74 ヲサイヤ 帰還
「ハっ」
ヲサイヤは意識を取り戻した。明るい青色の空。緑の地面。そして無数のうごめく黒い影。そうだ、自分は戦っていたのであった。あちらこちらに倒れている黒い影も見える。
「無意識下でも戦っていたのか・・」
彼の意識が不在の間も、彼の身体は戦闘を続けていたのであった。魂が抜けた空っぽの肉体であっても、鍛え抜かれたヲサイヤの身体は侵入者を次々と叩き潰す。彼の心と体は、互いが離れていてもブレることはなかったのである。
「俺は死ねない。あの魔導士を倒すまでは」その後の調査で、その男の特徴から魔導士であることが分かり、その種類まで特定された。彼の生きる理由は、今後もその男の生存に関わっていくこととなる。
調子を取り戻した彼は、テンポを速めて敵を倒していった。あの例の男の姿はない。これくらいの量なら、問題なく制圧できるだろう。
しかし、何故あの男はいないのだろう。目的を達成したから・・・?俺の魂はどれくらいの時間不在にしていた?彼の意識の不在時、一体この世界がどれほど動いていたのかを知る術はなかった。後ろを振り返る。魔法使い達がまだ囚人たちを相手にしていた。幸いにも、そこまで時間は経っていない様だった。
「確か、敵の中に竜使いがいたはずだが・・・」
あれほどの大きさのものが、どこを探しても見つけられない。何が起こったのかを聴取する必要があった。ヲサイヤは黒人形を全て倒すと味方の魔法使いに加勢した。これくらいの兵士がいれば、囚人たちをとらえきるのは時間の問題だろう。彼は兵士の一人を捕まえ尋ねた。
「竜は、あの竜はどこへ行った」
「載っていた竜使いはこちらに攻撃をしてきませんでした。様子を見ているうちに、どこかあらぬ方向へ消えていきました」
「何?取り逃がしたというのか?」
「申し訳ありません。ただ、目先にいた囚人たちを捕らえるのに精いっぱいでして・・・」
「くそっ」
あれだけの竜使い、しかも元囚人であろう。今後何か問題が起きないはずがない。事態はあまりよくない方向に動きそうだ。ただ、やはり手掛かりと共に消えてしまった以上は手をこまねいているしかできないのか。
ヲサイヤは次するべきことを考える。この場は任せておいてよいだろうか。街の方も危なくはないか。城の方は。白魔法使いに連絡を取ろうとしたが、まだ頭がくらくらして集中できない。大きく動くよりは、目の前のトラブルを片付けたほうが良いだろう。
「さっさと片付けるぞ」
この場においての勝利はヲサイヤ陣が収めた。気になった点は二つ。取り逃がした竜使い、そして敵であったはずの黒魔法使いの突然の消失だ。




