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61.ジャニー

上空での戦いをただ眺めていることしかできない兵長は、地上の敵を殲滅させることを徹底していた。

「大切な市民が危険に晒されている。少しでも怪しい存在を感知し次第、対処にあたれ」

既に市街地に奇襲してきていた黒人形は片付けられていた。だが、市民の安全が確保されているような状況と断ずることができないのは、やはり飛び回っている竜の恐怖感が町中を支配していることによるものが大きい。

いくらこの場で黒人形を処理できていたとしても、竜の火球の一撃でも浴びせられれば一瞬で火の海になってしまう。

-そんな相手と、王たちは戦っているのだ。

どうしてそこまで-と思うのがジャニーの心境であった。一国の王がここまでする必要があったのであろうか。通常の国の王というのは、全ての戦闘行為を部下に任せ、自分はのうのうと城に籠っているだけで全てが片付くような地位にあるはずであった。

この国の王は戦えるし、何よりも国民を大事に思っている。ジャニーだけでなく、家の中から窓を通して王の雄姿を見届けている全ての国民がそう思っていることだろう。

負けるな。頼む。頑張ってくれ。そんな国民一人一人の願いが地上にいる彼には感じられるようだった。

空を飛び回る竜の姿がとうとう2体にまで減った時、地上の人々の興奮は絶頂に達していた。いける!勝てる!王様!

だが少しするとやはり王の限界が皆にも分かった。国中を守るようなベールを展開している以上は仕方のないことであったが、この場で竜をなんとかできるのは王しかいないと誰もが分かっていただけに、その願いは更に切実なものになっていった。

「王様!負けないで!僕が応援してるから!」

とある民家の少年が家の中でこう叫ぶ。

「大丈夫よ!きっと守ってくれるわ。だから願いましょう!」

わずかな不安を称えながら、それでも王の健闘を願ってやまない母親の姿がそこにはある。


任せてください、王様。もし火球の1つ2つ、降ってきても俺たちが全力で国民を守って見せますから。もう、これ以上は-。


王が今、力を使い果たしたようだった。国中が静寂に包まれた。力を失った王の体は初めて重力を思い出したかのように地上にまっさかさまに落下していく。

そんな王を、あの場にいた白人形と大司書は気にかけていない様だった。助けに行く素振りすら見せず、最後の1体の竜と戦闘を続けている。

いや、そうではない。兵長ジャニーは彼らの心理を分析した。あの王に忠実なサーロンが王の緊急事態を見て助け行かないはずはない。あの白人形が王の失神を感じ取るや否や、自分の体で隠すように、サーロンの視線が王に向かないように彼の前に陣取ったようにも思えた。

つまり、白人形が大司書の錯乱を防いだ-

ジャニーは頭を回転させる。じゃあ待て。これからの指揮系統はどうなる。白人形は白魔法使い、大司書は王の命令しか聞かない。王がいなくなれば必然的に指揮を執らなければいけないのは俺だ。

「超級魔法使いよ!今すぐ王を助けに行け!」

上空で待機していた超級魔法使いは一目散に王の身体を回収し、回復魔法をかけ続けた。


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