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63.ニラード-戦いの再開

ニラードとジョート、二人の魔法使いは互いを見つめている。ここは王の住む城の敷地内にある塔付近で、多くの犯罪者たちが幽閉されている場所でもあった。このような塔は国民の住む地域に近く作っては危険だからと、わざわざ王の住む城の範囲内に建設されたのはかなり昔の話であった。

今、その囚人たちが一度この黒魔法使いジョートという男によって解放され、その中のいくらかは白魔法使いニラードと北の魔女サリアによって戻されつつある。

「アンタ、覚悟はできてんでしょうね?」

ニラードはお怒りであった。この国の歴史で何人もの犠牲者を出し、彼女の先輩である白魔法使いも手を焼き、捕まえるのに命を落としたような極悪人が脱獄をしたのだ。しかも彼らはおそらく既に手の届かない範囲にいる。

「覚悟ならとっくにできている。俺の使命の為に彼らを解放したんだ」

「アンタもここにぶち込まれたいの?いや、その前に一回ぶん殴らなくちゃね」

「やってみなよ。先にぶん殴ったのは僕の方だけどね」

ニラードは用心していた。彼の攻撃の中で何と言っても厄介なのは、蛇の頭にも見える黒い放射線のような魔法である。それは地から自在に出現し、触れたものを失神させるような打撃が襲う。彼女も一度その餌食となった。

一方サリアは天井を破られたドーム状の迷路を再構築していた。この中には今も何十人もの囚人がさまよい、塔へと後戻りするただ一つの出口を目指している。ジョートによってもう一度あの黒い魔の手がドームを壊せば、囚人たちがどっと溢れだして自体は更に困難になる。

時間との勝負だった。ニラードは白牢を出現させる。もう一度、彼の動きだけでも封じ込めなければ。

「行きなさい」牢が小男の方へと向かっていく。ジョートはドームの上を走り回り、牢に捉えられまいとする。

サリアも加勢した。ジョートの足元を掴むようにドームを盛り上げさせる。元々は地面を構成要素としている素材で、いくつもの人形を作りだした。

「めんどうくさいなあ」攻撃の手を増やしたことが逆にカウンターを招くこともある。ジョートは彼女ら二人が恐れていた手をついに使った。

「ヨスガントスの右腕」

地面の人形たちの下に影が浮き上がる。次の瞬間、人形たちが突き上げられるように影から黒い膜が出現し、粉々に砕いた。

「あのガキ・・・!」ニラードは歯を食いしばる。

「ガキ?お前も俺と変わらないガキじゃないか」

「は!?私はガキじゃないわよ!」白牢は更に勢いを増した。それとすれ違うようにヨスガントスの右腕がニラードに襲い掛かる。白牢は閉じ込められるだけで済むが、こちらは銭湯不能になるほどの重傷を負う。ニラード、ジョート、お互い逃げながらの操縦だった。

「もうっ何なのよ!ヨスガントスって!」

「黒魔界に住む黒の巨人だ。俺も習得したばかりで、まだ完全じゃないが、お前を無力化させるのには十分だろう」

その言葉は本当だった。あの腕にかすりでもすると戦況はがらりと変わる。

サリアは自分が狙われていないことをいいことに、ジョートの足元を狂わせようと試みる程の余裕があった。ドーム状の地面をくぼませたり、足を掴むように盛り上がらせたりした。

「アイツも邪魔だな」

ジョートは一度大きく跳びあがった。同時に、右腕も空高く上がっていく。

「何をする気・・・?」

上に向かっていったヨスガントスの右腕は、今度は地に穴を開けるようにドームを襲った。

爆発音のようなものが鳴り響き、ドームに穴を空ける。

「しまった・・・!」

中から囚人たちが出口を見つけたように湧き上がってきた。陽の光を受けてかなり眩しそうにしているが、慣れたものから順に四方八方へと逃げ行こうとする。

サリアは彼らを拘束するのに更に時間を使うこととなった。今逃亡を試みる囚人を捕らえるのか、その元凶をなんとかするのか、どっちが優先されるべきかを考えることができなかったのは、単に彼女らの若さ故の経験不足である。

「サリア!そっちは任せたわよ!」ニラードも余裕がない。更にもう一つ牢を出現させた。

腕がドームを穿った隙を狙い、ジョートを挟み撃ちにしようとしたのである。

「やった!」

牢同士が衝突する音が聞こえた。挟み撃ちに成功したのだろうか。彼女が様子を見に行くと、彼の姿は無かった。

「まさか・・・」

ジョートは囚人たちが出てきた穴に逆に入り込み、ドームの中に消えていた。そしてその入り口はサリアが既に塞いでしまっている。


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