56.スニーク
スニークはイカゴの上空を飛んでいた。と、いうより飛ばされて宙を移動していたと表現する方が正しい。先ほどの女に一度洞窟からはじき出され、地中をすり抜けて1方向に飛ばされていた。
「これがあの女の力か」
こうやって1体ずつ竜たちを街へと運んでいたに違いない。今、自分も同じように戻されるのだろうか。いや、そうなっては街への加勢になってしまうからそういうことにはならないだろう。どこか適当な場所に降ろされるのに違いなかった。
「抜け出せるか・・?」
彼はいろいろな方法を試そうとしていた。体で足掻いたり、重力を更に強め、身体を地に近づけようとしたり。どれも無駄であった。そうこうもがいているうちにも林に差し掛かり、洞窟からはどんどん離れていく。一つひとつ小細工のような魔法が効いていないことを考慮すると、自分にかけられた魔法は特定の手順でないと解除されない仕組みであることが推測される。
「解除か・・・」
スニークは貯めてあったマントの力を使うことにした。おおよそ1/3ほどの力を解放し、自らの体にその魔力を向ける。
「これならどうだ」
ゆっくりと彼にかけられた力が弱まっていく。ついに魔法の力から抜け出し、スニークは再び地上に降り立った。
「呪いの一種だったとはな」
呪いを解除する力が白魔法には存在する。マントの蓄えを消費することで、彼は体力を温存した上で次の行動に移った。
「今度はこっちの番だ」
先ほどの洞窟の近くにまでたどり着いた。それを彼は上空から見下ろす。大体の地形を先ほどの侵入経路から判断し、竜のいた広いあの空間の場所を推測した。
「このあたりだな」
両手を地に向け、垂直降下。土を上空から押し下げるような体勢で、更に空からの圧力を加える。
地が少しずつ沈下を始めた。彼自身の力では足りない分をマントから引き出し、今一度全力を地面に向けて注いだ。
「俺はユハ程甘くないぞ」
地盤が一気にうなりを上げる。辺り一面がゴゴゴと崩れていき、女と竜のいたであろう空間も、地層が両側から挟み込むそうな形で完全につぶれてしまっていた。
地下を制圧したスニークはその場にたたずみ、今後の行動を考えていた。一つ。敵の更なる主を制圧しに向かうか。二つ。一先ず引いて国内での戦闘のカバーに入るか。彼自身は攻めの姿勢を持つ男であるし、この地にいる以上は黒幕討伐の好機を逃すわけにはいかないであろうことは十分わかっていた。しかし、既に向かった黒人形たちがアサゴに向かっていること。その先には瀕死状態にも近い男や村落があることも彼には分かっていた。それに黒幕を討つといったところでその居場所の見当もつかない。
スニークは一度向きを変え、イカゴ内でのさばっている黒人形たちを一掃することから始めた。次の手はその間に考えればよい。




