59.ガンセン
残り三体のクスは、1体目が捕縛されたことを認知するやすぐに襲いかかってきた。火球が効かないと分かっているので直接龍撃でダメージを与えに来ているのである。
王は王で、ベールでもって竜を捕らえる好機とみなし自らも果敢に立ち向かった。
気が気でないのはそれを見守る他の魔法使いである。サーロンはそのうちの一体の気を引くべく近くに飛び出し、攻撃を仕掛けていった。そうでなければいくら王でもこの数の竜を相手に健闘などできようはずもない。
王は過去の戦闘経験から竜の攻撃パターンには少し自信があったが、それでも2体を相手にするのは楽ではなかった。ベールで相手を覆っている時間にもう一体から攻撃を食らう危険性がある。一撃が何しろ致命傷になりかねない竜の爪は注意してもしすぎることはなかった。
龍撃を躱して、少し王と竜との間に距離ができたときのことである。再び竜が放った火球が王を逸れて下方の街の方へと向かっていった。王はベールを自分の周りに展開し、急いで火球を回収しに行った。その際無理な体制で対応したか、少し反応が遅れてマントの一部が焼け落ちた。
この出来事を見てクス達が何を考えたのか、次の行動で分かるだろう。あたりに煤の匂いが立ち込める。彼らは火球を次々と下方、街の方目掛けて吐きまくったのである。王が身を呈して火球に自分から当たってくれるというのだから、これほど彼らにとって嬉しい話はない。
王は遠くの火球に狙いを定め、一つ一つベールの中に閉じ込めて消滅させることに力を注いだ。それでも消えない炎を上空の他の超級魔法使いが消滅させる。サーロンは相変わらずクスの一体を裁くことに手いっぱいだった。既に王都の図書館一つ分を隠す程の魔力を使い、ここまで飛んでくるのにも、王に力を与えるのにも呪文を使っている。これからの彼にどれほどのことができるのか、展開は読めなかった。地上にいたジャニーや上級魔法使い達はその様子を見て、万が一火球の1つでも地上に落ちた際の対応を策定していた。そのため、単体で近くを走る別の白人形が現れても、その違和感を放置していた。
それにしても火球の数が多すぎる。一つ一つに狙いを定めるだけで神経を疲弊させてしまい、次第に標準が定まらなくなっていった。こうなったら、と王は目をつむり街の中心部に意識を向けた。ゆっくりと拡大していく半球。街の大部分が覆われ、守られるような空間をつくりだしたのである。しかしその力に少しの間エネルギーを奪われ、空を駆けながら一瞬だけよろめいた王の体の真上に竜が跳びあがり、腕を振り下ろされていたことにも気づけないでいた。一つ捉え損ねた火球が遥か彼方へと飛んでいくところを目にした王は呟いた。
「あの方向なら、大丈夫だ、ホーケンが守って・・・」
ドガンッ!と王の真上で音がした。ガンセンがやっと自らの身に起きようとしていたことに気付き見上げると、クスの長い首が蹴り上げられた衝撃で一瞬曲がったように見えていたところだった。
「お前は・・」
「お久しぶりです、国王様!」王はその姿を見たのは数十年ぶりな気がした。
「ソニーワイドの白人形か」




