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30.ガンセン

シカはゆっくりと、しかししっかりとした足取りで進んでいた。その進む方向は全てその野生の本能が伝えているような、そんな迷いのなさであった。この森は全体的に暗く、紫の落ち葉がその地を覆っている。生身の人間が一人でこのようなところにきたら、その精神は2日ともたないだろう。

 ガンセンは考えていた。自分の位置をしっかりと把握しつつ、その方角に進むべきかを常に考え、足を踏み出していた。ちょっとした油断、感覚のずれが命取りとなる。迷ったら最期、ここまで来てしまってはもう二度と王都に還ることはかなわなくなってしまうだろう。彼は風向きを捉え逃すまいとしていた。当分は直線に進んでいればよいというのが彼の見立てであった。

 「可能か不可能か?」

驚いてシカは飛びのいた。人間にも備わる恐怖の感覚がその体を突き動かし、シカの動きさながらにその対象と距離を取った。

「この測定地いおいては用心が非常に大事!右をムイても左テも景色はかわんのだから。かんぜんい道お見うsなわないタめにはまっづぐっすすまんりt「うえあうで。しかしあがらm、いんふぇbのあしふぁ右利きゆえに進む方向もみひだりまふぁりになってしまうゆえに極めて困難ン。同ブルだった田、四本足がっらら化花鶏も減るだロうに」

完全に狂っていた。服の様子を見るに、かなり時の経過を感じる。200年、いや300年、この世界で生きているのだろうかといった雰囲気を感じた。もしここで言葉をかけてみたらどうなるのだろう?人間の言葉を。それは彼の意識をいくらか揺さぶることができたのかもしれない。しかし、ここで姿を現すわけにはどうしてもいかなかった。シカは元の道に戻り、突き進んでいった。後ろから声が聞こえる。

「可能か不可能か?」

まだまだ道のりは長かった。心配なのは、連れている他の6人がどのような精神状態でいるのかといったことだ。彼らの視線もまた、このシカと繋がっている。先の件を受けて不安を生じさせているのは間違いない。一休みでもしたいところだが、この区画ではだめだ。もう少し先を進もう。

 あたりは依然として明るい色を失っていた。自分がこの世界には必要ないのだと感じさせるほどに、このあたりの色彩は自分を受け入れてくれない感じがした。紫色の葉は不安を煽るようなまなざしをこちらへ向けている。どこを向いてもこのような景色が広がっているのだから、先の男のように気を狂わせてしまうのも無理はないだろう。

ともかく、進まねばならない。今のところ、何も問題は起こっていないのだから、何も怖がることはない。動かすのは足だけ。気持ちはそれにおとなしくついて行けばよい。シカは真っすぐ前を見据える。なんのこともないただの平たく柔らかな落ち葉の上を歩いていく。よく聞けばカサカサと音を立てる足元の葉の音が安心感を与えてくれる。この音に慣れれば勝ちだ。次の瞬間には、地が口を開けシカは真っ逆さまに大地の中へと落下していった。


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