52.イカゴ
スニークが立っていたのはイカゴの大地であった。林の入り口が既に見えている。向かうのはこの奥であることは彼にも分かっていた。ずんずんと黒人形たちが姿を現し、アサゴ方面へと進んでいることが分かる。
スニークは飛び上がり、上空から進むことに決めた。黒人形を一人一人相手にしているわけにはいかない。アサゴの岬には、私の白人形とあの山海賊が待機しているだろうから、当分は持ちこたえることができるだろう。林を下に、彼はどんどん進んでいった。やはり時折下から攻撃を仕掛けてくる黒人形もいたが、そんなものに構っている余裕はあまりない。下で動いている黒人形の足音や気配を頼りに、その出どころを予測しながら更にスピードをあげた。
一直線に続くこのラインが相手の本拠地になっているかどうかは一先ず分からないが、これほど分かり易くたどり着けるようになっているなど罠以外の何物でもないことは明らかであった。そもそも黒人形は独りの黒魔法使いが1日に1体ずつしか創ることのできないもの。それがこれだけ無限に湧いてくるということは、計画的に随分と前から行っていたものに違いない。それだけ力を注いでいるのに、こんな原始的な方法で1対1体はなっていることなどありえない。このラインの目的地がダミーである可能性は十分にあったが、それでも進んでいかなければ何かしらの制圧をすることはできない。もしあのままアサゴに残っていたとして、終わりのない戦いに体を疲れさせるよりはこのように何かしらのアクションを起こして盤面を動かさなければ次へとは進めないだろう。スニークは今回の一連の戦いにおいて、何歩も遅れを取っていた。戦況もうまく呑み込めないまま言われるがままに行動しつつ、行き届かない部分については個別に補っていくしかないだろう。幸いにも、王国内は今動乱の中にあり、この場が離れていることもあって干渉してくる者はだれ一人いない。単独行動が得意なスニークにとってはかなり動きやすかった。
林も終わりそうになるところで、随分と開けた野原があった。建物も何もない土地に暗い穴のようなものが見える。そこから黒人形が次々と現れていることから、問題の場所であることが分かった。
「なるほどな」
この穴の先が罠である場合、まず入り口が塞がれたり、中に更なる化け物が潜んでいたり、そもそも穴自体が崩れて生き埋めになることが考えられた。3番目のケースが一番危ないが、とにかくどれにも対応できるようにと彼はまず魔力をマントに溜めることに注力した。
「そろそろよいだろう」
スニークはその姿を白い鳥に変え、真っ暗な闇の中へと飛んでいった。彼の進む道、その先は常に暗闇ばかりである。




