42.終わりの始まり
塔の中で、ニラードが対応をしていた。ジョートと名前の付いたこの少年を相手に、この時間は彼女が見張り役を引き受けていた。
「あなたも暇なんでしょ?だったら雑談でもすればいいじゃない。いくらでも私が聞くわよ」
「言っただろ。2時間に1回しか質問は受け付けない」
「それ以外の話はすればいいじゃない」
「ふざけるな。状況を分かっているのか?それにもう話すことは何もない」
「さっき質問したばかりだからね。あと2時間後にはヲサイヤが来るわよ。彼、私より怖いんだから」
「状況を分かっているのか?もう終わりだって言っているんだ」
ゆっくりと腰を上げるその少年。先ほどとは様子が違う。
牢の端までやってきた彼は、まっすぐにニラードを見据えている。ニラードは体に力を入れた。白牢はまだ健在だ。彼を囲んで動かない。
「そうだな。今回は俺が質問しよう。俺がなんであっさり捕まってやったのか、アンタに分かるか?」
「あなたがうちの執事に敵わなかったからでしょう」
「半分正解だ。確かにあのじいさんは強い。間違いなく俺はまともにやったらあいつには敵わない。だが、違うね。俺だって黒魔法使いだ。知られていない奥の手だってあったんだよ」
「無駄ね。それがあったところでこの牢は破れないわ」
「へえ、悠長なことを言ってるな。白魔法使いってのはバカが多いんだな」
「もう一回言ってみなさい。牢を更に縮めて潰すこともできるのよ」
ニラードは彼を閉じ込めている牢を狭めた。
「じゃあ教えてやろう。俺の力はな。俺が牢に閉じ込められていようがいまいが発動する」
そう言い終わったと同時に、地が揺れる感覚をニラードはお見舞いされた。
「ヨスガントスの右腕」
ニラードの足元に影が浮かび始める。円形になったそれを認めた彼女は次の瞬間、意識を失った。




