1章 熾天の書 6節
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キャラ紹介
ユリル・アーデント 15歳
147cm 41kg 85(E)/56/84
本作の主人公
魔法使いの名家、アーデント家の第二子で長女
立派な魔法使いとなることを願われていたが、学校では芽が出ず、修行先も見つからずに困っているところを、ウィスの紹介でステラの弟子となった
気が強くて融通が利かない性格
金髪に赤いつり目、身長は低めだが非常にスタイルがよく、そのせいで男に絡まれることが多かったため、男性が苦手
アーデント家伝統の炎・熱に関する魔法が得意だが、他の魔法はほとんど扱えない
ウィス・ラジムーン(大月 賢人) 19歳
174cm 65kg
異世界から迷い込んできた青年
この世界風の名前を名乗ってはいるが、実際は地球の日本の出身の大学生
魔法の力は持たない上、この世界の基準では体力や身体能力も低めだが、ユリルを応援しており、そのために力を尽くす
温厚で自己主張のない目立たない性格で、これといった特技も将来の夢もないことに悩んでいる
この世界から真剣に帰るつもりはなく、少なくとも日本よりはマシだと考えている
エルステラ・バルトロト ??歳(享年19)
144cm ??kg 76(C)/55/73
伝説に名前を残す魔法使いの大家、バルトロト家の末裔
体が弱かったため早逝したが、死の直前に禁じられた魔法で魂だけの状態で現世に留まることに成功した“幽霊”
実体を持たないため、直接物に触れることはできないが、誰にでも見ることができ、ひと目見た程度では異常にも気づかれない
掴みどころがない飄々とした性格で、中性的な口調で話す
銀色の髪に青い垂れがちな瞳。小柄で痩せ型だが、ユリルに比べると細く見えるだけで、それなりに肉付きはある
バルトロトの特性として、守りに特化した魔法を持つが、他にも水や氷の攻撃魔法を始めとして、様々な魔法を扱いこなす大魔法使い
6
「い、意外と難しいものね。そもそもこれ、こういう感じで合っているのかしら?」
「もう少しこう、力を加減したらいいんじゃないかな。ユリルは力いっぱいやり過ぎなんだよ」
ユリルに俺の世界のことを話すようになってから、夜に会う機会が増えていた。その中で、娯楽室で遊ぶこともあったんだが、ビリヤードに挑戦してみたところ、ユリルはかなり苦手みたいだった。対して俺は。
「一気に二つも入ったわ!今の狙ってやったの?」
「いや、偶然だけど、そうか、やっぱりこれぐらいの強さが一番なんだな。俺も未経験だけど、なんとなくの感覚でやってみて、それが正解だったみたいだ」
一度上手くいっただけなので、まぐれだと思っていたんだが。
「次も一発で……ね、本当にウィス、初めてなの?」
「……俺も驚いてる」
これを才能と言うのかなんなのかはわからない。でも、俺はさっきから百発百中、もっと言えば一打で二、三個のボールをポケットに収めることも少なくはなく、しかも何度やっても精度は変わらなかった。俺としては、本当に感覚的にやっているだけなのに。
「待って、ウィス。もういいわ。今度はあたしがやる」
「あ、ああ……」
「ウィスはさっき、こんな感じだったから――とぅっ!」
「ちょっ、ユリル、それはまた強すぎ……!」
キューに突かれたボールは、別のボールを弾きはしたが、その勢いが強すぎてテーブルから飛び出してしまう。……どう考えてもはりきり過ぎだ。
「ユリル。俺がまたやるから、よく見てて……」
「待って!もうウィスの力は借りないし、教えも請わないわ。あたしはあたし流にやるから」
「ユリル……?」
見ると、明らかに彼女の目は血走って……いや、目の中に炎が見えるようだった。漫画的表現でよくある、めらめらと燃えている、というやつだ。
彼女が負けず嫌いな性格だということはわかっていたけど、この屋敷に来てからその面は鳴りを潜めていた。いや、魔法の修行は自分自身との戦いだから、その気持ちが向けられる相手は常に自分自身だったんだろう。ところが今、彼女の闘争心は明らかに俺へ向けられている。
何をムキになって、と思いかけたけど、考えてもみればユリルはまだ十五歳の女の子だ。魔法学校は俺の世界における中学校に該当するみたいだから、今は高一程度の年齢。勝負事にムキになりもするだろうし、普段はかなり大人びているけど、本質的には熱くなりやすいんだろう。前にステラさんが、魔法使いの得意する魔法と、本人の気質はよく似ているものと言っていた。
だから、ユリルは熱いものを内に持っているし、防御や施錠を得意するステラさんは掴みどころがなく、本質というものを中々見せてくれないんだろう。
「弱くするなら……これぐらい、かしら」
今度は力が弱すぎたようで、キューはわずかにボールを叩くだけに終わる。――ああっ、しっかりと俺が見本を見せて、なんなら一緒にキューを握って、やり方を徹底的に教えてあげたい。でも、絶対にユリルはそれを望まないんだろう。
「それなりに力を込めて……これでしょう!」
今度はまた力を込めすぎて、ボールはテーブルを飛び出すことはしなかったものの、おかしな方向に転がっていってしまう。
「……………………」
どうやら、意外と俺は教えたがりみたいだ。今までそんな機会がなかったから、気づかなかったけど、こうしてユリルが悪戦苦闘している様を見せられると、どうにも我慢できない。
「ユリル」
「ダメ!!」
でも、頑固なユリルはそれを許してくれない。無理にやったら、ものすごく恨まれてしまいそうだ。
それからも何度もユリルは失敗して、その度に俺はやきもきさせられていた。
だけれど、彼女のそんな姿を見ることができて、少し安心できたのだった。年齢より遥かに大人だと思っていたユリルにも、年相応か、それよりもむしろ幼い部分はある。彼女はきっと、こうしてバランスを取っているんだろう。




