1.復興の時
現在、アサゴでの白魔法使いは5人存在している。まず二名。ユハと執事。これに加え、先のスニーク、次いでヲサイヤとニラードが加わった。彼らはそれぞれ、王に与えられた役割こそ違えど、今では国を守る先鋭として名を誇っている。
イカゴでの潰走より、既に一年が経過していた。ユハは現在、王の付き人としての役割を離れ、ソラン姫の盾に復帰する傍らで一時的に3人の魔法使いの指導に当たっている。そして執事が王の護衛に戻り、平和が保たれていた。国王ガンセンそしてユハは、国の防衛策として白魔法に目を付けた。五感のいずれかを犠牲にして得る、超人的な魔力。1年前の戦いでの900の犠牲を補うには最速で最良のカードだといっていいだろう。かだ、白の魔法については、この国の歴史に浅いらしく、書物は殆ど残されていない。なかんずく、新たに加わった3人に関しては、その知識をまず有さないため、指導に時間がかかった。口の利けないユハではあったが、ここでも魔法の力を用いて意思の疎通を試みていた。白の力は生の力。意識内での交流は肉体的障害を伴わないため、このようなことが可能であった。他にどのような力があるのか、それぞれが模索しなければならないため、彼ら魔法術者は、交代制で常に二人の能力者が、日々研究に研究を重ねていた。そのほかにも兵を補わなければならず、先の戦いで王宮残留のために残されていた200の兵に加え、新たな徴兵の必要があった。国を挙げての大事業であり、国民の誰もが、安らぎを感じてはいられなかっただろう。