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The Two Days  作者: 李仁古
4/6

初日2

 雨が降る中フォードのワゴンを大塚が運転している。助席に北川がいる。後部座席には松田たちが突入準備をしている。ジャケットの上に防弾ベストを着て、ニーパット――膝を守る装具――をつけ、ハーフフィンガーのグローブをはめた。タボールの予備弾倉をベストにつけた弾倉袋に入れ、ベレッタを右腰のホルスターに入れる。

「葛山さん、署の連中が家を包囲したそうです」

 村上が携帯電話をポケットに入れながらそう言った。葛山は頷きながら仕切りにパソコンの画面を見ていた。

 GPSによると、清水はとある雑居ビルに連れて行かれた。ビルは既に取り壊し予定だったので中に人はいない。そこを地元の警察が包囲したようだ。

「あと何分だ?」

「約四分」

 相変わらず大塚は静かに言った。

「よし。いいか? まず機動隊が一階と二階に催涙弾を撃ち込む。それ合図に突入だ。それから素早く二手に別れ、西と東の階段から二階に上がれ。マルタイは二階のオフィスにいる。抵抗するようなら射殺しろ」

 葛山の話が終わると同時に車が停まった。雨が叩きつける中、全員が素早く車から降りる。四階建ての雑居ビルの前には制服警官や機動隊の連中が包囲していた。後ろにはカメラを回す報道陣に野次馬。空には各局のヘリコプターが何機も飛んでいる。

 松田たちは素早くかつ気づかれないように雑居ビルの入口に向かう。入口に着くと壁に沿うように並び、機動隊の合図を待つ。特殊のゴーグルをつけ、小型の酸素ボンベを口にくわえる。破裂音。同時に窓が割れる音が聞こえた。

 先頭の元井がドアを蹴り破る。中は催涙ガスで視界が悪い。それでもゴーグルのお陰で昼間のように見える。銃声。後ろにいる村上が撃った。見るとP90を持った男が倒れた。

 素早く二手に別れる。東が元井、北川、松田。西が葛山、大塚、村上。

 階段を上がっていくと銃声が鳴り出した。M4A1を持った男がガスの効果が効いてるようで、銃弾はあさっての方向へ。北川が男の胸に銃弾を撃ち込む。血が飛ぶ。男が倒れる。

 二階につくと、咳込みながら煙の中から一人出てきた。元井が銃床ストックで殴る。気絶した男は階段を転がり落ちていった。煙の中から銃弾が飛んできた。男がM4A1を撃っている。松田が撃つ。男の頭に当たり、体をのけ反らせながら倒れた。

 オフィスの中に入ると、催涙ガスの煙が薄れてきていた。オフィスは無残に残されたディスクや椅子が置かれていた。その中に清水がいた。体を縮め、手で耳を塞いでいる。

『マルタイ発見』

 元井がタボールを構えながら清水の方に向かう。そこにシグのGSRを持った男が清水に照準を合わせた。それに気づいた松田が清水の前に立つ。銃声。腹部に衝撃が走る。清水は目を丸くしながら松田を見た。

 男が再び引き金を引く前に大塚が胸を撃つ。男はデスクの上に血を流しながら倒れた。

「松田! 大丈夫か!?」

 葛山が松田を抱き起こす。

「俺は大丈夫です。……マルタイは?」

 松田が咳込みながら言うと、葛山が笑った。

「大丈夫だ」

 それを聞いた松田はほっと息をついた。葛山に手伝われながら起き上がり、床に寝ているタボールを持ち上げた。清水も元井に手伝われながら立ち上がった。その時、黒縁の眼鏡が落ちてる事に気づき、それを拾った。

 外に出ると機動隊の連中が盾に隠れていた。だが、松田たちだと分かると一斉にビルの中に入った。カメラのフラッシュが激しくなる。その中、車に乗り込んだ。そこに機動隊に一人がやってきた。

「署まで先導します」

「ありがたいです」

 そう言うとそれぞれの車に乗り込んだ。機動隊はパトカーに乗り込み、パトカーが進みだした。それについて行く。さらにパトカーがもう一台後ろについた。

 松田たちは弾倉を抜き、薬室に残ってる弾丸も抜いた。

「あの……これ」

 清水が松田に黒縁眼鏡を畳んだ状態で差し出した。

「あっ……どうも」

 そう言って眼鏡を受け取ると、眼鏡をかけた。清水は窓から街を眺め、松田は薬室に残ってた弾丸を弾倉に詰め込んだ。すると、目の前を走っていたパトカーが爆発し真横に吹き飛んだ。大塚は慌ててアクセルを踏み込んだ。

「RPG!」

 北川が叫んだ。が、すぐに車に衝撃が襲った。RPGの弾は車の五メートル手前に直撃したが、爆風で車が横転した。二回転半したあとコンクリートを車の天井で擦りながら止まった。

 視界がかすみ、耳なりのような感覚になりながら手近にあったHK416を手繰たぐりり込む。突然、明るくなったと思うと、北川が覚束おぼつかない足取りで車から出た。続いて出ようとしたが、目の前に銃弾が撃ち込まれた。

 次第に耳が治ると、けたたましい銃声が鳴りだした。車のボディがへこむ音を聞きながら、ドアを蹴り開けた。ひっくり反った車からようやく出ると続いて村上が這って出てきた。もう一台のパトカーを確認すると、無傷ではあったが乗っていた隊員は地面に転がっていた。

 ふと松田は清水の存在に気づき、車内を覗き、清水の無事を確認した。気絶しているが生きていた。葛山は……。

「……」

 首は後ろを向き、口から舌が出ていてよだれを垂らしながら死んでいた。

「松田! 銃を!」

 村上が叫ぶ。松田はHK416を投げて渡す。すると、助席から元井と大塚が出てきた。松田は清水を抱き寄せ、タボールにつけた負い紐を肩にかけて、車から出た。外は激しい銃撃戦が繰り広げていた。

 薬莢やっきょが宙に舞い、地面に落ちる。地面には金色に輝く薬莢が無数に散らばっていた。

「葛山さんと北川は!?」

 頭から血を流している元井が遊底が後退したベレッタに弾倉を差し込んでいた。よく見ると右足が妙な方向を向いていた。

「葛山さんは死にました!」

 元井は舌打ちした。すると、村上が弾倉を取り替えながら、

「北川さんも死にました! 頭に喰らってます」

 と言って、銃の左側についている撃針ファイアリング・ピンを叩く。

「援護お願いします!」

「援護射撃!」

 元井がそう叫ぶと、一斉射撃を開始する。その間に清水をビルの影に運ぶ。松田は清水を壁を背にして、地面に座らせた。すると、清水がうっすらと目を開けた。松田はそれに気づかず、影からタボールを撃つ。襲撃犯は徐々に数が減っていくが、正確な射撃で簡単にはいかない。

 松田がタボールを撃っていると、大塚が屈みながら走ってきた。同時に松田のタボールが弾切れになった。弾倉を抜き、素早く弾倉袋から新しい弾倉を出して差し込む。その間に大塚がタボールを撃つ。するとイヤホンから元井の声が聞こえてきた。

『ここは俺たちに任せて行け』

「何言ってるんですか! 援護しますから早く来て下さいよ!」

 すると大塚が、

「行こう」

 と珍しくはっきりと言った。

『俺たちじゃ、足手まといだ。……マルタイを頼むぞ』

 松田は躊躇ためらいながらも行く事にした。清水を抱き起こし、手伝いながら走った。すると後ろから爆発音が聞こえた。赤い炎がチラチラと見える。松田はぐっと堪えながら走るのに専念した。

 しばらく走ると三階建ての立体駐車場があったのでそこに隠れる事にした。二階部分から道路を見るが、追ってはこない。松田は壁に寄り掛かった。そこで松田は清水が腕を摩っているのが分かった。

「痛むのか?」

「……寒いの」

 松田は防弾ベストを脱ぎ、ジャケットを清水に渡した。

「あ、あなたは?」

 清水は松田の格好を見て、ジャケットを貰うの躊躇った。それもその筈。もう11月だというのに彼は半袖になろうとしているのだ。

「気にするな」

 そう言ってタボールの弾倉を抜き、残弾数を数える。予備の弾倉――三十発が詰まっている――は残り一つ。合わせると四十九発。今、撃ち合いになれば勝ち目はない。腕時計に目を落とす。午後十時二十二分。大塚が車を調達しに行ってから十四分が経つ。

「その傷……大丈夫なの?」

 ジャケットを羽織った清水が松田の頭の傷を見た。出血しているのだ。

「たいした事ない」

 清水は自分の周りを見るが、バッグがないのを思い出す。その時、車がエンジン音が聞こえてきた。松田は清水を車の影に隠れるように指示すると、タボールの安全装置を解除。

 奥から銀色のマツダ、アテンザがゆっくりと向かってくる。運転席には大塚が乗っていた。そうと分かると、松田は清水を連れてアテンザに向かう。清水を後部座席に乗せ、自分は助席に乗り込んだ。二人が乗り込んだ事を確認すると、車が動き出した。

「これからどうする?」

「とにかく安全な場所を探さないと」

 松田はポケットからハンカチを出し、血を拭う。だが松田は安全な場所があるか不安だった。相手は警察だろうと容赦なかった。そんな連中から清水を守る事が出来るのだろうかと。

「いい所を知ってる」

 大塚はそう言いながらハンドルをきっていく。

「知り合いに神父がいる。そこは防犯システムもしっかりしてるし、あそこなら目立たない」

 松田は大塚の言葉を信じ、任せる事にした。後ろを見ると清水が眠っていた。時刻は十一時になろうとしている。

 車は大通りを走り、なるべく交通量が少ない道は避けた。カーラジオでは先程の事が報道されている。死者八名。いずれも警察官と言っている。警察側のコメントはないとのこと。どうやら犯人側は死体を回収したようだ。

 教会は高層ビルに挟まれて、ひっそりとしていた。確かにここなら目立たない。車を教会の裏に停め、降りるといかにも清潔そうな神父が現れた。

「見られない内に入りなさい」

 ゆっくりとした口調でそう言うと、裏口のドアを開けた。松田は清水をおぶりながら大塚のあとに続く。

 中は至って普通の教会だった。長椅子と長テーブルが奇麗に並べられており、隅にはパイプオルガンがあった。

 松田は清水を椅子に寝かせ、ジャケットをかけた。

「傷を見せなさい」

 神父が救急箱を持ってきた。

「たいした事ない」

 神父は彼の言葉を無視して、黒い髪を掻き分けた。神父は無言のまま傷口を消毒する。大塚が大きな箱をテーブルに置いた。それを見た神父が目を丸くした。

「まだ密輸やってるのか?」

 大塚はそう言いながら箱を開ける。中には最新型の銃器と弾薬が入っていた。彼はその中からアメリカが開発したFNのMK.16を取り出した。銃全体がベージュ色で、独特の形を銃だ。

 神父は震えながらも手当てを続けた。頭に包帯が巻かれていく。

「借りるからな」

 神父が動いた。が、銃床で殴られてあっさりと気絶した。松田は今まで見た事がない彼の行動に驚きながらも、箱の中を漁った。

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