ったのかよ」
「聞こえてたんだ。そうだよ?何かいけない?」
「俺一応お前に告って返事待ちなんだけど」
見るからに怒りを露わにし始めた男子。
しかし理沙に関しては告白された事を今思い出し、ようやくなぜ怒っているのか理解した。
「あーでもそれで怒るのは筋違いじゃない?だって私あんたと付き合ってないじゃん」
「そう...だけど...」
「ていうか、怒らなくても済むようにしてあげる。私他に好きな人がいるから無理です」
「は?ま...あいつか?あの先輩か?」
「それはあんたにカンケーないよねぇ〜」
そう言って理沙はトイレに行って男子を置き去りにした。