33.帰途
「この道で問題ないのか」シカは魔女に語りかける。この姿でいるうちは口を使った会話ができないので、相手の精神に語りかけるように魔法を使っている。
「大丈夫!言われたところにまずは出ればいいんでしょ?そっからは私、分からないからお願いね」
「なぜこの経路で大丈夫だと言える?」王は心配していた。魔女という仲間が増えたとはいえ、ここまで来た道のりは決して安全なものとはいえない。
「あのね、ズルしてるの。本当はないような道を通ってるんだ」
「?」シカは不思議そうな顔をしている。
「領域の丁度境目を通るようにしているのよ。これだったら気づかれずに出られるわ。ちょっと遠回りになるけどね」
「なるほど。前みたいな目には遭わなそうだな」
「オブノーラさんが言ってたんだけど、取り除いた瘴気の出どころ。『揺曳の魔女』そして『逸楽の魔女』の領域だったらしいわ」
「そうだったのか」あまり王はそれ以上に知りたい情報が無かったのか、口数が少ない。
「今の時期は魔女もいろいろあって大変なの。領土の争いが始まるのよね」
「オブノーラも言っていたな」王と魔女は事前に部屋で会話をしていた。
「だから領域から出ることはできないの。私も本当は何かあった時のためにいたいんだけど・・・」
「・・・すまないことをした」
「いいの!オブノーラさんは大抵の魔女よりはかなり強いから」
「『かなり』な」心なしかほっとしたような表情をしている。
「で、何しに私は行けばいいの?」やっと本題に入る。
「まず背景から説明しよう。王都については知っているな」
「うん、オブノーラさんからちょっと聞いた」
「そこで戦力を集めている」
「何かと戦うの?」
「恐らくは黒魔法を使う者たち。数が特定できないため、少しでも兵力がいる」
「黒魔法・・・見たことないわ」
「これはこの世界の脅威になり得る。アサゴのうちでも比較的西に近い王都で食い止めなければ、いずれこの島全体が滅ぼされることになりかねん」
「へえ、よくわからないけどスケールの大きそうな仕事ね」
「ああ、飽く迄可能性の話だが、どうも怪しい動きをしているのでな」
「それでオブノーラさんに力を貸してもらおうとしたってわけね。有名人なんだあ。でも行くのは私だからね!一体何をすればいい?」
「国の防衛、或いはイカゴへの進撃だ」




