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「助かったわ」ニラードは礼を言った。
それぞれ人員が既に所定の位置に配置されていたが、サリアに関しては常に応援要員として上空を見て回るように指示があったのだ。城周辺を飛び回っていた過程で何か異変を感じ、塔の方へと向かってきたのだろう。
「大変なのはこれからね」再び魔女は飛び上がる。我に返った囚人たちが上空に攻撃を放つも、ヒュンヒュンと回避していく。
「うーん、これくらいの大きさかしら」自分から見て両手で群衆が入りきるように形を作ると、地がうめき始めた。地鳴りのような振動がニラードに伝わってくる。
その群衆を囲むように地が盛り上がり、一気に閉じ込めた。土地で作られたそのドームからは何も音が響いてこない。
「何をしたの?」ニラードには訳が分からない。
「ちょっと遊んでみたくなったのよ」読めない表情をしている。
「あの中は迷路になってるの。今頃彼ら大慌てよ。しかも出口がないからしばらくは出てこられないわ!あ、でも待って。面白いこと考えついちゃった!」
サリアはドームに向かい、地を穿った。ぽっかりと真っ黒な口が開く。
「あそこから出てきた人たちを一人ずつ順番に塔の中に戻してやるのよ。牢屋は出せるんでしょう?あの白いやつ!」
あっぱれとしか言いようがなかった。たった今たどり着いただけの情報で的確な対処法を出してしまうとは。実際、あれだけの数を一気に、というのは分が悪いが、このように一人ひとりなら対処のしようがある。間もなくして、一人の囚人が眩しそうに穴から出てきた。ニラードはすかさず白牢に閉じ込め、塔へと送った。サリアは見回り兵とまだ戦っていた囚人を鎮圧すると、見回り兵に塔の中に待機してもらうように言い、白牢が囚人を届けたら牢屋まで誘導するように指示した。完璧すぎた。ニラードはこの間、ユハ達に連絡を取る。
「念のため塔の方に応援を寄越してほしいの。黒魔法使いに塔が壊されて囚人たちが漏れたわ。サリアのおかげでなんとかなりそうだけど、それでも何か起こらないとも限らないから」
「本当に大丈夫なのか?二人に任せてもいいのか?」ヲサイヤは最後まで心配している。
「今のところはね。でもまだ油断できない。かなり頑丈なせいか、ドームは壊れる様子がないけど一番心配なのはやっぱり-」
嫌な予感が形を成した気がした。強烈な地響きのようなものが何度も聞こえている。それはドームの中から聞こえているようで、いっこうに衰えずその勢いを保っている。
「いったん切るわね。応援は早く送ってよっ!」
ニラードは音の出る方向まで近づく。ここだ。ドームの上方に向かって何度も突き上げてくるような衝撃を感じる。しばらくすると、別の場所からもそれには劣る勢いで轟音が鳴り響いた。
「ニラードちゃん、そっちはお願いね!」サリアは飛び上がり、新しい音源の方へと向かっていく。白牢はほぼ自動で塔へと囚人たちを誘っているので心配はいらないが、多くの囚人蠢くドームを見守っているのが自分達二人だけという事実は、ニラードの心をいくらか不安にさせた。
ビギっ
鈍い音が下から聞こえる。反射的に衝撃の真下から遠ざかったニラードの反応は正解で、二撃目で地のドームは破られた。黒い、勢いのある膜のような蛇のような波動が突き破られたドームから上空へと向かう。それが消えると、その場には例の小さな黒魔法使いが立っている。




