50.そういえば
「ソール殿!」マルナルが驚きの声を上げる。
「俺だけ仲間はずれにしないでくれよな」
「一人だけなかなか起きなかったんで先に作戦を決行したんですよ!全くもう!」
「悪い悪い」そんな会話を繰り広げながらも、どんどん黒人形を倒していくソールの腕前は確かなもので、片腕でどんどん突き飛ばしては力にモノを言わせていた。
「すごい・・・!」少し遠くで見ていたニールですらその戦い方の豪快さが見て分かった。
「これが山海賊の戦い方なのか・・・!」
小手先の魔法には頼ろうともせず、腕っぷしの強さを最大限活かすようなスタイルは、西の端の小さい村の人々にとってかなり新鮮なものであった。
ただ、その人形の数があまりにも多く、どんどん村の方へと流れて行ってしまう現実は変えようがなかった。
「お前達!」ソールが呼びかける。
「ここは俺一人で十分だ!ありったけの人数を村の守りに回してくれねえか!」
その言葉に、彼の自身の実力に対する自信と、村の人々を想う優しさが感じられた。
「分かりました。皆さん!付いてきて!」
マルナルをはじめ、ニールやラグ、他の魔法使い達は人形たちを追うように森の中へと消えていった。
「にしてもすげえ数だな。どうやってこしらえたんだこんなもの」
ソールは片腕に力を込める。彼らを森に遣ったのにはもう一つ理由があった。
「フンっっ!」地に拳の鉄槌を下すと、地が盛り上がり壁のようになった。これで人形たちは向こう側へは渡り辛くなる。
しかしそれは同時に、彼が一人で残りの人形たちを相手にしなければならないことを意味した。視界を覆うばかりの黒。漆黒の闇と対峙しなければならない気分だった。
「せめて会話でもできれば退屈じゃなくなるんだけど」
そう呟きながら、ソールは肩を盛り上がらせ武者震いする。
・・・どれくらいの敵を倒したのだろうか。同じ相手とばかり闘っていて時間の感覚がなくなってくる。彼自身も傷を負っていた。あの人形は決して弱いわけではないことが自分でも分かっていたからこその選択であったが、そろそろ体力が文句を言い始めてくるだろう。防御力に秀でた人形は一撃で仕留めないとカウンターがくるし、速さに自身のある者は目を離すと傷をつけられる。そして打撃系の奴は一発でも食らうとかなりヤバい。
「お前達は飽きないのか。俺は飽きたぜ」
神経をこれ以上使っていると深い傷を負うだろうことは分かっていたが、彼らはまだまだ深い海を上がって向かってくる。少しは兵力を残しておくべきだったろうか。今となってはどうしようもなかった。
「あいつらが戻ってきたときにここで死んでたら情けないよな」
今度は両腕に力を込める。一度この技を使えば、とりあえず視界にいるものは一掃できるだろう。次に沖に上がってくる奴とどれくらい満足に戦えるかは、その時次第だ。
「いい加減、減れよお前らああああああああっ!!!」
地に腕を突っ込んだ。めきめき盛り上がり、槍のように人形たちを突き上げていく。
「今度はこっちだっ!」
海に向けもう片方の手を伸ばす。潮が天を貫き、海中に潜んでいた人形たちが次から次へと飛ばされて地の槍に刺さっていった。
「くそっ海に腕突っ込んでりゃあもっと掃除できたのにな・・」
膝をつきうなだれる。思っていたよりも回復の時間は与えられなかった。仲間の人形が突き刺さっていることでそれを下敷きにしていた人形が、隙を得たとばかりに近づいてくる。朦朧とする意識の中、相手の人形の種類をうまく判別できなかったが、向かってくる速さからしても一番この状況下であたりたくない奴だという事は分かった。
「勘弁してくれよ・・」彼自身が今度は貫かれることを一瞬覚悟したが、そんなことはいつまでたっても起こらなかった。
「壁を高く作りすぎだ。また急激な斜面を私に登らせるつもりなのか」
助かった。白魔法使いがまだいたのか。でも俺が知ってる中にこんな面の奴はいない




