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49. ルーハイ

「もう同じ目は二度と食わない」

マルナルが対峙していたのは、荒波の中一直線に岸に向かってくるザウルグの群れであった。今回は他の『ラグ』に加え、国から手厚く上級魔法使い及び超級魔法使いが配置されている。

「はあああああッッ!」

海のラグが波を掻き立てる。波は命を宿したようにザウルグを誘い、一点へとまとめていった。そこをうまい具合に上級魔法使いがザウルグを釣り上げるようにして、予め作ってあった追いこみ漁用の入り江へと運んでいく。更に暴れようとするザウルグを、今度はニールを中心とした湖のラグが、水面ごと沈静化させていく。ここまでは完璧な手はずだった。

ペースが崩れ始めたのは、第2陣、3陣が乗り上げた頃であった。

「数が多すぎる・・・」

万全に整えていたはずの体制だったが、それを上回る異常事態に飲み込まれていった。

ここまでの戦法は、飽く迄陸地にザウルグたちをあげないためのものであったが、ただ状況を保っているだけの戦略は、数の勢いに破られると一気に状況が悪くなる。

「仕方ない、いくらかの戦闘も覚悟しなければならないな」

マルナルは入り江の方まで行き、ザウルグを少しずつ〆ていくことにした。

そうこうしているうちにも、どんどんザウルグは迫ってきている。次第にこちらも押され始め、ついに第一号が陸地に乗り上げた。

だが海のラグは気にする様子もなく、荒波の治療を行っている。乗り上げていったザウルグに対応していくのは、森及び山のラグであったからだ。彼らはザウルグのいる位置に的確に標準を定めると、その場に穴を設けて、さらに深い穴へと落としていく。こういったやり方で更にザウルグたちをまとめていく手法を取っていった。

彼らの心は落ち着いている。事態は自分達でもなんとかできるものだという安心感が、彼らの中を漂っていた。今度は国からの兵も助けに来ていることが、その気持ちを後押ししたのだ。ザウルグの影がついに見えなくなってきた頃に問題は発生した。

「グハっ」

いきなり陸地で声が起こり、一度の姿勢が集まった。とある山のラグのメンバーの胸を刺し貫いていたのは、細い黒人形の腕だったのである。

総員、事態はひっ迫していると悟ったことであろう。黒人形はザウルグの3倍危険であるという情報を得ていたからである。咄嗟に陸の側のラグが技をしかけ、空からも魔法使いが攻撃を仕掛けていった。

ただ、どうにも速いその動きを捉えることは至難の業である。加えて、更に形の違う黒人形たちがいきなりどんどん陸地に乗り上げてきたことで状況は不利な方向へと持って行かれた。3種類の黒人形たちはそれぞれの戦闘スタイルをもっていることは、先の戦いで共有済みであったが、それに実際に対応できるかどうかは別問題である。超級魔法使いはともかくとして、普通のラグのメンバーにはかなり苦戦を強いられる類のもので、犠牲が次から次へと増えていく。

「待っていろ!!」

マルナルは入り江から戻ってくると、悲惨な状況を目の当たりにした。陸地で戦っている人員の数の方が、押し寄せる黒人形の数よりも少ないのである。しかも、上陸する黒人形の数は増える一方であった。

「いつもこの地はこんな目に・・・!」

嘆く間もなく、目の間に一体の黒人形が現れる。細身のそれは、他の2種のものと比べてもそのスピードが卓越しているものであった。その素早い手で貫くようにして、黒人形は構えの体制に入る。

「逃げ・ッ!」

マルナルが躱すのが速いか。黒人形の手刀が速いか。間一髪のところであった。

「ルー様・・!」

最後の神頼みも空しくその手がマルナルを貫こうとしたその時、黒人形を遥か彼方まで突き飛ばした者がいた。

「どおおおおおおおおおりゃあああああああッッッ!!」

東の山海賊、その副族長。ソールである。


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