55 スニーク
「-何?」
「この竜はね。あなたたちの本拠地にこうやって送っているの。街の上に出して、一気に焼き払っちゃうんだから」
「・・・正気か?」
「勿論よ。もう2体は送っているわね。だから黒人形を送るのは一旦やめているの」
スニークは理解できた。この女がアサゴに黒人形を送っていた。そして、今この竜を送らんがために黒人形の輸出を休止している。自力で島に渡ってくる黒人形たちは、この女に送られそびれることで行き場を自分の脚で辿っているのに過ぎない。
「しかし、これだけの黒人形が渡ってきていることを考えると、竜を送っているのにかなりてこずっているらしいな」
「まあね。送るだけじゃなくて、正確な位置を指示されているから」
「お前たちの目的は国を亡ぼすことなのか?」
「さあね。皆自分の目的の為に動いているの。でもほとんどのひとの目的は『自分の力試し』だと思うわ。私もそうだし」
「何をさっきから言っているんだ?」
「目的―そう聞かれたら、街をどれだけ破壊できるか。そう答えることもできるかもしれない。でも、それ以上に、私がどれだけのクスを街に送れるかが問われている気がする」
「竜を送ることの方が大事なのか・・?」
「そう。この力がどれほど偉大なのか。その竜を送った数の多さで推し量れるわ」
動機が麻痺している。通常の悪役なら、街を亡ぼしたり、混乱に陥れるなど、その結果を目的にするはずだが、この女はその手段-竜をどれだけ送れるかが目的になっている。
「生き物を任意を場所に転送することがお前の黒魔法か」
「そうね。私はこうやって板の上でじっとしていることしかできないから、代わりに皆を移動させてあげることができるようになったの」
「こんなにベラベラを喋っていてよいのか。お前の主から罰を受けるぞ」
「主っていう感じの人でもないの。最大限私の自由が保障されているわ」
あまり時間に余裕がないのはスニークも同じであった。この女が時間をかけて竜を転送しているのを知ってしまった以上はなんとかするしかない。これまでの会話もヤツの時間稼ぎに過ぎないだろう。
洞窟に響く竜の息遣いが少々彼の感覚を狂わせたが、女の位置まで飛んでいき〆ることを決意した。
「お前自身が動けないのが弱点だ」
飛んでいくスニークの体をクスたちが止めようとする。火炎や斬撃を躱し、女の寝台の前へと降り立つ。人の姿に戻る。
「黒魔法の能力について知れて良かったよ」
彼は構え、とどめの準備をした。
「まだ足りないわ。身をもって知りなさい」
スニークの体は無理やりその地上からはがされ、洞窟をもすり抜けた。




