60。
「危ないところでしたよ。このところ被害は問題ございませんか?」
「お前は確か、南の方に行っていたのではなかったか」
「はい。ですがこの窮地に主に呼び戻されてはるばる戻って参ったのです」
「そんなことはソニーワイドは言っていなかったな。いつの間に・・・」
と言いつつ、王は崩したバランスを取り戻し身体を反転させた勢いで先のクスを封印した。
「悪いが、ゆっくり話している暇は双方ないな」
もう更に一体のクスが目と鼻の先に迫っていた。この場に残っている竜はこれを合わせて2体であった。
「お前はサーロンのところ・・分からないか。あちらで戦っている魔法使いの援護を頼む」
「分かりました」
サーロンは独りで竜の気を引こうとしていた。
「エスペランサ」
光の槍がクスを貫く。サーロンの背丈ほどもある長さだが、竜の固い鱗にとっては致命傷にはなり得なかった。
「アル・マレク」
無数の光の鏡が竜の周りに出現した。竜の体を貫いた槍は鏡に接すると反転し、またもや竜に目掛けて進んでいく。そうしてまた竜を攻撃した後に、更に先に存在している鏡によって反転して何度も竜に向けって光撃を試みるのだ。
クスにとって一回の光撃は皮膚を針でチクリを刺される程度の痛みに過ぎないが、何度もそれが続いていることに苛立ちを感じていることは確かであった。槍自体に斬撃を試みるも物理で対処できる性質の槍ではないので、またもやその腕を貫いてしまう。なんとか厄介な怪物の一体を足止めできているところにサーロンの功績があった。そしてそこに、執事の白人形が到着する。
「呪文を使うのか」
「ああ。だが、あいつが飽きるのも時間の問題だろう。次の手をすぐにでも考えなければならない」
王はこの3体目の竜とも果敢に戦い続け、街への被害を抑えていた。少し息が上がっている。
町全体を覆うようなベールを作り出し、竜たちの火球から守り続けている。これがどれほどの負担を強いているか、地上で守られている常人たちには想像できようもなかった。
自分のみがこの状況を動かせるのだと言うプレッシャー、そして責任感が今の王の原動力となっていた。
3体目のクスは疲労した王の体にも容赦がない。ところ構わず火球を放出し続け、更にあの手この手で打撃を打ち込んでくる。王にとって、火球はまだ威力を抑えることができるにしても肉弾戦は確実に王の体力を奪っていった。このまま近接戦が続けば確実に敗北する。
しかし、竜を捕らえるタイミングは近接戦の中でしか生まれ得ぬものでありどこかで決着をつける必要があった。
王は手を高くつきあげ光を放つ。暗い魔力を写すその竜の瞳にそれはかなり効果があり、一瞬の隙が生まれた。今度はガンセンは手を前に伸ばし、その竜の体に触れようとする。
「これで終わりだ-」
竜は手を引っ込めた。というよりそれも暴れる動作の中の1つであり、次の瞬間竜の体は回転するように後ろを向き、その巨大な尾が鞭のように王に襲いかかった。それは空中で素早い回避行動をとることのできなかった王に直撃し、王の内臓を破裂させた。
「ぐっッ」
ダメだと思った。このまま力尽きるのがどれだけ楽だろうか、彼はそんなことを想像してしまっていた。
しかし、余がいなくなれば誰がこの状況を変えられるのか。白人形とサーロンだけでどうにかできるものではない。竜はあと一体いる。2体をあやつらに任せるか?いや。こいつだけは余が仕留めなければ。-この国の王がこの戦いで活躍するのはもうこれが最後だ。しかし、確実なものを見せてやる。
消えかけた意識の中王は竜の尾を掴んだ。最後の力でなんとかクスを封じ込めたガンセンはそのまま気を失い、地上へと落下していく。




