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第1章 横浜来訪者失踪事件 第1話

第1章


無い物強請るのは・・・

無いと決めていたから。

飼い馴らせないのは・・・

信じてなかったから。

痛みを知る

その事が救済の始まりと

気付いたよ、手を握れ・・・

足掻いて、購い、

生きる理由を見つけるんだ。

眩しい光は、そう・・・

昨日にはないから

新しい頁を創るのは自分自身さ

明日へ疾走る

迷い(ストレイドックス)

SCREEN mode 『Reason Living』

***


「結城っ!!」

「えっ、琉夏?」


マフィア本部にある医療施設。

そこにあるベッドで寝ていた結城は勢いよくドアを開けた人物、相棒である翠川琉夏を見て目を丸くした。

翠川は確か、仕事で遠征に行ってた筈で、此処にいることに結城は驚いた。


「手前、撃たれたって・・・」

「え、ああ、うん。大丈夫。手術したし、もうすぐ退院出来るよ」

「そう、か・・・」


結城の言葉に翠川は安心したように溜息を吐いた。

そんな珍しい相棒の姿に、結城は他意もなく訊ねた。


「えっと、心配してくれたの?」

「・・・え、は、莫迦じゃねぇの?!何で俺が、手前の心配なんかっ!!」

「いや、うん。ありがとう。琉夏、心配かけて後免ね」

「だから!!違うって云って・・・なあ、そいつ誰だ?」


翠川はやっと、結城のベッドの傍に誰かが座っていることに気が付いた。


「嗚呼、紹介するね。私の新しい部下のドストエフスキーだよ」

「・・・・はっ!?新しい部下!?」


翠川は心底驚いたような顔をして、紹介された新しい部下-ドストエフスキーを見つめた。

見た目も名前も日本人ではないだろう。

如何やって知り合ったかは知らないが、そんなことより、結城が自ら部下だと紹介したことが信じられなかった。

其れは、結城が拾ってきた芥川以来のことだったからだ。


「・・・零くん、この小さな男は誰です?」

「誰が小さな男だ、手前ー!!」

「ふっ、ふふ、小さな男・・・」

「手前も笑ってんじゃねぇよっ!!」

「うふふ、後免、後免。ドストエフスキー、この小さな男は翠川琉夏。私の相棒だよ。小さいけど、私より年上何のだよ?其れに幹部候補だ。小さいけど」

「小さい、小さい連呼すんなーー!!」

「零くんの相棒?」


ドストエフスキーは値踏みするように翠川を見る。

そして、結城に視線を移して口を開いた。



「零くん。相棒は選んだ方が良いのでは?」

「はぁっっ!?」

「ドストエフスキーってば、面白い人だねぇ。けど、相棒は琉夏じゃなきゃ務まらないのさ。琉夏以外の相棒は考えられないかな」


翠川はドストエフスキーの不躾な言葉にキレかけたが、結城の言葉に嬉しくなった。

然し、ドストエフスキーは気に入らなかったようで、眉間に皺を寄せていた。


「疑っているようだねぇ。けどね、ドストエフスキー。琉夏はこう見えて凄く優秀なのだよ?体術なんかはマフィア随一であるし、異能力も遣いこなしてる。機械があれば手合わせしてみたら如何だい?」

「零くんが其処まで云うとは。是非手合わせ願いたいものですね」

「けっ、手前なんか楽勝だっての」

「琉夏、ドストエフスキーは強いよ?何せ、この私が直々にスカウトしたのだからね」


その言葉に今度はドストエフスキーが嬉しそうな顔をし、翠川が眉間に皺を寄せた。


「手前、結城に其処まで評価されるとは、何者だ?」

「零くんの部下ですよ。それ以外云う必要はありませんね」

「先刻から零くん、零くんって馴れ馴れしいんだよ、手前!!」

「零くんが良いと云っていたので。貴方に云われる筋合いはないです」


バチバチと火花を散らしているドストエフスキーと翠川を見て結城は首を傾げた。

翠川は結城と違って社交性に富んでいる。

結城とはよく云い争うが、其れ以外で誰かに食って掛かるところは見たことがなかった。


「・・・相性悪そうだね」


結城が暫く云い争う二人を眺めていると、ノックの音がした。


「どうぞー」

「結城、具合は如何だ?」

「やぁ、蒼夜。もう何ともないよ」

「そうか。其れは良かった」


入ってきたのは久瀬であった。

今回の結城の怪我の原因は自分にもあるので、結城の返答に久瀬は安堵した。


「すまなかった、結城。俺のせいで」

「蒼夜のせいじゃないでしょ?私が勝手に入っていったんだから」

「然し、最初からお前の云う通りにしておけば。あの時、素直に結城に頼っていれば良かったんだ。そうすればお前が怪我をする必要はなかったんだ」

「もうすんだことだよ。けれど次は、頼ってくれ給え」

「判った。お前も」

「うん?」


云うかどうか迷った。

けれどもあの時のように後悔したくはなかった。

踏み込めばよかったと、後悔したくはなかった。

「お前もちゃんと頼れ」

「蒼夜?」

「蒼夜、ぼくを差し置いて零くんを口説かないでください」

「良い度胸してんなぁ?久瀬蒼夜。まずは相棒の俺を倒してからにしろ」

「俺は結城の特別だ」


天然なのか、確信犯なのか判らない久瀬の発言でまたしても病室で騒ぎが起こりそうになるが、それを結城が止めた。

流石にこれ以上五月蝿くしては、怒られてしまう。


「ところで琉夏。君、如何して私が此処に居ることを知ってたんだい?」

「ああ。遠征の報告に行ったときに首領に聞いた。首領から伝言。『退院したら顔をしてね』だそうだ」


その言葉に結城、久瀬、そしてドストエフスキーは深刻な顔をした。

翠川は首を傾げる。


「結城・・・?」

「否、何でもないよ。伝言、確かに聞いたから」

「?ああ。じゃあ俺は行くわ。結城、退院したら俺が居なかった間に起こったこと詳しく話せよ」

「えー?」

「判ったな?」

「・・・・判ったよ」


翠川は結城の返答に満足したように頷き、病室を出ていった。


「零くん」

「結城」

「判ってる。大丈夫。何も問題ないよ」

***

無事に退院した結城は、首領である森の執務室に向かっていた。

聞かれることは判ってる。

十中八九ドストエフスキーのことについてだ。


「けれど、まあ何とかなるかな」


それよりも、と結城は此処に向かう前に久瀬と話したことを思い返す。

☆☆☆

「ねえ、蒼夜。君は如何するの?」

「何がだ?」

「私はドストエフスキーに、居場所を用意すると約束したからね。このままマフィアの幹部で有り続けるよ。けれども君にはやりたいことがあるんだよね?」

「其れは・・・」

「君は人を殺したからもう駄目だと思っているのだろう。然し、けしてそんなことはないのだよ?嘗てそう、決意した時のように。今また誓えばいい。『人を殺さない』と。それでも整理がつかないなら、償う道を探すのもいいと思う。何れにせよ、マフィアにいる理由はないだろう?」

「結城、俺は・・・」

「其れに、ドストエフスキーは子供たちを殺した」

「!!」

「其れは変わらない事実だ。仇と同じ組織なんて厭だろう?今なら大丈夫。君をマフィアから抜けさせることは可能だと思うよ」


久瀬のことを考えての言葉だとはよく判る。

然し、その目には孤独が映っていた。

西条がいなくなり、その上久瀬まで抜けてしまったら、完全に結城は一人だ。

それでも結城は、久瀬を光の道へ歩かせようとしている。

けれども久瀬には、決めていることがあった。


「・・・結城、お前の気遣いは有り難いが、俺もこのままマフィアにいようと思っている」

「!?蒼夜っ、其れは」

「結城、お前は云っていたな。マフィアに入ったのは生きる理由が見つかるかもしれないからと」

「うん」

「見つからないよ」

「!!」

「自分でも判ってる筈だ。何処にいようと、お前の頭脳の予測を越えるものはこの世の何処にもない。お前は永遠に闇の中を彷徨う」

「蒼夜、君は・・・」


結城は驚いた。

この友人は其処まで、此れほどまでに結城を理解してくれていた。

それを今まで気付けなかった。


「俺にはお前の考えは判らないし、お前の見る世界を見ることも出来ないだろう。だが、寄り添うことは出来る」

「蒼夜?」

「結城、俺に許してくれないか?お前の孤独に踏み込むことを許してくれないか?俺はこの先もずっと、お前の傍にいたい。其処がどんな場所でも、例え闇と血と暴力の世界だとしても、其処に結城がいるなら俺は構わない」

「・・・いいの、かい?」

「ああ。お前の云う通り、また誓いを立ててやっていくさ。ゼロからやり直すことにするよ。その方があの子たちも喜ぶ気がする。それに、もし俺が知らないところでお前を失うことになったら、今度こそ俺は自分がどうなってしまうのか判らない」


手当たり次第当たり散らして、狂ってしまうかもしれない。

何も考えられない殺人鬼に成り果ててしまうかもしれない。

そうしてきっと後を追うのだろう。

其れほどまでに、久瀬にとって結城は特別な存在だ。


「ドストエフスキーのことも、許すことは出来ない。おそらく一生恨み続けるだろう。けれど、そんな憎しみを抱え続けることになったとしても、結城。俺はお前の傍を選ぶ。俺にとって大切なのは、其処に結城が居ることだから」


結城は泣き出しそうな表情で、久瀬に寄り掛かった。

久瀬はそっと受け止め、抱き締める。

☆☆☆

「全く、蒼夜は莫迦だなぁ」


そう呟く結城の顔は嬉しそうで、それでいて哀しそうでもあった。

結城としては久瀬には光の道で幸せになってもらいたいと思っている。

けれども久瀬は結城を選んだ。

結城が駄目だと云えば、久瀬は従ったかもしれない。

然し、結城には出来なかった。

傍にいると云ってくれたことが、とても嬉しかったから。


「・・・・却説、ここからだね」


執務室の前に辿り着いた結城は、一息ついてから入室した。

***

「首領」

「やぁ、結城くん。怪我はもういいのかい?」

「はい」

「其れは良かった。それで君を呼んだ理由なんだけど」

「承知しています。ドストエフスキーのこと、ですよね?」

「・・・彼をどうする気だい?」

「彼には私の部下になってもらいます」


お互い笑顔で見つめ合う。

もし此処に第三者がいたのなら、氷点下の読み合いに血の気が引いたことだろう。


「彼には多くの部下が殺されているよね」

「えぇ、確かにそうですね。ですが、それを補っても余りある利益を貴方は得た。違いますか?」

「・・・・・・」

「それに彼の異能力は大変素晴らしいものだ。使い方次第でマフィアに多くの利益をもたらすことと思います」

「彼が裏切らないと云えるのかい?」


森の云うことは最もだ。

ここまでマフィアを荒らしたドストエフスキーを信用するのは難しい。

然し結城には確信があった。


「云えます。彼は私を裏切らない」

「・・・そうかい。まぁ、君がそう云うならそうなのだろうね」


ドストエフスキーが求めるのは居場所だ。

それを最も提供出来る位置に、結城は居る。

だから結城がこの地位にいる限り、ドストエフスキーが裏切ることはないだろう。


「それに琉夏が『また魅了した』とか『天然たらしだ』とか何とか云ってましたけど」

「・・・ああ、うん。理解したよ。それなら裏切らないだろうね」


森は色々察して遠い目になった。


「良いだろう。彼を君の部下にしよう。皆には君が拾ってきた有望な人材だと云っておこうか」

「ありがとうございます」

「残党は如何するんだい?」

「それなんですけど、取り敢えずはドストエフスキーに一任しようかと」

「ほう?」

「望むならまとめて迎え入れようと思ってます。応じないならドストエフスキーが直々に始末をつける、と」

「なるほど、まぁ君に任せるよ」

仲間を自分で始末をつけると云ってしまうほど、ドストエフスキーは結城に心酔しているのかと、森は頭を抱えたくなった。

(全く、この子は誰彼魅了してしまうよね)


「それでは、失礼します。ああ、そうそう、蒼夜のことですが、彼はこのまま際下級構成員と云うことでお願いします」

「判ったよ」


結城は笑顔で部屋を出ていった。

***

「一先ず此れで大丈夫かな。却説、これから如何するか・・・」


本部を出た結城は、久瀬が待っているであろう家に向かった。

其処で人の気配を感じた。


「あの」

「はい。何でしょう」


結城は警戒しながら振り返った。

其処にいたのは長い黒髪をした、赤い瞳を持つ男。


「貴方、凄い包帯ですけど、大丈夫ですか?」

「・・・えぇ。どれも治りかけですから」

「其れは良かった。マフィアの結城零さん?」


結城は急いで距離をとった。


「君、何者だい?」

「あぁ、これは失礼しました」


男はにっこり笑い、手を差し出してきた。







初めまして。白銀綴といいます。

本作を読んでくださりありがとうござます。

初投稿ということもあり緊張しましたが、無事に書き終わり少しホッとしてます。

まだ初心者で誤字なども多いと思いますが、宜しくお願いします。


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