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43.

ニラードが目を覚ますと、辺りに何も気配が無いのを感じた。塔の中に何も音がしないのを感じる。だるい体を起こしてみると既に男の姿は無く、しいんとした空気感がその階を支配していた。

(しまった)

そう思った彼女は階段を駆け下りる。どれくらい時間が経っただろう。確かあの時、暗い塔の床色よりも更に暗い影がはっきり見えだした時、下から何かに全力で殴られる感覚を覚えそのまま気絶したのであった。

この塔には定まった監視員というのが存在しない。決まった時間に、決まった兵が中を見回りに来る。それと接触していないということはまだ大して時間は経っていないだろうことが予想された。

階下に至り、他の囚人に男を見なかったかと聞こうと牢に近づいて行った時、更に状況が最悪であることを知る。

彼女が認める牢の一つひとつにおいて、囚人の姿は無かった。

更に一階降りる。確認する。また同じ状況であった。

「やられたっ」

牢が開かれ、囚人たちが解き放たれているのだ。まさかあの男、これを狙ってわざわざ等に忍び込んだとでもいうのだろうか。だとしたらまたしても出し抜かれたということになる。

あの男-聞き出した名はジョートといったか―は安易に抜け出されないよう、また、抜け出しても他の人びとに気付かれるよう、塔の最上階に閉じ込めてあった。それ仇となって今多くの囚人との接触の機会を与えてしまっていた。

(ヤバイ)

ニラードは思った。もし、地下の囚人まで解放されてしまったら-

最悪な想像ばかりが広がっていく。なんとかそれでも体を動かし、牢屋を確認していく。

「いた!!!!」

漸く一人、開け放たれた牢の中に残っている囚人を発見した。

「エライ!!!!外に出なかったのね!」

「ここを出て行っても生きていく術がないので・・」

「それはそうと何があったの?」

「ここに一人の男の子が来たんです。『お前たちを解放してやるから俺と一緒に来い』そう言って扉を解放していきました。怖かったですね。ただの少年のはずなのに」

「そんなものだろうと思ったわ。ありがとう!」

もはやその男に構っている余裕はなかった。マズい。塔を出たらどのような景色が広がっているのだろう。囚人たちを引き連れてどんな恐ろしいことを企てているのか、考えたくもなかった。

「仕方ないか」

ニラードは塔の壁を破壊し、一気に下降。最短距離で塔の入り口部分に舞い戻った。


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