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24.

ヨサイヤはショーフェン、つまり山海賊の巣窟となっている地域まで来ていた。既に森を抜け振り返るとそこには、真っ暗で鬱屈とした暗闇が全てを飲み込んでいた。降り積もる雪の白さとは対照的に、そびえる木々は恐ろしく黒く、降り注ぐ日光の全てを吸収しているようであった。前を見ると、小ぢんまりとした城塞の入り口が見える。王宮の大きさなどものともしない風格を持った山が視界の全てを満たし、その入り口は山の麓の狭い部分をくりぬいて入り口としているようであった。目の前のこの山、つまり丘陵が既に城塞の役割を果たしている。

ヲサイヤは一行の後方部に常に陣取っている。耳が聞こえない身として、基本的なやりとりは他の魔法使いに任せて自分は国からの手紙を無事に届ける任務を負っていた。何やら無事に物事は進み、彼らは城壁内(山)のある部屋に通された。彼は手紙を向こうの公務員であるらしき相手に渡し、次の指示を待っていた。他の魔法使いは空に字を書いて伝える。「テガミ シンヨウデキルカ タシカメテイル

ミッカ ヨッカ ヘンジニ ジカンカカルダロウ」

彼は読唇術が使えるのでコミュニケーションにはそう困らないが、こう書いてもらった方が確実であった。この地域で使われている方言は、王宮のものとは違っていて、異なる正書法を用いている。あまり声を立てるのが得策でない場合にこの手法は用いられる。

 それにしても、3、4日のもかかるとは少し困りものだった。それだけの時間、この小さい空間でくすぶっているのは彼にはとてつもなく退屈に思える。彼ら8人はとりあえずここまで来た疲れを癒すため、初日は大人しく寝ていることにした。特に、ただの召使である3人は体を早く休めてもらいたかった。体力的な面で、常に配慮せざるを得ない。

 山の中にあるこの大地を支配していたのは、重くのしかかる冷たい空気と静寂であった。

深夜の最も深くなるこの時間に、この部屋に8人で寝ていることはいくらかヲサイヤに暖かさと安心感を与えた。考え事をするには聊か静かすぎてかえって集中できないが、かといって眠れる夜でもないので、彼はただその場で横になっていた。

 夜も深い時間帯になった頃だと、ヲサイヤの身体が感じ始めたその時、彼の身体は同時に、何か地を響かせる振動を感じ始めていた。こちらに聞こえさせようという意思はないが、それでも結果として生じてしまうような、そんな小さな振動である。まだまだ遠い距離での出来事のように感じられたので彼は放っておくことにしたが、その振動は小さな音に変わり、彼の耳に訴えるようになっていった。間違いもなくそれは人間の足音で、ぴたっと足を止めたそこは、丁度この部屋の壁のあたり、向かい側であった。

 「勘弁してくれ」彼はそう思い、更に神経を研ぎ澄ました。部屋の外で揺れる影が感じられるようになった。およそ10人ほどの存在感を把握した彼は、ハッタリをかけようと「気づいていないとでも思ってるのか?」という事にした。

 彼がその言葉を発するよりも先に扉を蹴破る大きな音が鳴り、部屋の中へと冷たく吹きすさぶ風が行き場を探して慌てていた。


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