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78.終わり

「ん、ん・・・」

瞼に光が差し込もうとしていた。目を開ける前に身体が冬の訪れを知らせていた。今日は寒い。何か温かいもので体を安心させなければならない。

身体を起こす。いつもと変わらない自分の部屋。でも何かが決定的に違う日だった。心がまだ完全に起きていない。何か手掛かりはないかと扉を開ける。

「お姫様」

執事が出迎えてくれる。ここまでいつもと変わらないはずだった。しかし、その声にいつもとは違った感情が含まれていたことを感じた。そう、心から安心できる声の感じではなかった。

「あの、私・・・」

「身体が冷えているでしょう。まずは暖かい紅茶でも」

「ごめんなさい、私、まだ頭がぼうっとしていて」

「大丈夫です。最悪な事態は何も起きてはいません。姫様は一時的なショックで気を失っていたのです」

「ショック・・?」ショックの原因を探る。思い出した。あの時、あの-

ティーカップが床に落ちる音がした。分かっていたかのように執事が床の汚れを拭き始める。

「ユハ様はご無事です」

そう、その言葉だった。その言葉だけが、自分は執事の口から聞きたかったのだと分かった。でもその彼がこの場にいないのは。

「とはいえ、完全に回復した状態ではありません。暫く様子を見る必要があるでしょう」

「会わせて」聞き終わるより早く、姫が言葉を発した。

「いけません。今は絶対安静です」

「でも・・・!」

「心配はいりません。そのうち必ず、元気な姿で戻ってきますから」

そう言われてもまだ、心の不安が拭えない。ここで、こういう時本来であったら自分をなだめてくれるもう一人の存在についても、今この場に欠けていることに気付く。

「国王様ですか?」この執事はいつも先回りして待っている。

「ユハ様ほどのお怪我ではありません。復帰もユハ様より早いでしょう」

「何があったの?」ソランは王の事情については一切知らない。

「竜が街に現われました。市民を守るために飛び出して行かれたのです」

「そんな・・・」大切な人が二人もこの場にいない。あんなに良い人達なのに、どうしてこんな酷い目に遭わなければならないのだろう。

「お二人をはじめとした英雄によってこの国は守られたのです。私たちは勝利しました。黒い魔法使い達は当分現れないでしょう」

ソランにとっては、もはや勝利などはどうでもよかった。それに、到底勝利した時に得られるような感情は得ていなかった。私たちは、少なくとも何かに負けていた。彼の、キツォーの境遇を作り出してしまった私たち王国の罪の深さに。そして、自分がこの戦いにおいていかに無力であったのかを思い知らされ、自身を責める気持ちが生まれていた。

「反省は後にいたしましょう。今は国民を安心させるのが第一です。そして、それができるのは今、ソラン様しかいらっしゃいません」

そうだ、私よりも不安な気持ちのままに放っておかれている国民たちのことを考えないでいた。国の事情を知らせなければ。もう脅威がないことを、この口で知らせなければ。

「姫様が目覚めなければ、その他の王族の方にお願いをするつもりでしたが、お願いできますかな?」

「任せてください。あともう一つ、私からお願いがあります」

「何でしょう」

「その後私を強くしてください。私も王家の魔法を使いこなせるようになります」


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